ヘルメスさん曰く、俺は救世主らしい。
救世主としてなにをするかというと、
「世界を作り替えていただきたいのです」
うん。
具体的になにをするのかさっぱりわからないね!
〈つまり、なにをすればいいんだ?〉
「魔王が復活しないようにしていただきたいのです」
うん。
まだわからん。
「困りましたね。どこからお話しすれば良いでしょう」
苦笑し、首を傾げるヘルメスさん。
意識の残滓とやらのわりに、ずいぶんと表情豊かだ。
「あの、そもそも魔王ってなんなんですか?」
とアルメルが問いかける。
そういやその疑問が残ってたな。
ドグラの話では、魔王とは、太古に存在したと言われる『魔力の源』だ。
世界の終わりに、全てを魔力で飲み込んでしまうとかなんとか。
ドラゴンの伝承にはそうあるらしい。
一方で、ヤマトの里のシノビであるヒナワの話だと……
魔王は魔族を率いる王で、原初の魔法使いヘルメスに倒されたと言われている。
こっちはスタンダードなイメージの魔王だ。
どっちが正しいんだ?
そう問いかけると、ヘルメスさんはこう答えた。
「どちらも正しいですね」
ああん?
「魔王は、太古に存在した魔力の源です。そしてその残滓は今もこの大陸の近く深くにあり、魔力の供給源となっています」
「それで、地下に存在するダンジョンに魔物が発生するんですか!」
アルメルが目を丸くする。
「そうです。そして、その魔力の源から発生した種族が魔族です。それが純粋な魔力体なのか、魔物が進化したのか、人型種族が魔力によって変化したのかはわかりませんが」
魔族か。
今のこの世界にはいないみたいだけど、昔はいたってことか。
「魔族は『魔力の源』を信奉し、その元に世界を支配しようとしました。そして、特殊なスキルにより『魔力の源』に人格を付与したのです。それが魔王となりました」
なるほど。
それが、ヒナワが言ってた方の魔王伝承になるわけか。
「そうですね。わたくしは魔族が扱っていた力を研究し、魔法の体系を築きました。そして、仲間とともに魔王と魔族の軍勢を打ち倒しました。結果、魔王は人格を失って、その破片は大陸地下の各地に飛び散りました。それが現在の多くのダンジョンの元となっています」
そうか。
チェンハルト商会のエドは、そのうちの一つを発掘したんだな。
「魔族たちはその一部を利用して魔王の復活を目論みましたが、それはわたくしが作ったゴーレム軍団によって阻止しました。和解の道も探りましたが、魔族たちは受け入れず、激しい戦闘の末、魔族は全滅しました」
……絶海の孤島ダンジョンのゴーレムがそれってことか。
〈その、バラバラになってる魔王が、復活しようとしてるのか?〉
「そうです。この天空塔ダンジョンの崩壊によって」
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