ううう……。
ダンジョンの坂道を転がり落ちて、頭がクラクラだ。
ようやく止まったので身体を起こす。
と言っても上半身しかないんだけどね!
巨大カマキリの鎌で胴がぶっ壊されて、下半身とは泣き別れ。
それで坂道を落ちてきたもんだから、完全にはぐれてしまった。
なんだこのシュールな状況……。
まずは周りがどうなってるのか確認しよう。
俺は腕で身体を動かしながら周囲を見回す。
そこは、これまでの通路みたいな場所と違い、かなり広い空間だった。
奥のほうには、池みたいのも見える。
ざっと見た感じ、モンスターはいないっぽい。
まあこれまでダンゴムシといいカマキリといい突然現れたし、油断はできんけど。
さて、周りの安全確認ができたところで、次は俺自身の状況だ。
まず、今いろいろとものを考えてる上半身。
これはある程度パーツがくっついたままでいてくれてる。
頭パーツ(つまり兜)。
首回りのパーツ。
右腕パーツと左腕パーツ。
左右の手甲。
そして、胴体パーツが、真ん中あたりで破壊されてる。
細かく分けるともっと分解できそうだけど、まあそんなところだ。
問題は下半身のほうだ。
転がり落ちて上半身とはぐれたすえ、なんかバラバラになってしまったっぽい。
なんとなーく感覚でわかるのだ。
これは不思議だな。
離れてても、ちゃんと自分の身体の一部として認識できている。
まず、腰パーツがどこかに落ちてる。
なんて名前かわからないけど、エプロンみたいな前ガードも、それにくっついている。
右脚はまとまって、それとはべつの場所にある。
左脚のほうはやっかいだな。
太ももパーツと膝パーツと脛パーツと足パーツの四つに分かれてしまってる。
胴体パーツの下半分は完全に壊れてしまって、感触がない。
胴体はあきらめたほうがいいか……。
あ、あと冒険書と、コインが入った布袋もどこにあるかわからないな。
困った。
どうしよう。
……と悩んでも仕方ない。
とりあえず、パーツを集めることを目標にしよう。
そのためになにをすればいいか考えるんだ。
うーん……。
よし、ちょっと、パーツ単体で動けないか試してみよう。
俺のステータスのなかに、『スキル:霊体感覚」ってのがあった。
そこからの推理だけど、俺の身体の本体は鎧じゃなくて霊体だ。
魂的なものが鎧に取り憑いて、動かしてるってこと。
だからこそ、各パーツを交換しても操ることができるのだ。
で、バラバラになっても、俺は各パーツを認識できる。
ってことは、それらのパーツにも霊体が残ってるってことだ。
じゃあ、その霊体を動かそうとすれば、鎧パーツも動かせるんじゃね?
というわけで、レッツトライ!
〈ぐぬぬぬぬ……!〉
あ……!
なんか、動きそうな、感じが。
しないでもないぞ!
難しいのは、バラバラになったパーツが動くイメージを描きにくいってこと。
上半身だと、腕を動かして這って移動って感じでわかるんだけど。
腰パーツとかさ。
普通に考えて動きようないじゃんって思っちゃう。
だからイメージを切り替える。
人間の身体じゃない。
各パーツが磁石で引き合うみたいなイメージをしてみる。
お!
なんか動いた!
言葉にすると、こんな感じだ。
ももももももももも……。
なんだろうな。
空気のなかを泳ぐみたいな感覚。
ん?
なんか、ついさっきもそんな感覚があったような。
似てるというか、真逆って感じだったけど……。
…………。
…………まあいいや。
いまはパーツを動かすことに集中集中!
各パーツがどこにあるのか、はっきりとはわからない。
けど、なんとなく、上半身に近づいてるか遠ざかってるかはわかる。
それを頼りに移動させる。
お!
腰パーツがこっちに来るのが見える。
…………目で見ると、めっちゃ不気味だけど。
あ!
右脚も!
おお、左の腿パーツ! 脛パーツ!
膝パーツに、足パーツも!
みんなおかえり!
なんとか全部集まった。
次は、これを組み立てないとな。
とはいえ、各パーツを動かすコツはだいたいつかめた。
もう、盗賊さんの手を借りなくても、自分でできるはずだ。
いくぜ、合体!
ガションガションガションガション!
完成!
やったぜ!
…………ん?
なんかやけに視界が低いな。
しかもなんかグラグラする。
…………。
ああ、そうでした。
胴パーツがぶっ壊れてるんだった。
上半身のほうに、その壊れたパーツが残ってるから、安定が悪いんだ。
仕方ないな。
これならないほうがマシだ。
俺は上半身を浮かせて、胴パーツを外す。
そして、首回りパーツと腰パーツを直接合体させた。
だいぶ慣れてきたな。
今度こそ完成!
めっちゃ視界低いけど、安定はした。
……うん。
鏡とかないからわからんけど。
いまの俺、たぶんめちゃくちゃ間抜けな外見だよな……。
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