転生したら鎧だった

〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
三門鉄狼

139 この世界には魔王がいるの?

公開日時: 2022年4月30日(土) 16:12
文字数:1,733

 どうも、リビングアーマーの俺です。

 チェインハルト商会に依頼されて忍者を追っていた俺たち。


 ようやく捕まえた忍者のヒナワ(と名乗った)はとんでもない話をしてきた。


 フィオンティアーナ郊外に建つ、チェインハルト商会の研究施設。

 あの建物の地下には、広大な空間が広がっている。

 そしてそこには、巨大な化け物が安置されている、というのだ。


〈化け物? モンスターってことか?〉


「あんなモンスターは見たことがない。そもそも生物なのかどうかもわからなかった。とにかく巨大な、肉の塊だ」


 そいつはたくさんの装置に繋がれて、ゆっくりと呼吸していた。

 そして、エドはそいつにこう呼びかけていたのだという。


『ご機嫌いかがですか、魔王陛下』


 魔王陛下。


 魔王!


 え、なにそれ!

 聞いてないんだけど。

 この世界、魔王なんているの?


 いや、まあたしかに。

 魔法があって。

 モンスターがいて。

 冒険者ギルドがあって。

 獣人がいて。

 エルフがいて。

 ドワーフがいて。

 ドラゴンがいて。

 ゴブリンがいて。

 魔王がいたって全然おかしくなさそうだけどさ。


 じゃあ先に魔族とかも出といてくれよ。

 突然魔王とか言われたら驚いちゃうじゃんか。


「なるほど……あの魔力は、そういうわけか」


 ドグラはなんだか納得したように頷いている。


 そういえば彼女、あの建物に禍々しい魔力を感じるとか言ってたな。

 それにエド自身にも危険を感じているみたいだった。


〈なあ、魔王ってなんだ?〉


 俺はロロコに問いかける。


「知らない」


 え、知らないの。


 あ、そうか。

 ロロコはそもそも人犬族の村で暮らしてたからな。

 その周辺以外のことはよく知らなくてもおかしくない。


「えっと、クラクラなら知ってるか」


「いや、知らんな」


「え? じゃあアルメルは?」


「私も聞いたことはありません」


 え、マジで。


 じゃあ知ってるのドグラだけってことじゃん。


〈ドグラ、魔王って何者なんだ?〉


 俺は問いかける。


 魔王――やっぱり魔族の王様とかだろうか。

 闇の力を持っていて、この世界を滅ぼそうとしていたのとか。


 しかし、ドグラの答えはちょっと違っていた。


「魔王とは、太古に存在したと言われる『魔力の源』じゃ」


 ……ほう?


「この世界は物質と魔力の二層構造になっておる。そのうち物質は造物主たる神々が生み出した。しかしそれだけでは世界は動き出さなかった。そこで神々は魔王を創り、魔王から生み出される魔力でこの世界を満たしたのじゃ」


 ……ほうほう?


「世界を魔力で満たした魔王は役目を終え、神々によってどこかに隠された。だが、世界の終わりにはふたたび姿を現し、この世界の魔力を全て飲み込むのだ……とドラゴンの間の古い伝承にある」


 ……なんか、話が急に壮大になったぞ。

 神々とか世界の終わりとか、神話みたいだ。


「むろん、魔王の姿を見たものなどドラゴン族にもおらん。だからこの伝承は信じられておらんし、人間どもの間でも廃れていったのだろう」


 なるほど。


「待て」


 ん?

 ヒナワが妙な表情をしているぞ。


「拙者たちの里に伝わる話とはずいぶん違うぞ」


 え、どういうこと?


「ヤマトの里では、魔王とは魔族を率いる王で、原初の魔法使いヘルメスに倒されたと言われている」


 ん……こっちはスタンダードな魔王っぽい話だな。

 そしてまた出てきたヘルメス。


 ほんと色々やってる人だな……。


 しかしどういうことなんだろう。

 どっちが本当の話なんだ?


 なんて検証するのはこの場では無理だろう。

 そして、どっちにしろ、エドがヤバいものを持ってるのはたしか。

 疑問がいっぱいなのもたしかだ。


 ヒナワが見たっていう肉の塊は本当に魔王なのか?

 エドはどこでそれを見つけたんだ?

 それに、そんなもの研究して、エドはなにをしようってんだ?


 これは確かに、あいつの味方なんかして大丈夫か? って気分になってくるな。


 話が急にデカくなりすぎて、全員しばらく考え込んでしまう。


 そのときだ。


 ――ごごごごごごごごごごご……。


 なんだか不気味な地響きが聞こえてきた。


 なんか嫌な予感がするなぁ。

 こういう音が聞こえてきたとき、だいたい次のパターンは決まってるんだよなぁ。


〈なんかやばそうだ。とりあえず地上に出よう〉


 俺たちは地下水道から梯子を伝って街に出た。


 そのとたん、住民の叫び声が耳に飛び込んだ。


「オークだ! オークの群れが襲ってきたぞぉ!」


 ほらやっぱり!


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート