「また行き止まり」
〈くそ……じゃあこっちか〉
「そっちはさっき行った」
〈うそ、マジで?〉
「まじ」
〈やばいな。覚えきれねえ……〉
どうも、リビングアーマーの俺です。
こっちは犬耳っ娘のロロコ。
俺たちふたりはダンジョンの奥地で完全に迷子になってる。
早く脱出して、ロロコの仲間と合流しなけりゃいけないのに。
俺が最初にいたあたりは分かれ道とか全然なかったのにな。
この辺は、逆にアリの巣みたいに複雑になってる。
普通の道路と違って立体だしさー。
こんなの俺の頭じゃ無理だよー!
いや、頭空っぽだけどね……。
一応、なんの目安もなしに歩いてるわけじゃない。
ロロコが鼻で臭いを探ってくれてる。
ロロコは、ちょっと目を閉じ、クンクンと鼻を動かしてる。
すごく犬っぽいな。
さすが人犬族。
そういや、さっき聞いたけど、目もめっちゃいいらしい。
それで、暗闇でも見えてたんだな。
「こっち。木の香りがする」
〈よし、じゃあ行ってみるか〉
俺たちはふたたび歩き出す。
が――やはりまた行き止まりだった。
〈ぬおー! なんなんだこの洞窟!〉
「おかしい。植物の臭いがするのに、全然出口につかない」
まさかとは思うけど、時間が経つと形が変わるダンジョンだったりしない?
ゲームとかであるよね、そういうの。
「なにそれ。こわい。聞いたことない」
違うか……。
しかし、相当複雑な構造なのは間違いない。
マッピング技術とかあればよかったんだけどな。
無理か。
ふたりとも道具は持ってないし。
……。
…………ちょいと待ってくださいよ。
「なに。どうしたの」
突然上半身を浮かせ冒険書を取り出した俺に、ロロコが首をかしげる。
ふっふっふ。
まあ落ち着けって。
もしかしてだけどさ。
冒険書って、どっかに地図が載ってたりしないかな。
本人ステータスにモンスター図鑑とくれば、ダンジョンマップがあったっていいだろ。
どーれどれ、と。
…………ないな。
「ダンジョンマップは別売り。冒険書にはついてないはず」
マジかよ。
くそっ、ケチくさいな、えーと、ナントカ商会。
俺の期待感を返せ。
――ごごごごごごごごごご……。
……ん?
なんの音だ?
地震、じゃないな。
地響き?
なんか、大量の生き物が洞窟のなかを走り回ってるみたいな……。
「あ」
〈どうした、ロロコ?〉
「植物の臭い、なんでするのか、わかった」
〈おー、どういうことだったんだ?〉
「あれ」
と指差す先を見る。
〈ぬおおおおおおおおお!?〉
洞窟の先。
そこから無数のなにかがこっちに迫ってくる。
あれは――ネズミ!?
俺がはじめて遭遇したモンスター。
そして鎧の胴パーツに大穴を開け、このダンジョンに飛び込む原因になったやつら。
もちろん、あの館にいたのと同じ個体ではないと思うけど。
とにかく、因縁の相手には間違いない。
ようし!
いまこそリベンジしてやるぜ!
こい!
「逃げる」
へ?
ちょ、ちょっと待ってくださいよロロコさん。
だって相手ネズミですよ?
いくら大群とはいえ。
あのときの俺とは違うんです!
大コウモリ軍団を倒した俺らがネズミなんか恐れてどうするんです!
「違う。危険なのは、ネズミじゃない」
〈え?〉
「綺麗に並んでるのは敵を襲うとき。そうじゃないのは逃げてるとき」
言われてみれば。
大ネズミたちはめちゃくちゃに動き回ってる感じだ。
前に俺を襲ってきたとき。
逃げるのに夢中だったから気にしてなかったけど。
いまから考えると、目の前のこいつらよりは統率が取れてたかもしれない。
〈え、じゃあ〉
「後ろになんかいる」
見る。
いるいる。
いますね。
なんですかねあれ。
真っ黒い丸?
違うな。
筒状のなにかが洞窟をぴったり埋め尽くしてるんだ。
真っ黒く見えるのは、身体とほぼ同じサイズの口だ。
「あれは、ダークネス・ワーム」
〈うわあああああああ!〉
俺たちは全力で走り出した。
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