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第1話 謎の力を持つ少女

公開日時: 2021年10月29日(金) 16:04
更新日時: 2021年10月29日(金) 16:34
文字数:1,107

 アスライア国、ジョンストン州、トレヴィル地区。

 午後二時頃、晴天。叫びたくなるような青い空。

 ダイナミックな摩天楼の街並みに天に届かんばかりのビル群が立ち並んでいる。

 黄色いタクシーをやたら見かける。人は皆、忙しそうに通りを行き交う。

 通りはストリート看板とネオンサイン、広告の大型ビジョンだらけだ。


 そこへ突然、パトカーの甲高いサイレンの音が響き渡った。

 暴走した大型トラック。それと数台のパトカーが追いかけるカーチェイス。

 運転手の男の目は尋常ではない。ハンドルを切り回して、次々に行く手の車にぶつける。


 トラックはスピードを緩めることなく右折開始、人が往来する横断歩道に差し掛かった、その時。

 母親を追う、年の頃は四、五歳の幼子に、暴走トラックが迫る───


 ガン!


 一瞬にしてトラックのスピードをゼロにする遮断の急ブレーキ。

 まるで見えない壁にぶつかったかのように、つんのめって後輪を持ち上げる。左に横転するトラック。ギリギリとアスファルトの上に火花を散らして滑って行った。

 反対車線へ、トラックの荷台でバンボディ幾台もの車を巻き込み押しやった。


 女性の叫び声と、ざわめきが起こる。

 横滑りしたトラックは歩道を過ぎ、角の衣料品店にぶつかり止まった。


 母親は幼子に駆け寄って抱きしめる。

 親子に遅れて横断歩道を行く、少女が一人、その男の子の元へ。

「僕、大丈夫? どこもケガしなかった?」


 年延としばえは高校生位の少女。右手には紺色のスマートフォン、男の子の前にしゃがみこんで、そう、問いかけた。

 茶色の大きな目、愛らしく溌剌はつらつとしている。人当たりも柔らかで、シンプルな白色の絹のドレスをまとい、つやのある黒い髪を肩にたらしていた。


「うん、僕平気だよ」

 男の子は状況をイマイチ呑み込めてない様子で、そう素直に返事をした。


 警官がパトカーから飛び出してきて、暴走トラックの周りを取り囲む。幸い運転手も巻き込まれた人も軽症のようだ。


 少女は男の子の無事を確認すると、微笑みを彼に投げかけながら、向かいの人混みに紛れ消えた。


 一体何が起こったのだろう。

 この大事故の現場を、始めから終わりまで、目撃していた一人の男がいた。

 ジェイル・リグス、職業、アスライアマフィアの下っ端。ただ気ままなその日暮らしだ。

 男は背が高く、顔の表情は明るい。人なつっこそうで、砂色の髪、青い目、弁舌は爽やかで、おだてには弱い。

 行きつけのレストラン、”エリゼキュー”に遅めのランチを摂りに行くところだったが、今目の前で起こった 街頭のストリート不思議な出来事をつぶさに見ていた。


 男は───ジェイル・リグスは、思った。平然と立ち去った去った彼女には何か・・ある。

 そう察した彼は行動が早かった。湧き上がる好奇心で、すぐさま少女の姿を追いかけた。

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