カエルの群れと毒の沼からロロコを逃した俺。
さあ、もう逃げも隠れもしないぜカエルやろう!
いざ尋常に、正々堂々勝負勝負――
――ベシャ!
――じゅううううう!
うわああああああ!
あの、ちょっと、あなたね?
こっちはちゃんと正々堂々やってやろうって姿勢見せてるじゃん?
なんで不意打ちとかするの、ねえなんで?
――ベシャ!
ぎゃああああ!
いいよ!
わかったよ!
これが自然界の厳しい生存競争だもんな!
……にしてもこれはやばい。
すでに下半身がほぼ溶かされてしまった。
上半身もピンチだ。
だが――。
俺と向き合うカエルの背後から、ダンゴムシ装甲を抱えた右腕が迫ってる。
ふっふっふ。
そうやってこっちに注目してればいいさ。
その間にズバッと真っ二つだ――。
――ベシャ!
わあああああ!?
そっちにもカエルいたの!?
右腕が溶けちゃった!
ダンゴムシ装甲は毒の沼にぼちゃん。
おいおい、これ、まずくね?
――ビヨォン!
ピト、と兜にカエルの舌が張り付く。
うげ、取れねえ!
ちょ、引っ張んなって。
なに、お前、俺を飲み込む気!?
絶対まずいって!
やめとけって!
くそっ。
こうなったら、肩パーツを分離!
脱出!
せめて一部だけでも逃げのびてやる――
――びよん!
ばしゃん!
ちくしょう!
別のカエルに踏んづけられた!?
肩パーツが毒の沼に沈む。
――じゅうううう!
音を立てて金属の鎧が溶けていく。
くそっ。
こっちはダメだ。
身動きも取れねえ。
かといって兜のほうも、カエルに飲み込まれる寸前。
自由になるパーツがないぞ!
やべ……これ詰んだかも。
――ゲコゲコゲコゲコ!
わあああああああああ!
やめろおおおおお!
「放せ!」
へ?
「リビたんを放せ!」
毒の沼の向こう。
逃げたはずのロロコが、ナイフを構えて立っていた。
え、ちょっと待って。
リビたんって俺のこと!?
いつの間にそんなあだ名つけてたの?
いやいやいや。
突っ込みどころはそこじゃない。
なんで逃げてないんだ、お前。
んでもって、なんで俺を助けようとしてるんだ。
俺、リビングアーマーだぞ?
しゃべるけど、モンスターだぞ?
そんなやつ助けてる場合じゃないだろ。
〈ロロコっ――〉
もう一度、逃げろと叫ぼうとした。
けど、できなかった。
――ぉおおおおおおおおおおおおんっ!
なに、いまの!?
ロロコの口から出たの?
完全に遠吠えだ。
犬が発する声。
それを一声発したロロコは――まるで別人のようになっていた。
髪の毛や、犬耳や尻尾の毛が荒々しく逆立つ。
目は釣りあがり。
瞳はギラリと輝いている。
口元から犬歯がむき出しになって。
そこから低いうなり声が聞こえる。
――ぐるるるるるるる。
カエルたちが怯えてる。
逃げようとしてる。
けど――ロロコは逃さない。
――があああああああああああうううっ!
大ジャンプ。
カエルの上に飛び乗った。
手にしたナイフをカエルの脳天に突き刺す。
――ゲコゲコゲコゲコ!
周りのカエルが怒りの声をあげる。
――ベシャ!
毒液がロロコの腕に!
――じゅうううう!
音を立てて服が溶けていく。
腕にはやけどのような傷。
けれど――ロロコは止まらない。
「放せ! リビたんを放せえええええ!」
〈ロロコ! もういい! やめろって!〉
俺の制止の声なんて届かない。
ロロコはひたすらにナイフを振り、カエルたちを仕留めていった。
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