大蛇の群れに囲まれたリビングアーマーの俺とゴブリン娘のラファ。
その目の前に現れたのはゴーレムの残骸だった。
残骸とはいえ、わりとしっかり残っている。
ところどころ壊れてるけど、元の形はわかる。
不思議な形状だ。
俺みたいな鎧と、ロボットアニメのロボットの中間みたいな外見。
材質は石とも金属ともつかない奇妙な素材。
アルメルが『オリハルコン』とか言ってたっけ。
子供が捨てたみたいに倒れているそれを、俺は拾い上げる。
〈これ、使えないかな〉
「リビタンに接続するってこと? あたしの腕みたいに?」
ラファは自分の左腕を掲げて言ってくる。
彼女の左腕はゴーレム製の義手だ。
それは彼女の意思で自由に動かせる。
だったら、このゴーレムもいけるんじゃないかって思ったのだ。
っていうか、ほかにできることがないんだよ!
大蛇の集団は俺たちにどんどん迫ってくる。
上からもどんどん蛇が降ってくる。
このままじゃ俺たちは蛇に押しつぶされちゃう。
囲まれて、逃げ場もないし。
試してみるしかない。
俺はゴーレムを抱えると、ジッと睨み付ける。
前に、ドラゴンと戦うためにリビングアーマー軍団になったときのイメージだ。
意識を、目の前にある人形に移す感じ。
〈………………はぁ! ダメかぁ!〉
意識が移動してくれない。
なんでだ?
やっぱり鎧じゃないとダメなのか?
「ひょっとして起動すればいいのかも」
〈起動?〉
「うん。この腕も、起動させたらあたしの肩に勝手にくっついてきたんだ」
なにそれ怖い……。
しかし、起動か。
ますますロボットめいてきたな。
〈で、起動ってどうやるんだ?〉
「うんとね、こうやって」
〈っておい!〉
ガイン!
とラファは義手でゴーレムの残骸をぶん殴った。
壊れたらどうする!
『起動します』
〈うわあ!〉
「ね、起動したでしょ」
……したですね。
なんなのゴーレム。
昭和の家電製品なの?
『自動補助機能が作動しています。頭部、及び右腕を補助します』
ゴーレムさんはそう言うと、いきなりバラバラになった。
そして頭パーツと右腕パーツが俺に向かって飛んできた。
――ガション!
〈うわっ〉
――ガシィン!
〈のわっ〉
なんだこれ。
ゴーレムの頭部と右腕が当たり前のように俺の鎧に接続した。
あっという間に、なんの違和感も感じなくなる。
しかも……。
〈行くぞ、ラファ!〉
「え? ――ひゃ!」
説明してる暇はない。
大蛇たちがすぐそこまで迫っているのだ。
俺はゴーレムの右腕を掲げると、出口の穴に向かって射出した。
腕の真ん中あたりから先が、空気の噴射で飛んでいく。
飛んでいった腕の先と残ったパーツとは太いワイヤーみたいなロープで繋がっている。
ウッヒョー!
超かっけえ!
穴の到達した手の指で、俺はしっかりと岩を掴む。
〈よしっ〉
そして一気にワイヤーを縮める。
俺の身体は抱えたラファと一緒に穴へ向かって飛んでいく。
タッチの差で、蛇が俺たちのいた場所を埋め尽くす。
「うっわー、危なかったね」
〈ああ。でもなんとかなったな〉
ひゅん、がしょん、がしん――とワイヤーが回収され、腕が接続される。
その勢いで俺たちは穴に飛び込み、蛇地獄から脱出した。
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