クソゲーな設定の内容を1から塗り替えろ、三十代おっさんの漂流記

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第3章 白熱の争奪戦

第15話 地底にある村

公開日時: 2024年9月22日(日) 19:09
更新日時: 2024年9月22日(日) 19:10
文字数:3,095

 ここからは第二部のお話となります。

 元パーティーの魔法から地底に落とされるというベタなパターンですが、改めて見直すとこれはこれで味わい深くなり……。


 何、料理番組でもないのに悟ってるんでしょうね。

「……うっ、イテテ。フジヤマさんめ、僕をこんな地底に陥れやがって……」 


 赤褐色なマグマの熱気が漂う洞窟で、僕は重い気持ちを引きずりながら、歩みを進めていた。

 上を見上げると魔法で落ちてきたらしき大穴があったが、時間と共に塞がれて今の状況となったんだけど……まるで生き物の腹の中のようだ。

 くっ、こんな時に飛翔魔法が使用できたらどれだけ楽に脱出できただろうか。


 ふと、鼻をくすぐる香ばしい匂い。

 匂いからして肉かな。

 そういえばもう何日とろくに食事を摂っていない……。


 現実世界で最後に食したのは鶴賀浜つるがはまさんが夜食に買ってきたおにぎりやサラダなどの簡単な軽食のメニューのみ。

 それ以降はこのクソゲーの攻略記事を書いていてパソコンのモニターを見ながら、プレーンのサラダチキンをかじり、他はエナドリしか服用していない。

 ただ食べればいいという両極端な食生活がしっぺ返しとして、この身に降りかかってきたというわけだ。


 だけど実際に食事が摂れるのはリアルのみで、異世界のゲーム内で空腹を訴えることはまずなかった。

 僕を取り巻くこのゲームのシステムが少しずつ変化していってるのか?


「まあいいか。肉を焼いてるということは、そこに人がいるという算段だしね」


 火を恐れずに自由に火を操る動物としたら普通は人間しか思い浮かばない。

 この場に猿人類はいなさそうだし、人間ということで確定だ。

 僕は美味しそうな匂いを頼りに一本道の洞窟内を進んだ。


 ──その場所へは僅か数分でたどり着けた。


 ウィンドウが示した洞窟内にある居住地は『デビルメイビレッジ』という名の村らしい。

 悪魔の村という直訳の通り、草木は枯れ果て、閉鎖空間のためか、立ち込める空気も重く、何もかも野蛮で呪われたような風貌な村だった。


 一番の特徴は僕以外、人間らしいアバターが誰もいないこと。

 全身が炎に包まれたフレイムンに、尻尾に炎を付けた犬のヘルバウンド、炎の甲冑を装備したガイコツ騎士と、次々とすれ違うのは炎の属性関連のモンスターばかりで、思わず身構えてしまう。


