参上したヒナワと一緒に移動する俺たち。
やってきたのは、建物の奥にある一室だ。
〈おお、すげえ!〉
俺は思わず感動の声をあげた。
そこは和室に改造されていた。
畳敷きに障子窓。
床の間があって掛け軸もある。
俺の昔の家は全部洋室で、こういう部屋に馴染みがあるわけじゃないんだけど。
それでもなんか懐かしい感じがするな。
「まずは報告いたします」
そう、畳に正座したヒナワが告げる。
ちなみにヒナワ以外は全員、正座しない。
床にあぐらだったり、立ったままだったりだ。
俺も立ったまま。
この格好で座ると、畳を傷つけそうだしね。
「魔物の群れは先日と変わらず、結界を越えてはおりませぬ。ただ、結界の力は弱まっており、突破されるのは時間の問題かと」
「そう……」
「エドに動きは見られませぬ。相変わらず沈黙を保っておりました」
うん、話が見えん!
ヒナワの話を聞いているロロコの代わりに、隣にいたアルメルに訊く。
〈結界って?〉
「モンスターがこの街に入ってこられないように張ったものです。わたしやクーネアさんで術式を作って、エルフの皆さんに張ってもらいました」
なるほど。
モンスターがここを攻めようとしている。
で、それはエドの仕業……。
〈エドは何のためにここを攻撃しようとしているんだ?〉
「わかりません。魔王を完全復活させるのに必要な何かがあるのだとは思うんですけど、いまだにそれらしいものは見つかっていません」
〈エドと話はできないのか?〉
まあ、世界を滅ぼそうとしてるやつと交渉も難しいだろうけど。
「それ以前の問題ですね。郊外の山に洞窟があるのですが、エドはそこにこもって出てきません。入口は魔王の欠片で埋まっていて、洞窟に入ることもできません」
こちらと対話する気はないってわけか。
〈じゃあ、どうするんだ? このままじゃ、その結界ってのが弱まって、モンスターが雪崩れ込んできちゃうんじゃないのか?〉
「そう、だからその前に打って出る」
とロロコが言ってきた。
〈どうするんだ?〉
「そのために、大変動の話をする必要がある。ヒナワ、お願い」
「かしこまりました」
というわけで今度はヒナワからの説明のようだった。
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