巨大なドラゴンは翼を羽ばたかせながら、天空塔ダンジョンの屋上に降りてきた。
そしてブワッ! と風を巻き起こしたかと思うと。
次の瞬間、幼い少女が俺たちの前に立っていた。
ドグラそっくりだ。
ただ、雰囲気がずいぶんと違っている。
真っ直ぐに切りそろえた前髪。
フリフリの可愛らしいドレス。
ドグラに比べると、御令嬢って雰囲気の女の子だった。
そのドラゴン娘――マグラはツカツカとこちらに歩み寄ってくる。
姉のドグラに視線を向けると、
「ぶわはははははははは!」
大爆笑した。
「なんですのお姉様! その頭!」
ブロッコリーみたいになってるドグラの髪を指差して言うマグラ。
お前ー……っ!!!
今までみんな気を使って見て見ぬふりしてたんだぞー!
「久しぶりに会った姉に対してその無礼……よーしぶっ殺す」
落ち着けドグラ!
これ以上天空塔ダンジョンの崩壊を早めないでくれ!
「そんなことより、どうしたのですかマグラ? あの装置になにか異常でも?」
いや、そんなことってヘルメスさん。
っていうか……。
〈マグラって、ここを占拠して迷惑をかけてたんじゃ……?〉
それで俺たちがここまで来たんだよね?
「あーん? なんですの、このガランドウの鎧人間は? 下賤の者があたくしに無礼な口を聞くとタダじゃおきませんわよ?」
「いけませんよ、マグラ。彼は救世主なのですから」
「へー、こいつが……?」
疑わしそうな顔でこちらを見てくるマグラ。
なんか聞いてた話と違うな?
伝説の災厄と言われたエンシェント・ドラゴン。
かつていくつもの街を滅ぼしたとかなんとか。
ここを管理していたオークの王も、彼女に敗れ死んだという話だった。
しかし目の前の彼女はとてもそんなことをしそうには見えない。
それにそもそも、ヘルメスさんとも普通に親しそうだ。
どういうことかと問うと、マグラはわざとらしくため息をついた。
「はぁ~あ。これだから狭い視野でしかものを見られない人間は嫌なのですわ。それらは全て、この世界のためにしていることですのに」
〈どういうことだ?〉
という疑問には、ヘルメスさんが答えてくれた。
「彼女には、この世界の魔力の流れを維持する手伝いをしてもらっていたのです。彼女が滅ぼした街は、魔王を復活させようと目論んでいたり、強力な魔術装置を開発していたりして、危険でしたのでやむなくお願いしたのです」
「それだって、ちゃんと警告はしましたわ。でも、聞く耳を持たなかったから破壊したのですわ。それも、最小限の被害で済むようにしましたのに、勝手に話に尾鰭をつけたのは人間どもですわよ」
そうだったのか。
情報ってのはいくらでもねじ曲がってくもんだな……。
〈じゃあ、ここにいたのはどうしてなんだ?〉
「あたくしの魔力で、あの装置の影響を抑えていたのですわ。妙な術式が組み込まれていて、破壊することはできませんでしたので、せめて……というわけですわね。ちなみにオークの王はあたくしの話を聞いて、装置をなんとか破壊しようとしていたら足を滑らせて塔から落ちたのですわ」
つまりただの事故ってこと?
真相を聞くとなんてことない話だったな……。
「ふん! で、装置の影響を抑えているはずの貴様がどうしてここに来たのだ?」
めっちゃ不機嫌なドグラ。
対するマグラが、パン、と手を叩いて言う。
「そうでしたわ。その装置が始めました。もうあたくしが抑えても抑えてなくても関係ありませんわね。そろそろ爆発するのではないかしら?」
もう相手エンシェント・ドラゴンとか関係なく、全員叫んだね。
「「「「「〈早く言え!!!!〉」」」」」
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