どうも、リビングアーマーの俺です。
今回は両脚パーツだけでお送りしております。
隣を歩いているのはエルフのクラクラ。
ちなみに腕パーツだけになったときみたいに装着してもらってはいない。
両脚だけの俺はクラクラの隣を歩くみたいに移動している。
いや、フヨフヨ浮いて移動するほうが早いんだけどね。
脚だとどうもこんなふうに動いたほうがしっくりくるのだ。
「しかし妙なところだな。ダンジョンの中とは思えん」
周りを見回しながらそんなことを言うクラクラ。
たしかにその通りだ。
苔モンスターに押し合いへし合いされ、バラバラになってしまった俺。
その一部がクラクラと一緒にこの別フロアにたどり着いた。
なぜかパーツ同士での意識の共有ができないので、ほかの状況はわからない。
すごい落ち着かない気分だな。
前はバラバラになった身体の意識の共有なんてできなかったのに。
いや、そもそもバラバラになったら死んでたか。
ともかくそんな感じで今歩いているのは『街』だった。
建物が立ち並んでいて、道が伸びていて、広場なんかがあるあの街。
ただし人はいない。
生活感もしない。
無人の、嘘くさい街。
街は城壁で囲まれていて、その外は見えない。
多分、そこがフロアの壁でもあるんだろう。
そこまでたどり着いたら、次のフロアにいけるってことかもしれない。
しかし……。
〈全然城壁に近づけないな……〉
さっきからずっと歩いてるのに、城壁が近くに迫ってこない。
まるで知らない間に同じ場所をぐるぐる回らされているみたいだ。
「これは歩いていてはダメなのではないか?」
うん、俺もそんな気がしてた。
〈仕方ない。クラクラ。ちょっと俺を履いてくれ〉
「わかった」
うなずき、脚パーツに脚を入れるクラクラ。
〈よし。ゆっくり動くから上手くバランスをとってくれ〉
そう言って俺は少しずつ宙に浮き上がっていく。
そう、地上がダメなら空中からってわけだ。
クラクラは上手にバランスを取っている。
さすがエルフにして剣士。
身体能力が高いな。
やがて俺は周りの建物よりも高い位置へ上る。
そのまま上昇しつつ、城壁へ近づいていく。
「これなら上手くいきそうだな」
〈ああ……〉
しかし城壁の向こう側はどんなふうになってるんだ?
と思っていたら――
ぐいーーーーーーーーーん!
と城壁が背伸びをするみたいに俺たちよりもさらに高いところまで大きくなった。
おいおい、そんなのありかよ!
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