どうも、リビングアーマーの俺です。
隣にいるのは人犬族のロロコ。
反対隣はエルフのクラクラ。
斜め後ろにドワーフ嬢のアルメル。
鎧の中にゴブリン嬢のラファ。
そして俺たちを先導するのはドラゴン娘のドグラだ。
ラファの魔力過活性症を治すため、医者がいるフィオンティアーナにやってきた。
……のはいいんだけど。
到着すると、城門の前には長蛇の列。
なんでも、侵入者があったとかで検問が強化されてるらしい。
まいったな……。
と思っていると、ドグラが「すぐに入れる」と言い出したのだ。
よく分からないまま、俺たちは彼女についていく。
ドグラは長蛇の列を無視して、どんどん城門に向かっていく。
列に並んでいる人たちが俺たちを奇異な目で見てくる。
そりゃそうだろう。
どう見ても横入りしようとしてるようにしか見えない。
実は、他にも何人か列を無視して城門を抜けている者がいた。
けどそれは、豪華な馬車に乗った貴族とかだった。
どうやら、中にいる要人と会う約束があったりするみたいだった。
俺たちはどう見ても、そんな約束があるようなメンバーには見えない。
しかしドグラは平然と城門の前まで来て、
「おい」
列を監視している兵士に声をかけた。
「ああん? なんだお嬢ちゃん」
「我らは今すぐここを通りたい。すぐにメディシア家の当主に知らせろ」
「っ……お名前をお聞きしても?」
当主と聞いて口調が急に丁寧になったな。
「ドグラじゃ」
「ドグラ様? ドグラ様、ドグラ様……」
兵士は持っていた紙束をめくる。
どうやら中の人間と約束がある人物をあらかじめ書き記してあるらしい。
「ないなぁ……ええと、当主のラフィオン様で合ってます? お約束は何時ですか?」
「約束? そんなものはない」
「ない? ええと、おそれながら、本当にラフィオン様とお知り合いの方ですか?」
「いや、知らぬ。ラフィオンとやらと会うたことは一度もないの」
「…………」
ドグラの言葉に兵士は盛大なため息をついた。
と思ったら俺の方を睨んできた。
「ちょっとあんたねえ。娘の遊びに付き合ってないでおとなしく並んでなきゃだめだよ。こっちだって暇じゃないんだ」
ブツクサ言ってくる兵士。
いや、そんなこと言われても……。
「おい」
と、ドグラは兵士に呼びかける。
「今すぐラフィオンとやらに伝えろ。執務室の左から二番目の棚の、上から三番目の引き出しに入っている箱を開封して中の手紙を読め、とな」
「あのねぇお嬢ちゃん――」
「良いのか? これを知らせなかったことで、そなたは仕事をクビになるやも知れぬぞ。それどころか、フィオンティアーナから永久追放されるかもな。あるいは家族もろとも縛り首に……」
「ちょ、ちょちょ!」
焦った口調でドグラを止める兵士。
ちょっと困惑してる。
ただの子供のお遊びに思えなくなってきたんだろうな。
わかる。
ドグラの口調と表情、年季が入ってて怖いんだよ。
「ええと……お手数ですけど、一応確認してもらえますか?」
アルメルがそう言って、すっ、と兵士になにかを渡す。
兵士はそれをしまうと、
「仕方ないな。待っていろ」
そう言って、門の内側にいる兵士のところへ歩いていった。
〈今なにを渡したんだ?〉
「これです」
あ、銀貨!
「こういうときスムーズに運ぶなら大した出費ではありません。ヴォルフォン貨じゃないからそこまで価値は高くないですしね」
そうなのか。
ええと、ヴォルフォンっていうのはヴォルフォニア帝国の通貨単位だったな。
この世界では一番価値が安定してるって話だったはず。
そうじゃないってことは、べつの国が発行している通貨ってことになる。
価値が低いってことはつまり……。
「ドワーフ貨か。珍しいな」
クラクラが言ってくる。
〈ドワーフ貨?〉
「その通り、ドワーフ族の間で使われている通貨だ。純度は高くないが、造形が細かいので収集品として人気がある」
〈へー〉
そうだそうだ。
通貨の価値は純度で決まるんだった。
……ドワーフ貨はそれだけじゃないみたいだな。
「中には宝飾品と同等の扱いをされるような名品もあると聞いたことがある」
そりゃすごい。
「まあ私はそこまでのものは持ってないですけどね。こういうときに便利なので何枚かは持ち歩いてるんです」
なるほどな。
俺たちの世界で言う記念硬貨とかそういうのに近いのかもな。
なんて話してると、さっきの兵士が戻ってきた。
なんかやけに急いでいる。
それに顔が青い。
「ああああああの!」
兵士は俺たちの前で直立の姿勢を取ると、身体が半分に折れるくらい深く礼をした。
「ささささ先ほどは大変失礼をいたしましたっ! ラフィオン様がお会いになられますのでどうぞこちらへっっっ!」
なんだこの急変。
なにがあったの?
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