転生したら鎧だった

〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
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220 エドの目的

公開日時: 2022年8月4日(木) 16:12
文字数:949

 ロロコを治療し終えた俺は、エドと向き合った。


 エドの背後には怪しく脈動する肉塊がある。

 あれが魔王の肉片だろう。


「素晴らしい!」


 エドは場違いに明るい声で言ってくる。


「世界中の魔力と接続し、あらゆる術式を体得し、回帰魔法も実現させた。これであなたは名実ともに、魔王の再来となった」


〈なに言ってんだ?〉


 回帰魔法?

 魔王の再来?


 いや、そんな単語の訳のわからなさよりも。

 エドの、余裕な態度が不快だった。


 まるで全てを自分が仕組んでいるかのような。

 全てが自分の手のひらの上であるかのような。


 そんな態度だ。


「そうですよ。あれほどの傷を、今ほどの短時間で治すなど、通常の回復魔法で行うなど不可能です。あなたは大切な彼女を治すために最適な術式を、自分が知りうる中から選び出して使った。それは回復魔法ではなく、回帰魔法――因果をねじ曲げ状況そのものを前段階へと回帰させる魔法です」


 ほーん……?


〈ま、なんでもいいよ。ロロコが助かったんなら〉


 それに、あんたをぶっ飛ばすことにも変わりはないんだし。


「そうですか? 回帰魔法を扱うことができるのは魔王だけだとしても?」


〈…………〉


 魔王の再来ってのはそういう意味か。


〈だとしても知ったことじゃないな。俺は魔族の王様になんてなる気はない。魔王と同じような体質になったからって、魔王と同じように生きなきゃいけない理由なんてないだろ〉


「もちろんです。僕もそんなことは望んじゃいませんよ。僕の目的はもっと有益なことです」


〈この世界をこんなに引っ掻き回しといて、有益もないもんだと思うけど〉


「そんなことはありません。僕と、それにあなたにとっても」


 俺にとっても?

 なに言ってるんだ、こいつは?


 そりゃ元々は俺にとってこの世界は縁もゆかりもない。

 ただの転生先だ。

 家族もいなけりゃ友達もいない。

 どこもかしこも馴染みのない異世界だった。


 けど、今はもう違う。

 多くの仲間ができて。

 顔馴染みができて。

 一緒に戦ったり。

 一緒に笑ったり。

 生死を共にしてきた。


 その世界をこんなメチャクチャにしておいて。

 それでもやるべきことなんて俺には思いつかない。


 けど。


 エドはあくまで笑みを浮かべたまま。

 両腕を左右に広げ、まるで聖者のように。

 自分の目的を告げた。


「これであなたと僕は、魔王の力を有したまま元の世界に帰ることができるのです」

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