どうも、リビングアーマーの俺です。
こっちはゴブリン娘のラファ。
あれは俺たちに迫る巨大な蛇の群れ。
ぎゃーーーーーー!
壁伝いに移動中の俺たちに、窪地の底にいた大蛇たちが群がってきているのだ。
俺たちがいるのはちょうどこの場から出られる穴と穴の中間くらい。
進んでも戻っても同じくらい時間がかかる。
どうするんだよ!
というところで俺は、窪地の一ヶ所に、なにか地面と違う材質のものを発見した。
〈なあラファ。あれってなんだろ?〉
「ん? ――おお、あたしの腕と似てるね」
とラファは左腕の義手を掲げつつ答える。
やっぱりか。
ラファの腕は、彼女の小柄な身体と不釣り合いな巨大な義手だ。
アルメル曰く、それはゴーレムのパーツなんじゃないかと言う。
それと同じようなものが窪地の地面にある。
〈あれ使って、この蛇たちどうにかできないかな〉
「んー、どうだろ。あんな感じのものはときどき見かけるけど、この腕みたいに動いたことはないよ」
そうなのか。
じゃあなんらかの突破口にはならないかな……。
――どごおおん!
――がらがらがら!
〈うおおおおお!?〉
なになに!?
なんなんだよ!
「上にもケイヴ・スネークがいたみたいだね」
ラファの言うとおりだった。
上から岩と一緒に大蛇たちが降ってくる。
どうやら大勢で岩壁を破壊してここに飛び込んできたらしい。
俺たちという獲物の存在を感知したのか?
それにしても積極的すぎやしませんかねえ!
〈おっと! うぉ! ぬぉ!〉
「うわ! ひゃ! あぶな!」
上から降ってくる大蛇をなんとかかわす俺とラファ。
――どすん!
わー!
大蛇がぶつかって俺の右腕を持っていきやがった!
ああ……蛇の群の中に落ちて。
押し潰されていく……。
せっかくアルメルにつくってもらったのに……。
しかしマズいな。
このままだと本当に俺もラファも蛇に埋れて圧死だ。
〈ラファ。あそこに跳ぶぞ〉
俺は決意を固めて、ゴーレムの腕がある辺りを指差しながら言う。
「でも、あれ使えるかどうかはわからないんだよ」
〈わかってる〉
あの腕に関しては当てにしないほうがいいだろう。
〈でも、とりあえずあの辺は蛇がいないから、いったんあそこに逃げよう。そこから穴に向かって全力で走るほうが、ここで動けないよりマシだ〉
「なるほど。それはそうだね」
頷くラファ。
さすがダンジョン暮らしは決断力があるな。
〈あそこまでは俺が跳ぶ。つかまってくれ〉
「わかった」
ラファが俺の腕にしがみつく。
ってゴーレムの腕でそこまで全力出さないで!
ミシッていったミシッて!
……よし、いくぞ。
〈ぬおおおおおおお!〉
俺は全力でジャンプ。
っていっても、見た目はすごく間抜けだ。
なにしろフヨフヨ浮きながら下降していくだけだからな。
けど、このペースなら、いい感じであの地面に着地できそうだ。
……ってお前らまでついてこなくていいんだよ!
壁際の俺たちに向かってきていた蛇たちが、律儀に俺たちについてくる。
俺は浮くのに入れている力を減らす。
着地のときに衝撃が強くなるけど、蛇に追いつかれるよりマシだ。
どん! と着地。
よし、蛇には追いつかれてない。
このまま出口の穴に向かって……。
――どすん!
うおおお!?
真上から大蛇が降ってきて、俺の頭パーツが吹っ飛ぶ。
なにしてくれてんだこの蛇!
くそ、仕方ない。
俺はパーツがなくなってもなんとかなるけど、ラファは逃さないと。
残った左腕でラファを抱え、俺は出口の穴に向かって……。
――どすん!
――どすんどすん!
――どすんどすんどすんどすんどすんどすんどすんどすんどすんどすんどすん!
クッソお前らいい加減にしろよ!
大蛇がどんどん降ってきて、俺たちはすっかり取り囲まれてしまった。
「うわー、ヤバいねこれ」
〈すまん、判断ミスったかも……〉
どうする?
逃げ場はなくなった。
蛇と戦うか?
一匹一匹ならなんとかなるかもしれないけど、この量は無理だ。
くそ……。
――どすん!
ガシャアアアン!
と、また一匹蛇が落ちてきた。
その巨体にぶつかって、地面に埋まっていたゴーレムのパーツが飛び出した。
石とも金属ともつかない材質の人形。
…………ん?
これ、俺が使えるんじゃね?
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