どうも、リビングアーマーの俺です。
突然だけどこれ憶えてる?
地震のようで地震じゃない。
空気中の魔力が震えているせいで、地震みたいに感じるこの現象。
そんな前のことじゃないはずなんだけどな。
なんかずいぶん久しぶりに起こったような気がする。
「魔響震かっ」
クラクラ、正解!
それだ!
魔響震。
それは高い魔力を持った魔物が目覚めるときなんかに起こるらしい。
〈…………〉
「…………」
「…………」
「なんじゃ、我ではないぞ!」
ジト目で見る俺とロロコとクラクラに、ドラゴン態になったドグラが言ってくる。
まあ、俺は目ないけどね。
「でも、前にバリガンガルドでは、揺らしたでしょ」
と容赦ないロロコ。
「あ、あれは寝起きで寝ぼけてただけじゃ。しっかり目が覚めてれば、周りに魔響震など起こさんわっ」
あ、そういうもんなんだ。
じゃあこの揺れはなに?
「た、大変ですっ」
と、この屋敷の主人であるラフィオンさんが部屋に飛び込んでくる。
「街中に魔物が出現しました」
〈え、じゃあこの魔響震はその影響ですか?〉
「おそらくそうでしょう……」
「だが、どうして突然魔物が? フィオンティアーナの近くにダンジョンなどはなかったはずだ」
とクラクラ。
ラフィオンさんは首を横に振り、
「わかりません。ですがとにかく避難を。魔物たちは街の南部に出現して、こちらへどんどん迫ってきています」
この屋敷は、フィオンティアーナの中では北寄りに位置する。
たしかチェインハルト商会の実験施設が街の南方にあったよな……。
なにか関係あるのか……?
いや、そんな考察は後回しだな。
それよりまずは避難だ。
「避難? なにを寝ぼけておる」
と、窓の外のドグラ。
「魔物が出たからなんじゃ。そんなもの我が皆殺しにすれば良かろう」
「おお!」
ラフィオンさん、ドラゴンに向かってひざまずく。
「また街をお助けくださいますか、ドグラ様」
「助けるというほどの手間でもないしの。それに……」
と、ドグラは下のほうに目を向けたようだった。
「もう住民どもはそんな空気になっておるようじゃぞ」
窓から覗いてみれば、なるほど……。
さっき見かけた白い修道服の人たちが早くもドグラの足元に群がっている。
ドグラ教の信者の皆さんだ。
「ドグラ様! 御加護を!」
「どうかこの街をお救いください!」
「我らに救済を!」
そんな声が聞こえてくる。
「まったく、仕方ないのう」
ドグラは満更でもない様子で尾を軽く振る。
なんかバリガンガルドのときとはずいぶん変わったな。
人間に対して優しくなったというか。
「では我が人間どもを救ってやるとしようかの」
ちらっちらっ。
……あ、これ違うわ。
クラクラの前でいい格好しようとしてるだけだわ。
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