シェフラーゲーム

量子コンピュータを手にするのは誰だ。
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第3話 衛星打ち上げ

公開日時: 2021年10月29日(金) 17:10
更新日時: 2021年10月29日(金) 17:27
文字数:1,095

 アスライア国、キャリオシティ州、カナベル航空宇宙局、宇宙港台地。

 時は先の横断歩道事故から三日前時点にさかのぼる。


 ここは、センター科学衛星ロケットの発射場。

 総敷地面積は九百八十万平方メートル、東京ディズニーランドおよそ二つ分の広さ。

 国の南端の海岸線に面しており、連なる山並みの山腹を切削せっさくして建設されている。


 今、衛星を載せた、デルタ・ロケットが、宇宙へ飛び立とうとしている。


 カウントダウン。

 ・・5・・4・・3・・2・・1 ゴオッ


 発射。


 午前十時二十四分、地響きをあげ唸りながら、濛々もうもうと煙を巻き上げ、ロケットが打ち上る。


『加速度七G、二段プライマリースラスト点火』


『加速度〇.三G』

『二段目分離!』


『加速度七G、三段プライマリースラスト点火』

『加速度八、十、十二G』


 ズドドドド・・・・ 


『ノーズフェアリング、オープン!』

衛星切オービターり離し! スピン開始!』

『太陽電池パドル展開します!』

『楕円軌道から、地球周回軌道へ投入! 打ち上げ、成功しました!』


「ワアッ!」

 地下の管制室の運用管制スタッフ員からは一斉に歓声があがった。

「Dr.シェフラー、貴方にも見せたかった。私たちは貴方の大いなる貢献を忘れてはいません」

 管制室の計画責任者のカール・ステファノが神妙なしんみょう面持ちでそうつぶやいた。

 彼の歳は五十代半ば、眼鏡の奥には理知的な灰色の目、髪は砂色。


 切り離された人工衛星『スタリアス』は、第一宇宙速度、時速約二万八千キロ、高度五百キロメートル、漆黒の宇宙、地球周回軌道上を滑るように飛んでいく。


 ───と、その時だった。

 突如として、数あるモニターから次々光が消失し、計器類が軒並みゼロを指す。

 衛星を捉えた巨大スクリーンも映像を喪失した。

 オール、シャットダウン、スクリーンOFF。

 管制室内が大きなざわめきがおこった。


「どうしたんだ? 停電か?」

「いや、万が一停電があってもバックアップ電源にすぐ切り替わるハズだ」

「スタビリティマーカー、ロスト! 全てブラックアウト!」

 管制スタッフらが、懸命にデスクコンソール上で、あれこれ復帰を試みるが、何をどうしても、現状が回復できない。


「大変だ!スタリア衛星スのアクセス権も失っている。復旧プログラム急げ! 一体なんだっていうんだ。こんな事態、経験したことがない!」


 ───場面代わって、スザク州、ミルシテイン病院。

 高い天井。個室の空きベッド。カーテンのわずかな隙間から太陽光が漏れている。

 ベッド床には誰もいない。さっきまで人が寝ていたのは確かなようだ。

 床には、シューシューと空気の漏れる酸素吸入器のマスクが投げ置かれていた。

 ベッドのフレームに架かるネームプレートには『ジュデイン・シェフラー』と記されていた。


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