ふっかぁああああああああつ!
やっとだぜ。
鎧が全身そろいました!
長かった……。
まあ、巨大狼との戦いの途中で一回フルアーマーになったけどね。
あれとかほぼ一瞬だったし。
なんとか全身鎧になれた。
さて、問題は、ここからどうやってロロコとクラクラのところに戻るかだが――。
ん?
水が、なくなってる?
さっきまでごうごう流れてた激流が弱まって、ちょろちょろ流れるだけになってる。
これなら普通に歩いて渡れそう。
ただ、歯の丈夫な魚どもが取り残されて、ビッタンバッタン跳ね回ってやがる。
あれに喰らいつかれると厄介だな。
俺はランプを拾い、元来た道を戻る。
魚どもがガチガチ歯を鳴らすが、食われないよう遠回り。
そして無事、二人のところに戻った。
どうも、洞窟ダンジョンのこの辺は、水流のせいで不定期にルートが変わるんだな。
気をつけないと、また流されちまう。
「おかえり」
〈おう、ただいま〉
ロロコに答えながら、俺はクラクラにランプを渡す。
「おお! これこそ自分が落とした灯りだ! 感謝するぞ、リビタン殿」
クラクラはそう告げ、ランプの底にあるつまみをひねった。
すると、ランプの中で火がともる。
普通の火――じゃないな。
小さな魔法陣が描かれていて、その上で炎が揺れている。
魔法具って感じか。
ん? なんかクラクラがロロコを見て驚いてるな。
「小柄だとは思っていたが……まさかこのような子供だったとは」
……まあ、驚くわな。
「そなたのような幼い者が、なにゆえ冒険者ギルドを目指しているのだ」
「私は人と待ち合わせ。ギルドに用があるのはリビタンの方」
「ほう、なるほど。そなたがリビタンか。?……なにか、先ほどより魔力が強くなったような……?」
クラクラは首をかしげる。
さっきは腕だけだったのが、フル装備になったからな……。
〈ま、まあ、ちょっと特殊な体質でね〉
俺は適当に告げるが、説明になってないよなぁ……。
〈そ、それより、まずは対岸に渡ろうぜ。またいつ増水するかわかんないし〉
「ふむ、そうだな」
クラクラは頷く。
なんとかごまかせたっぽい。
「けど、なんか魚の魔物がいっぱい。危険」
そうなんだよな。
水がないから動きが鈍いとはいえ、噛みつかれるだけで結構なダメージだろう。
「任せてくれ」
お、なんだクラクラ。
「ファングフィッシュだな。水の中にいなければ、対処のしようはある」
そう言うと、クラクラは腰に提げた剣を構える。
剣の柄にはめ込まれた石が光を放つ。
彼女の髪や服がふわりと浮かび上がった。
「これは、風魔法」
ロロコが呟いた。
クラクラはまっすぐ前を見据え、
「風よ、かりそめの形を得よ。我が刃を擬して放たれよ。其は我が願いなり――」
「ウィンドスラッシュ!」
居合抜きのように、クラクラが剣を抜き放った。
その刃からなにかが放たれる。
風の塊のようなそれは前方へと走り抜ける。
次の瞬間、ビタンバタンと暴れていた魚たちが一斉に、切り裂かれた。
〈おお!〉
すごい威力だ。
ロロコが解説してくれる。
「今のは詠唱を使う正式な魔法。私は使えない」
そういやロロコはいつも詠唱なしで放ってるもんな。
「騎士団に魔法使いがいるからな。あまり得手ではないが、この程度は使いこなせる」
〈いや、大したもんだぜ〉
俺なんか魔法使える可能性、皆無っぽいし。
「褒められるようなものではない……さて」
と言いながらクラクラは歩き出す。
向こう岸に向かう――のかと思いきや、さっきの剣の代わりに腰のナイフを抜いた。
そしてそれを手近のファングフィッシュに突き立てる。
〈ん? どうした。まだ生きてたのか?〉
「そうではない。食料補給だ。ファングフィッシュはなかなか美味だぞ」
「美味?」
あ、ロロコが食いついた。
◆◇◆◇◆
クラクラはナイフでファングフィッシュをさばいていく。
ファングフィッシュは表面の鱗はめちゃくちゃ硬い。
が、中身は柔らかく、また生で食べることも可能のようだ。
鱗を外し、なかの肉を切り出し、骨を取り除く。
ファングフィッシュのお刺身の出来上がりだ。
「生魚なのに、生臭くない。すごい」
「だろう? 栄養も豊富だぞ。王国では貴重な食料源なんだ」
ロロコとクラクラは仲よさそうに魚を食べてる。
ロロコが串に刺し、炎魔法で焼き魚にしたりもしてる。
「リビタン殿もどうだ?」
〈あ、ああ、いや、俺は大丈夫だ〉
ちくしょう、食事のときは毎回、リビングアーマーであることが悔やまれるぜ。
仕方ないので俺は、ステータスの確認でもしてるか。
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