「たすかった」
言いながら、ロロコは頭や尻尾をブルブルブル!と振り回す。
びっしょりの身体から水滴が飛び散った。
おお、さすが犬っぽいな。
俺のほうは身体が金属だからな。
水を落とす必要もない。
――と。
バシャン!
――ボロボロボロボロ!
バシャン!
――ボロボロボロボロ!
俺たちが流されてきた洞窟から、トカゲウオも流されてきた。
底の浅い池に落ち、ビタンバタン暴れた末、身を起こす。
そして、俺たちの方を睨んでくる。
いや、そんな睨まれてもねえ……。
ここまで流されたの、別に俺たちのせいじゃないですよ。
あんたたちが勝手に追ってきたからじゃん。
襲ってこなけりゃ、こっちだって反撃しなかっただろうしさー。
まあ、単純にこの辺がこいつらの縄張りってことかもしれないな。
その辺、モンスターと会話はできないから仕方ない。
なんにしろ、トカゲウオたちは戦意バリバリ。
逃げるにしても、ある程度、応戦するしかないな。
「くるなら、こい」
ロロコが威嚇するように、ナイフを構える。
トカゲウオたちは、一瞬ひるんだように見えたが――。
――ボロボロボロボロ!
びゅおん!
〈ぬぉ!?〉
「……っ」
四肢と尾で地面を叩き、すごい勢いで突っ込んできた。
俺とロロコは結構ギリギリでそれをかわす。
なにこいつら!
地上でもこんなに素早く動けるのかよ!?
水陸両用とか聞いてねえぞ!
まあ、外見がトカゲ+サカナだからな……。
それくらいできてもおかしくないか。
しかし、そうなるとやっかいだ。
俺とロロコが動ける分、水中よりはマシだろうけど。
びゅおん!
びゅおん!
びゅおん!
うわー!
次々襲ってきやがった!
「……っ!」
ロロコがナイフをふる。
それで何匹かはしのげたが、全部は無理だ。
「ぐっ……」
〈ロロコ!〉
一匹がまともに激突し、ロロコは吹っ飛ばされた。
ロロコはすぐに立ち上がるが、トカゲウオたちはそれを取り囲む。
ロロコは今度は両手を構える。
「ファイア!」
ごう、と巨大な火の玉が出現する。
――が、トカゲウオたちはそれをあっさりかわしてしまった。
いま明らかに、ロロコの構えを見て警戒してたな?
こいつら、魔法のことわかってやがる。
これまで戦ってきたモンスターにそんなのいなかったのに。
「やっかい」
ロロコが小さく呟く。
〈弱点とかわからないのか?〉
そう聞いてみるが、ロロコは首を振る。
「この辺のモンスターのことはわからない」
そうか。
ちょっと生活圏からズレれば、モンスターの分布はガラッと変わるんだな。
くそっ。
まともな鎧姿なら、もうちょっとまともに共闘できるのに。
片腕だけなんて、なんか投げるくらいしかできねえ……。
……。
…………お?
投げる、か。
それ、いいかも。
俺は当たりを見回す。
流れ込む水流でできた浅い池の周り。
そこには、小石がゴロゴロ転がっている。
この辺りの洞窟は硬い岩盤だ。
とはいえ、水の力をなめてはいけない。
雨だれ石を穿つ、なんて言うように、硬い岩でも削る力を持っている。
つまり、これらの小石は、洞窟の岩が削られ、水流にここまで運ばれたものだ。
ま、そんなことはどうでもいい。
ようは、投げるのに手頃なサイズと形なら、なんでもな。
ひょい。
〈とりゃ!〉
ポーン。
手近なトカゲウオに投げつける。
――ボロボロ?
ダメだな。
トカゲウオ、大して気にしてねえ。
普通に投げるんじゃダメだ。
支えとなる身体が無い分、どうしても勢いが弱くなる。
よし、それなら……。
ひょい。
〈とりゃ!〉
ビュヒョン!
ビシッ!
――ボロボロボロ!?
よっしゃ!
これならいけるな。
いまやったのは、二の腕パーツを空中に固定させて、肘から先を回転させる投げ方。
バッティングセンターの投球マシンみたいなノリだ。
俺は肘から先を回しながら、拾う先から石を投げつける。
ひょい。
ビヒョン!
ビシッ!
ひょい。
ビヒョン!
ビシッ!
だんだんコツがつかめてきたぜ。
んじゃ、そろそろ、全力投球と行きますか。
ひょい。
んぐぐぐぐぐ……!
と、俺はひねりを加えて、最速になるような角度で腕を回転。
最適のタイミングで手を開き、小石を投げつける!
ヒュゴッ!
ベイン!
…………へ?
おいおい。
マジかよ。
トカゲウオの野郎。
尻尾で打ち返しやがったぞ!
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