アスライア国、ニューケミルセン地区。海岸線、懸崖の上に立つ洋館、とあるアジト。
そこには、大泥棒、キャスフィ一家、その二人がいた。
「がぁはっはっは、こりゃいい傑作だ!」
赤いカウチソファーの上に寝転がり、がに股で頭を抱えて大笑いしている、名はアデル・キャスフィ。長身痩躯の短髪で三枚目。ブラウンチェックのジャケットを赤いタイで着崩す。年の頃は三十代半ば。
彼の体面に座り、M1911コルトガバメント銃を手際よく分解掃除している、暁 将冴。
仕立てのいい紺のスーツにラフなドレスシャツ、目に鋭さを時折見せ、アデルとは対照的に冷静沈着、カストロ髭で、髪はオールバック。年齢もアデルと同じ位。
テレビでは、カナベル航空宇宙局が、気象衛星ロケットの打ち上げ失敗と報じていた。
「あん? 何がそんなに可笑しいんだ、アデルよ」
「何がってよ、国の威信をかけたキラー衛星が、妙な連中にジャックされちまって沈黙、地球を回る巨大なゴミにしたとよ、がはははは、こりゃいい」
再び頭を抱えて大笑いするアデル。
「キラー衛星? なんだそりゃ。人工衛星で殺しでもするのか」
「いわゆる『軍事衛星』の事さ。表向きは気象衛星なんて言ってるが、それにしちゃあ0の桁が違う。七千万ドルかけて、ワザワザ地球周回上に放り込むのはなぜかって? よその国を様子を偵察したり邪魔したり、時には衛星に攻撃したりと。それを正体のわからねえ奴に使用不能にされちまうたあ、ざまあねえ」
また、がはははと、アデルは大笑いした。
「そこで一枚噛まない? アデル、興味ありそうな情報持って来たの、買ってくれるかしら」
と、一人のライダースーツに包まれたグラマラスな美女がドアを開けて、戸口に寄りかかっていた。二十歳半ばの黒髪美人で、切れ長こげ茶色の大きな目、色っぽい体の線をしていた。名前は、如月 莉子、ひどく気まぐれでしたたかな女だが、時々、こうしてアデルの元に情報をもってくる。VIPにも社交界にも意外な顔利きだ。
「やあああ、莉子ちゃん、しばらくだなー、毎日こうしてお会いしたいわー、なんて」
ジャンプダイブして抱きつこうとしたアデルをあっさりかわす莉子。
床で妙な格好で寝ているアデルに莉子は慣れた様子で言った。
「で、買うの買わないの? 稼働に失敗した人工衛星の事よ、知りたいでしょ」
「買う買う、莉子ちゃんの為なら、ビーナスの指輪だって、モネの画だって買うー」
「打ち上げした日と同時に一人の科学者が行方不明なの。人工衛星のコンピューター開発者のリーダー、ジュデイン・シェフラー博士よ」
「ジュデイン・シェフラー・・・」
アデルは身を起こした。
「ジュデイン・シェフラーだって?! そいつは本当か!」
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