トカゲウオの尻尾は、魚の尾びれみたいに平べったく広がってる。
その尻尾で、あの野郎、俺が投げた小石を打ち返しやがった。
おいおい。
そんな当たり判定の広いバットとか反則じゃありません?
なんてモンスター相手に言っても仕方ない。
ここはルール無用の地獄甲子園。
そもそも野球じゃないけどね。
〈くそっ〉
俺は休まず小石を投げ続けるが、そのほとんどが打ち返されてしまう。
こっちに飛んでこないのがせめてもの救いだ。
尻尾バットはそこまで狙いが正確じゃないみたいだな。
しかし、余裕が出てきたのか、また突進攻撃をしようとしてくる個体が現れる。
ロロコがナイフや炎魔法で牽制するが、本当に牽制だけだ。
トカゲウオどもは簡単にかわしてしまうので当たらない。
それなら……。
〈ロロコ、魔法は抑えろ〉
「どうするの?」
〈俺が動きを止める。一体ずつ仕留めよう〉
「……わかった」
ロロコは頷く。
俺がどうするかはわからないだろうに。
ずいぶん信用されてるもんだ。
いいぜ。
相棒の期待にはちゃんと応えてやらないとな。
〈おりゃ!〉
俺はまた小石を拾って、腕を回転させる。
ヒュゴ!
バシッ!
飛んできた小石を、トカゲウオの尻尾バットが打ち返す!
と、見せかけて!
がしっ!
――ボロボロボロボロ!?
ふっふっふ。
捕まえたぜ。
俺は小石と一緒に、手甲を飛ばしたのだ。
そして、尻尾に接触すると同時、それをつかんでやった。
〈ロロコ!〉
「ん」
「ファイア・アロー!」
トカゲウオはそれをかわそうとするが、残念、俺ががっしり掴んでるんだな。
炎の矢がトカゲウオを撃ち抜く!
よし、いけるぞ!
俺は即座に手甲を移動させ、元の通り腕パーツにはめる。
そしてふたたび小石を拾って――。
ヒュゴ!
――ボロボロボロボロ!
警戒したのか、トカゲウオは打ち返さずにかわした。
おーっとまた残念!
今度は手甲は飛ばしてないんだな!
オレはすかさず次の小石を投げつける!
ヒュゴ!
ビシッ!
小石にぶつかって動きを止めるトカゲウオ。
そこにロロコがふたたびファイア・アロー。
やったぜ、二匹目!
ふっふっふ。
俺が毎回手甲を飛ばすといつから勘違いしていた?
小石のサイズは様々だ。
握った状態の手甲と見分けなどつかないだろう。
くくく。
どんどん行くぜ?
手甲、小石、小石、手甲、手甲、小石。
小石――と見せかけて、遅れて手甲!
トカゲウオたちはフェイントに対応しきれず動きを止め、炎魔法に倒されていく。
数も半分くらいに減って、残り十匹くらい。
これならなんとかなるか。
ん?
――ボロボロボロボロ!
一匹のトカゲウオが、鳴き声とともに前に出てきた。
他のやつより少し立派な背びれと尾びれを持ってる。
この群れのボスだろうか?
そいつは俺を見ると、尻尾を軽く振ってみせた。
なんだ、勝負しようってのか?
いいぜ。
俺も元人間だ。
スポーツマンシップにのっとって、正々堂々フェアプレイといこうじゃないか。
俺は、手近な小石に近づくと、腕を回転させ――
――ボボボボボロロロロロロガアアアアア!!!
――ギャーーー!!
いきなり大口開けて突っ込んできやがった!
ちくしょう、フェアプレイするんじゃなかったのかよ!
俺はとっさに身をかわす。
すると。
――ボロボロボロボロ!
――ボロボロボロボロ!
――ボロボロボロボロ!
ボスを中心にひとかたまりになって。
トカゲウオたちは一斉に逃げ出した。
〈…………あー、びっくりした〉
どうやら、俺たちを襲うのがわりに合わないと思ったんだろう。
ボスは、逃げる隙をつくためのフェイントだったみたいだな。
なんにせよ、助かった……。
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