どうも、リビングアーマーの俺です。
チェインハルト商会の実験施設に乗り込んだ俺たち。
その地下に魔王が……いなかった。
とはいえ、目的であった高純度の魔鉱石は手に入れた。
というわけで長居は無用。
俺たちは実験施設を出て、フィオンティアーナへ向かう。
「失礼だが、リビタン殿はその外見で城門の検問を抜けられるのか?」
とヒナワが言ってくる。
その検問、君のせいで強化されてるんだけどね?
とはいえ、まあ今回は問題ないだろう。
俺たちは検問に並ぶ列を無視して、城門近くの兵士に声をかける。
〈すみません、ラフィオンさんに会いたいんですが〉
ラフィオンさんはこのフィオンティアーナの統治者だ。
「ああ? なにもんだお前ら?」
怪訝そうな顔で俺たちを見てくる兵士。
まあそれもしょうがない。
全身鎧の俺。
人犬族のロロコ。
エルフのクラクラ。
ドワーフ嬢のアルメル。
忍び装束のヒナワ。
どう見ても普通の旅人というメンツではない。
しかし、
〈ええと、ドグラの関係者だと伝えていただければわかると思います〉
俺はドラゴン娘の名前を挙げる。
彼女は大昔、ラフィオンのご先祖様を助けたことがあるらしい。
そのおかげでメディシア家は繁栄を築くことができたとか。
なのでこれでいけるはず。
と思っていたら、
「ドドドド、ドグラ様の! どどどどどうぞお通りください! あ、いや! 詰所でお待ちください! すぐにラフィオン様をお呼びしますので!」
〈え、いや、そこまでしなくても〉
「お待ちください!」
〈はあ……〉
いつの間にかドグラの名前が有名になってる。
なにやらかしたんだあいつ……?
程なくしてラフィオンさんがやってきた。
俺たちは馬車に乗ってメディシア家へ向かう。
「なんだか、街の様子が前と違うようだな」
クラクラが気づいてそう言う。
言われてみればそうだな。
なんか妙に静かというか穏やかというか。
人通りはあるんだけど、喧嘩の声とか、そういう荒々しいのが少ない感じ。
「あんな人たち、前いましたっけ?」
とアルメルが指差す。
道端に、白い修道服みたいなのを着た人たちが立っている。
托鉢をしているお坊さんみたいだ。
ラフィオンさんが苦笑して言ってくる。
「あれはドグラ教の信者です」
ドグラ教!?
〈そんなのあったんですか?〉
「いえ、つい先日誕生しました」
先日!?
いやなにやってんだよあのドラゴン娘。
「先日、ドグラ様がドラゴンの姿でこの街の上空に現れまして、市場で、その、吐瀉物を吐き出され遊ばされました」
どう表現したもんか散々迷って、ラフィオンさんはそう告げた。
えーとつまり。
ゲロしたわけね。
ドラゴンの姿で。
ポローナニアで嗅いだ、オークを誘き寄せる香りのせいだろうな。
あれが気持ち悪くてあいつは離脱したわけだし。
しかし街で吐くことないだろ……。
「それがたまたま違法な取引をしようとしていた輩の真上だったのです。それが成立すれば、のちのちこの街に重大な損害を及ぼすような」
「すごい、偶然」
ロロコの言葉にラフィオンさんはうなずく。
「はい。ですが多くの者はそうは思わず……ドグラ様はこの街の守護神であると。正しい取引をする者を救い、間違った行いをする者を罰するのだと、そんな評判が一気に広まりまして」
ドグラ教の信者が大量出現……ってわけか。
まあたしかに、ドラゴンにゲロを吐きかけられるとか……。
喰らいたくない天罰としてはかなりの上位に入るよな。
〈ドグラは今どこに?〉
「我が屋敷にて静養しております。お加減もずいぶん良くなったようです」
ふむ……。
いったい本人はこの街の状況をどう思っているのか。
会うのが楽しみだな……。
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