『……どうやら状況がクリアされてしまったようです』
その声を聞いて立ち止まる。大きく息を吸って、少し乱れていていた呼吸を整える。
「一通り殺して帰ったってこと?」
『どうも他の能力者と交戦した結果退却ということになりそうですが……現状SNSの書き込みを集めているだけなのでまだなんとも』
「他の能力者? 警察?」
『ありえない話ではないですね』
汗ばむ額を拭う。振り返ってゆっくりと歩き出す。
「……全然間に合わなかったな」
『転移ができると言っても、色々な問題がありますからね……仕方ないです』
「仕方ないなんて言ってられなくなるぞ、これから。とんでもない時代が来る」
『……だとしても、あなたが背負う必要はないんですよ』
「…………はぁ、あちぃ」
『お風呂沸かしておきますよ』
「アイスあったっけー」
『確かまだ箱の物が……次ちゃんが食べてしまっていなければ』
「じゃあダメだ」
『好きな物を買ってきてもいいですよ。ついでに皆のぶんも頼めますか?』
「わーい」
夏の日の空はうざったいほど晴れている。暑い暑いと言いながら外を歩ける日が明日もまた来るとは限らない。それでも一歩を踏み出す力を、少年は強く持っていた。
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