全てはいつかは終わりが来るのだと人は言う。
かけがえのない青春はやがて終わる。身長の伸びも止まる。好きなアニメもマンガも、いつかは完結して終わる。過ごしやすい春はやがて終わり、そしてやってきた夏もじきに終わる。どれだけ愛したとて、ペットとはいずれお別れになる。星でさえいつかは死ぬ。確か地球は寿命を終える前に膨張した太陽に飲み込まれるのではなかっただろうか。そうして『太陽系というか、太陽』になったその星も、いつか爆ぜて無くなるのだろう。当たり前に星の死を見たことの無い俺が、『星はいつか死ぬ』と言われてなんとなく納得しているのは、全てのことには終わりがあると了承していてこそなのかもしれない。
それでも。俺は永遠を信じたい。たいしてロマンチックでもない、独りよがりの永遠を。
人はいつか死ぬ。俺もいつかは死ぬ。でも俺が死んだことを、その時俺は知り得ない。死の床で息絶えるや半透明の霊魂がスッと起き上がり、『あーあ、死んじゃった』、なんてことはないのである。言ってみれば、春が終わるのは夏が来るからだ。高校生活が終わるのは、卒業して進学なり就職をするからだ。ペットの犬が死ぬのは、一夜明けてその子のいない朝が来るからだ。仮にそれが日本より遥か彼方スウェーデンの一家に訪れた『終わり』だったとして、その一家もワンコの犬種も知らない俺からすればそんなことは終わりでもなんでもない。始まってすらないとも言えるかもしれない。何しろ終わるためにはまず始まらなければいけないのだから。
屁理屈だと一蹴してくれても一向に構わない。とにかく俺はそう信じる。人は死んでもそのことには気づけない。その人という存在は、彼女がその時持っていたものは、死んだ当人にとっては永遠なのだと。
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