「おやおや、こんな場所で人間の冒険者と出会えるとは。長生きもしてみるもんですな」

「誰だ!?」


 一つの光の玉、ウィル・オ・ウィスプがフラフラとこちらに近付き、眩しく光って人間の魔導のローブを着たおじいさんの姿となる。

 僕はとっさに腰に収めていたナイフを構え、おじいさんに向かって臨戦態勢をとった。


「まあまあ。ワシに敵対心はない。その物騒な物をしまいたまえ」

「とか言いながらチャンスとばかりに攻撃を仕掛けてくるんだろ?」

「ホッホッホッ。中々血気盛んな若者じゃな。それもまた悪くないわい」


 おじいさんは長く切り揃えた白いヒゲを手で擦りながら、朗らかに笑ってみせる。

 杖や魔導書の類いは持ってなく丸腰の姿勢。

 どうやら外部から来た僕相手でも敵意がないのは本当らしい。


「ここはのお、地上から見放されたモンスターが集う場所での。地獄の成れの果てでもある寂れた村じゃ」

「そうなんだ、やっぱり普通の村じゃないんだね」

「ふむっ。本来なら地底の奥底にあるので、魂のある生きた人間がここに来るのは極稀ごくまれなんじゃが」


 稀ということは僕が最初ではないということか。

 気になって尋ねようかと思ったが、身寄りのないこんな場所で捕らえられたら、たまったもんじゃない。


 異端の地での余計な深入りは自分の首を苦しめる……かの宣教師の末路といったところか。


「お前さんも色々と苦労したんじゃな」


 おじいさんが隣で明かりの元でもある炎の番をしていたガイコツ剣士から、べた薪にのせていた漫画肉のような食べ物を受け取る。

 目の前の食べ物のやり取りに、僕のお腹が切ないほどに空腹の音を鳴らす。


「まあ、とりあえず腹を満たせ。じっと考え込むのはその後でもいいじゃろ」

「ありがとう」


 おじいさんがその肉をこっちに差し出してくる。

 正直、肉が食べたい気分ではないけど、折角せっかくの行為を無下にしたくない。

 僕はできるだけ悟られないよう、持っていたナイフを鞘に入れ、作り笑いを浮かべながら、その肉を手にする。


「ところでさ、これ何の肉かな?」

「ふむ。最近、評判の良いニワトリという品種じゃが。まあ、カエルと食感は一緒だけどの」

「ほっ……」


 異世界だけにヤバいモンスターの肉じゃないことに心から感謝する。

 まあリアルでもカエル料理はあるんだけど、大抵は丸ごと揚げた状態がほとんどで精神的に食べられるもんじゃない。


 でもニワトリの骨付き肉って、こんな緩やかなカーブを描いた骨格じゃないよね。

 ウィンドウで調べてもニワトリの肉としか表示されないし、何のニワトリの品種で、どこの部位の肉なんだろう。


「何ならカエルにするかの? 村の貯蔵庫に山ほど備蓄しておるんじゃが」

「い、いえ。ご心配なく!」

「そうか。カエルの南蛮漬けでも提供しようかと思ったんじゃけど?」


 冗談じゃないよ。

 いくらフィクションなゲーム世界でもそんなゲテモノ料理を持って来られたら、僕の神経、MPが極限まですり減ってしまう。


「あははっ。この肉とってもジューシーで美味しいですね」

「ふむっ。それは良かったのお」


 この噛み締める弾力、脂ののった肉質、味すらも無かった彩りのあるゲーム内での食事。

 僕は今までになかった異世界での体験に半分驚きながらも夢中で漫画肉を食らった。

 クソゲーの割にはそれなりに良い食事イベントだね。

 この世界にも優れた腕前の料理人はいると言うことだ。


****


「そうか。そのような目にあったのか……」

「はい。今までメンバーだった仲間が寝返って……」


 腹を満たし、心の底から安心した僕はこと顛末てんまつをおじいさんに洗いざらい話した。

 一人で抱え込んでしまう悩みだけに第三者に相談を持ちかけてもいいと思ったのだ。


「もしそうならお前さんの仲間たちは魔素まそ中毒に陥ったかもしれんの」

「まそとは?」

「魔毒の素粒子とも呼び、この世界の魔物たちを生み出している黒水晶から発せられている悪意あるエネルギー反応じゃ」


 初めて聞く黒水晶という言葉。

 その名の通り、セーブポイントの青白い氷の柱と違うのは色だけだろうか。


「じゃあ別世界リアルから来たプレイヤーも黒水晶の揺らぎによって?」

「そうじゃ。お前さん、黒い甲冑の仲間を見たんじゃろ。魔素は装備品さえも毒々しい黒へと変化させる」


 フジヤマさんの異変は鎧から通じた魔素という成分か。

 それ以前に魔素を浴びても何てこともない正常な僕はどうなるんだ?

 生活習慣病のように、これから徐々に病んでいく運命なのか?


 うーん、この場合どうなんだ、何かの耐性でもあるのか? と半分ワクワクしながら、ステータス画面を開くと……。


「……何かありきたりなステータスだな」


 同じ耐性持ちでも僕のは睡魔耐性か……。

 眠りの魔法にかからない、耐性ゆえによる眠れない日もあり、睡眠障害を引き起こす。   

 耐性がずば抜けて高いことはアスリートにも自慢できるというわけで……いや、寝れないのはキツイだろ。


「そんなあ。元に戻す方法はないのかい?」

「……ないこともないが、ちょっと過酷じゃぞ」

「何の。僕はこれでも勇者を目指してるんで」


 おじいさんに勇者の転職への移行を教えると、今までスマイルだったおじいさんの表情がみるみる険しくなる。


「勇者か。今まで何人もの強者つわものが散っていったけどのお」

「それは相手が悪かったんだよ」

「うむ。お前さん、そういう解釈もできるのか。ではワシがある場所まで案内する。黙ってついてこい」


 マグマが煮えたぎる赤い海の周辺。

 しかしながら蒸すような暑さは一向に感じなく、カラリとした熱気。


 僕はそんな地獄そのものの村から離れ、先頭を突き進むおじいさんの背を見失わないよう、慌てて後を追った──。



 実を言うと、この話くらいからスランプとなり、やむなく公開をずらし、かなりの空白期間を要した作品でもありました。


 しかしながら異世界ファンタジーにしては中々面白い作品ではないか、どうせならとノベリズム様限定ではなく、カクヨム様の方にも公開してみてはと……。


 それが逆に失敗し、読み手が分散し、闇に葬られる作品にもなってしまい、この作品以降はメリハリを決めて執筆をしています。

 今回の点を踏まえ、こちらサイドは思い切った新作というのはできるだけ避けていますね。

 例の二次創作なんて、ここで公開したら確実にアウトですし……。


 でもいくらなんでも魔素なんてパクリですよね。

 当時、色々と考えても設定が上手くいかなかったんですよね……。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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