〈おーら、こっちだこっちだ!〉
俺は両腕を振ってゴーレム団子を呼び寄せる。
――ギュイギュイギュイギュイギュイ!
ゴーレム団子が高速回転しながら近づいてくる。
「こっちだよー!」
次はラファが左腕を振る。
――ギュイギュイギュイギュイギュイ!
ゴーレム団子は今度はそっちへ向かう。
「よし、押し出すぞ! せーの……」
「「「「「「ファイアー!」」」」」」
冒険者の皆さんで魔法を使えるメンツとロロコが炎魔法を放つ。
その勢いでゴーレム団子の進路が変わる。
岩のくぼみに引っ掛かったゴーレム団子はそこで少し止まる。
その間に俺とラファは移動して、ゴーレム団子をおびき寄せやすい位置に向かう。
「こっちは安全です!」
アルメルは進路の先にモンスターがいないか確認する役だ。
……うん。
なんとかなりそうだな。
俺たちは協力してゴーレム団子を誘導していた。
目指すは、大量のゴーレムパーツが眠る場所。
そもそもリザルドさんたち冒険者部隊は、ゴーレムパーツの発掘をしにきた。
なので、このダンジョンのどのあたりにゴーレムパーツがあるか知ってるってわけだ。
「逸れたほかのメンバーもとりあえずはそこを目指してるだろうしな。仲間と合流するためにも、俺らはそこを目指したい」
とのことだ。
ちなみに、一番ゴーレムパーツが多いのは、海の先にある孤島エリアだそうだ。
今向かってるのはその少し手前。
ま、どこでもいいよ。
ゴーレム団子の脅威から逃れられるのならね!
――ギュイギュイギュイギュイギュイ!
ゴーレム団子は相変わらずすごい回転だ。
くぼみの岩をあっという間に削って自由に動けるようになる。
〈こっちだこっちだ!〉
ふたたび俺が誘導。
「こっちだよぉ!」
ラファが誘導。
「「「「「「ファイアー!」」」」」」
炎魔法で押し出し。
その繰り返しだ。
すんごい地道な作業。
ゲームの攻略法だったらうんざりするパターンのやつだ。
けど、現実の作業の場合気を抜けないのが辛い。
ミスればどこかで人が死ぬかもしれないんだからな。
俺たちは気を張り続けながら単純作業を繰り返す。
けど、やがて終わりがきた。
「ついたぞ! ここだ!」
冒険者の誰かが声をあげた。
俺とラファが誘導して、ゴーレム団子を広い空間に導く。
『同期信号を確認。信信号信号信号号信信多数多数多数数多多数』
ゴーレム団子が俺たちを追いかけるのをやめた。
その場に止まって、地面にゴンゴン体当たりを始める。
――ギュイギュイギュイギュイギュイ!
すごい勢いで岩を削っていく。
リザルドさんが言ってくる。
「ここは地下に大量のゴーレムパーツがある。それを掘り起こしてる間、しばらくは移動しなくなるだろう」
やった。
これでゴーレム団子との追いかけっこは終わりだ。
あとはせいぜい、お腹一杯になるまでパーツを食い続けてくれ。
「よし、移動しよう」
〈はい〉
俺たちはゴーレム団子を置いてダンジョンを進むことにした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!