どうも、リビングアーマーの俺です。
天空塔ダンジョンの最上階を目指していた俺たち。
さあ、攻略を再開するぞ! と思ったところに謎の声が聞こえてきた。
そして俺たちは一気に塔の屋上まで連れてこられた。
そんな俺たちの前に声の主が姿を現す。
その顔は……。
「私そっくり……」
と声を上げたのはクラクラ。
そう、その人物はクラクラとよく似ていた。
ただ、よく見ると、雰囲気が違う。
クラクラは騎士ということもあってどこか凛々しい感じだけど。
現れた人物はどっちかというと柔らかい印象だ。
「……そんな」
息を呑んでいるのはドグラである。
「ライレンシア……?」
目を擦り、もう一度現れた人物を見る。
ライレンシア。
バリガンガルドの近くの湖の名前の由来になった人物で。
絶海の孤島ダンジョンにいたゴーレムの名前にもなっていて。
そして、ドグラの婚約者……。
確かに、彼女がそうだというなら。
クラクラを見たドグラが、ライレンシアと勘違いするのも頷ける。
しかし……。
「いや……違うな。似ているが、ライレンシアではない。貴様、何者じゃ」
ドグラの問いに、その人物は柔らかく笑みを浮かべながら軽く頭を下げた。
「わたくしはこの塔を生み出した者」
え?
それってつまり……。
「ヘルメス・ライレンシアと申します」
え?
あ?
ん?
なんだってーーーーー!?
「へ、へ、ヘルメスって、あ、あ、あの、原初の魔法使いと呼ばれる、あの、ヘルメスですか!?」
「はい、そのヘルメスです」
アルメルの問いに、あっさりと頷くヘルメスさん。
ヘルメスって。
ダンジョンの入り口の館を作ったとか。
魔王を倒したとか。
ゴーレムを作ったとか。
原初魔法(俺が放った白光とかだ)を生み出したとか。
帝都を築いたとか。
やたらに色んな伝説が一人歩きしている、あのヘルメスのこと?
俺が問いかけると、ヘルメスさんはそれにもあっさり頷いた。
「その通りです。あと、それは事実ですね。ダンジョンの入り口の館を築いたのも、魔王を倒したのも、ゴーレムを作ったのも、原初魔法を生み出したのも、ヴォルフォニア帝国の以前の帝都を築いたのも、全てわたくしです」
…………。
まさか本人の口から答えを聞くことになるとは。
「では、ライレンシアというのはなんじゃ。我の愛したあのライレンシアは……」
ドグラの問いに、ヘルメスさんは答える。
「ライレンシアは姓で、始祖となるのがわたくしです」
〈つまり、ファミリーネーム?〉
「はい。一時期、名として使われていたこともあったようですが」
ああ、俺がいた世界でもあるよな。
ファーストネームにもファミリーネームにも使われる名前って。
ドグラの婚約者のライレンシアはそのパターンだったわけだ。
「あ、では、この塔に何かの装置を取り付けたライレンシア博士というのは?」
アルメルが問う。
「わたくしの末裔です。わたくしの子孫は各地におりますので。なにしろ、原初の魔法使いの血を引く者となれば、各地から引く手数多でしたからね。わたくしのひ孫世代あたりが、特にすごかったです」
なるほど。
そしてその血は、フリエルノーラ国のエルフにも入っていた。
クラクラもそれを受け継いでいた、というわけか。
「それでは、貴様はずっとここで下界を見下ろして暮らしていたというわけか?」
ドグラが訪ねる。
そうだ。
ヘルメスは数千年も前の人物だったはずだ。
それから今までずっと、ここにこもっていた?
「失礼いたしました。わたくしは正確には、ヘルメス本人ではありません」
ん、どういうこと?
「わたくしは、この天空塔ダンジョンに残されたヘルメスの意識の残滓です。ヘルメスの目的を達成するため、救世主が現れるのを待っていたのです」
救世主?
「あなたのことです」
とヘルメスさんはこっちを見る。
え?
は?
……俺!?
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