俺の放った原初魔法ビームがガルシラ中枢部の術式を破壊する。
その結果、宙に浮いていたライレンシア博士が落ちてくる。
皇帝陛下が慌てて駆けつけ、それを抱える。
「おっと、これは御無礼を」
「なにを言っている……無事か、ライレンシア」
「ええ、問題はないようです。しかし――」
とライレンシア博士が周囲を見回す。
見れば周りの壁からチューブのようなものが飛び出してくる。
石とも金属ともつかない材質で、丈夫そうなのに柔らかくうごめいている。
おそらく材料はゴーレムたちと同じオリハルコンだろう。
ライレンシア博士を物理的に捕らえようというつもりか。
けど、そうはさせるか。
〈ロロコ、いけるか?〉
「任せて」
ロロコが頷き、焔狼態に変身する。
そして口から炎を噴き出してライレンシア博士にはきかける。
「うわっ……ん? これは……」
炎をぶつけられた博士は元の人間の姿に戻った。
これは……ますますクラクラにそっくりだな。
「ライレンシアっ!」
「ちょ、陛下……?」
思わずといった様子でライレンシアに抱きつく皇帝陛下。
ライレンシアのほうも苦笑しつつまんざらでもなさそう。
はいはい、ごちそうさま。
博士が魔族でなくなったことにガルシラの術式システムも気づいたようだ。
周りで蠢いていたチューブが獲物を見失ったようにフラフラする。
そこにロロコが飛びかかる。
「がう、ぐる、ぐるるるるっ」
ロロコはチューブに噛みつき、炎を撒き散らす。
俺はその様子を見て術式を探る。
……ふむふむ。
……なるほどね。
そこだ!
ロロコの周りで揺れるチューブの一本をつかむ。
そこから一気に魔力を放出して、ガルシラの術式を書き換えていく。
――ビカビカビカ!
と部屋全体が激しく明滅する。
「おい、大丈夫なのか!?」
ガイアンさんが言ってくるけど答える余裕はない。
なにしろ俺、術式を頭で理解してるわけじゃないからね。
なんとなく感覚で把握してるだけ。
今はガルシラ側がぐわー!って抵抗してる。
それを俺がぬわー!って押してる状態。
詳しいことは俺もわからん。
ん、よし。
いけるぞ。
オッケーオッケー!
〈ふー……もう大丈夫です〉
俺はようやくガイアンさんに答える。
部屋の壁から生え出ていたチューブは引っ込んでいった。
ロロコが部屋の中央に立ち、周りを見回す。
〈どうだ、ロロコ?〉
「うん……変な感じ。だけど、いける気がする。やってみるよ――右に曲がれ」
ロロコがそう言った途端、身体に遠心力がかかる。
ガルシラがゆっくりと右に曲がっていくのだ。
完璧だな!
〈成功しました。ガルシラはロロコの焔狼族の魔力と結びつきました〉
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