アメリカ・アービングにある街、ラス・コリーナズ。
自然豊かな土地で、芸術作品が多く展示されていることで有名。大学もある。さらに、近くにはダラス・フォートワース空港がある。
ー アアソウカイ大学・食堂 ー
この大学には大きな食堂がある。校門前には大きな噴水、その噴水を右の道に3分ほど歩くと、その大きな食堂が姿を現す。
食堂内で騒ぐ二人がいた。
ふはっ! これなら罠掛けられるな!
と、男性は言う。
この角からあのパンが置いてあるところの床下にこの縄を設置。普通の縄じゃないぞ、丸くしばってある。そこに何も知らないチャドゥが来てこの縄で足を引っ張るんだ。すれば転ぶだろ? 奴の驚く顔が早く見たいぜ!
しかもこの縄は白いペンキでこの床と同じ色に塗ってある。見えないさ。
と、若い男は話した。
もう1人その場にいる女性が話す。
おい! 話してるうちにあいつ来たぞ!
後ろ姿でパンをトレーに何を乗せようか悩んでいるようだ。青いチェック柄に黒いストレートパンツ。茶色革靴を履いている。
髪型は黒で後ろがシュッとしていて落ち着いた髪型をしている。後ろ姿なので前髪がどうなっているのかは見えない、顔を見えない。
背は高めだ。
そこに女性のジョスエは疑問する。
あれ? チャドゥってあんな背高かったかな? あと、あんな靴持ってたか?
さあ? でも本人だろ、運良く縄の中に右足がある。よし! 引っ張るぞ!
わかった!
二人は壁に隠れながら、ワナはちょっとずつ縄を引っ張る。
そして、強めに転ぶように縄を引っ張った。
うわああああああ!!!
と、パンを選んでいた男性は驚き背中から転び、身体は崩れていった。
いててててぇててまんもす!!
やった!!
二人は思惑通り男が転んで喜んでいた。
ざまあねえな! チャドゥ! みろよ!
その出来事に食堂にいた人達から注目が集まる。
主にワナが男に罵っている。
すると、その男は立ち上がった。
笑っていたジョスエは青ざめる。
ふははは…… へ…… ?
お、おいワナ。
なんだよ(爆笑)
この人、チャドゥじゃないぞ。
ふはっ! ん? ん? いまなんて? え?
この人は!? ラムじいだ!
そこに立ち上がっていたのは鬼の形相している電磁気学講師のラムジー・ンゲマだった。
友達の男、チャドゥでは無かった。後ろ姿だったし、もう目の前にいたし、風貌が似ているので気付かず縄を引っ張って転ばせてしまった。ラムジーからラムじいと呼ばれている。そこまでお年ではない。
くおんのクソガキどもが!! 今日は許さんぞ!
と、すかさずラムジーの前から走って逃げるワナとジョスエ。
あ! おいこら! 廊下を走るな! じゃなくて! 待て! くそガキども!
走る最中、喧嘩が始まる。
おい! ワナ、お前がちゃんと見てないからこうなるんだ!
は!? お前が監視役だったじゃないか! おれは引っ張り役だろ!?
しるか! いつ決めたんだよ! てか、辞めとけばよかったのに!
今更なんだよ!
お前名前通りだな! ワナは罠を仕掛けるのが上手いって言ったのどいつだよ! 下手じゃないか!
う、うるせえ! 名前をばかにするな!
と、そこに人にぶつかる。3人は宙に舞い、転ぶ。
いて!!
おい! 前見て走れ…… て、お前らかよ。
いてて…… ん? チャドゥか!
チャドゥだって?
ああ、そうだよ、チャドゥだ。なんで走ってんだ。
あー…… まあ気にするな。ちょっとラムじいを怒らせたってとこかな。
ワナは答えた。
またかよ! うちのサークルはラムじいだぞ!
どちみち会うのに怒らせるな!
お前が悪いんだろ!? 食堂に来ないから! しかもラムじいみたいな姿しやがって!
は!? ラムじいみたいなじじいと一緒にするな! 俺のほうが若いわ!
後ろ姿が似てたわ!
たしかに、似たような青いチェック柄の服に黒いズボンだ。まあ靴は白のスニーカーで髪型も少し違うし、毛先に紫が入っている。服装だけなら間違えるだろう。でも違うところも多からずある。
しかも今日はお弁当って言ったろ!
へ?
は?
二人はキョトンとする。
は? お前らよく聴いて無かったのかよ?
えー まじかよ。
まあ始めたのはこのワナだから。
ちょ! おまえ!?
フンっ!
と、そっぽを向く。
全く…… 。
すると、そこに叫び声が聴こえる。
女の子のきゃあああという高い声だ。
ん? なにかあったのかな?
行ってみるか?
そうだね。
3人はその場所へ向かった。
そこは、更衣室だった。
おい! 誰かいるのか?
と、ワナは叫ぶ。
扉越しに声が聴こえる。
その声は、もしかしてワナ!?
そうだ! お前は?
うわあ…… 最悪、私よ。アンヌよ。
アンヌか! なにかあったのか? ん? いま最悪って言わなかった?
い、言ってないわよ! そこに他に誰かいない?
いや俺たちだけだ。
え〜 …… まじか。
なんだ?
いや! あの、その、あ! 先生呼んできて!
なんでだよ!
それはかくかくしかじかな理由が…… 。
何言ってんのかわからん。ハッキリ言えよ。
だから! 鍵無いんだってば!
え? 鍵?
そう! 鍵! 持ってたはずの鍵がないの!
どこかに失くしただけかもよ。
それはない、だって…… 。
なんだよ?
さっき恐ろしいものを観たの…… 。
恐ろしいもの?
なんだよ? 早くいえよ。
く、黒い人影をみた。
なに!!?
だから先生呼んできて!
アンヌ! 大丈夫だ! 俺らがいるぞ!
だからあんたら居ても意味無いでしょ!
ふはっ そんなことない。
それにののしるでしょ?
ふはっ! そんなことしない。
わかった。とりあえず鍵持ってきて。
わかったー。ジョスエ、この更衣室の鍵持ってきてくれ!
わかった。
あ! ジョスエ! あ、あとでメールする。
メール?? なんで?
いいから! 今ここでそれに触れないで!
あ、わかった。
と、ジョスエは小走りで鍵を取りに言った。
なあ、なんで鍵無いんだ? 落として失くしたとか?
それは違う。私はあなたも知ってるだろうけど、几帳面なほうだし、無くさないように小さい口紅やヘアゴムが入ったケースと一緒に入れて、カバンに入れたの。さらにその時は更衣室には私しか居なかった。
な、なんだって? それじゃあ無くしようがない…… 。
うん。
わかった、少し考える。
そういうとワナはその場であぐらで座り込み、考え始めた。そして、ジョスエを待った。
たしかに、あの女の子アンヌは鍵を無くすほどばかではない。アンヌ自身になにかあるのだろうか。
今起きたこの鍵騒動、どうして無くなったのか。
ワナは真剣に考えていた。
解決するのだろうか。実はこの日だけではなかった。
ー #1 鍵騒ぎ その1 ー つづく。
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