〈ぐぐぐぐ……〉
「うぁあっ……!」
〈ぬぬぬぬぬ……!〉
「くぅうっ……!」
俺が拡散する魔力に当てられて、魔族たちはどんどん気を失っていく。
その範囲は俺を中心に同心円状に広がっていく。
すごく頑張っているように見えるだろうけど、実際にすごく頑張っている。
魔力が出過ぎないようにね!
なにしろ量も範囲もかなり絞らないといけない。
量が多すぎると魔族たちが気絶じゃ済まなくなりそうだし。
範囲が広すぎると関係ない魔物とか呼び集めちゃいそうだし。
どんなに強い力があってもそうそう万能とはいかないようだ。
で、魔力を放出しつつ俺は6000体のマジカルアーマーを操る。
手が足りないところを手伝って気絶した魔族を拘束していく。
あとまだ暴れている魔族を取り押さえたり。
崩落した山の危険なところを修復したり。
大騒ぎだ。
おかげでエドと魔王を捜索する余裕なんかない。
けど、そっちはしばらく放置しても大丈夫だろう。
エドの目的を達成するためには俺が必要だ。
俺を吸収しなければクーネアさんは魔王として完成しないわけだからな。
と、そんな感じで魔族への対処を続けていると、動揺の声が聞こえた。
「まさか……」
「陛下……!」
陛下?
って魔王陛下?
なわけはない。
ここにいる人間が陛下と呼ぶ人間といえば一人しかいない。
俺はロロコとクラクラと一緒にそちらへ向かった。
「そなたが噂のリビングアーマー……リビタンか」
そこには一人の男が立っていた。
元は豪奢だったのだろう、ボロボロの装束を身にまとっている。
威光がなければごく普通の男にしか見えない。
それでもそれが誰なのか、周りの人々の反応から知ることができた。
〈あなたは、ヴォルフォニア帝国の皇帝陛下ですね?〉
「まあ、まだ退位はさせられていないからな」
フィルシオール十七世はそう言って、寂しそうに笑った。
◆◇◆◇◆
俺たちは皇帝陛下を連れて元帝都に戻った。
あ、元帝都っていっても廃都ダンジョンのことじゃないよ。
俺たちが拠点にしてるガルアシラ・ヴォルフォンシアガルドのこと。
廃都ダンジョン=ガルシラは旧帝都と呼ばれることが多いようだ。
……どっちにしろややこしいな。
魔族の対処はマジカルアーマーたちに任せることにした。
人員はほかにもたくさんいるので大丈夫だろう。
で、元市庁舎の一室に集まった俺たち。
特に誰もなにも言わなかったけど、自然と皇帝陛下を上座に座らせる。
大勢に見られ、それでも臆することがないのはさすが統治者といったところか。
敵陣だというのにこの落ち着きぶりもすごい。
いや、違うかな。
これはなんか色々諦めてる感じだ。
自分がここで殺されても構わないと思ってる。
そんなふうに見える。
〈……それで、皇帝陛下がなんの用でこんなところまで?〉
俺の問いかけに小さく頷き、皇帝陛下は言ってくる。
「頼みがあって来た。ライレンシアを救ってほしい」
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