触手に腹を貫かれ連れ去られたロロコを追ってきた俺。
広大な空間に巨大な肉塊があって、そこにエドが立っていた。
彼の手前には、ロロコがぐったりと横たわっている。
〈ロロコを離せ!〉
俺は声をあげ、ロロコに向かって進んでいく。
肉塊から伸びる触手がそれを阻もうとしてきた。
〈邪魔だ、どけ〉
さっきまで遭遇した魔物よりは多少強いようだ。
だが、今の俺の敵ではない。
俺が魔力を帯びた腕を一振りすれば、触手は簡単に消し飛んだ。
「素晴らしい! 魔王の片鱗を相手にそこまでとは。強くなりましたね」
エドがなんか言ってるが無視だ無視。
それよりロロコを助けなきゃ。
〈ロロコ、大丈夫か!?〉
「リビたん……」
〈無理するな。いますぐ助けてやる〉
とはいえロロコは大ピンチだ。
腹には大穴が空いていて。
今も血がダクダクと流れ出している。
外に連れ出している余裕はなさそうだ。
「ここは回復魔法でもかけるしかないのではないでしょうかね?」
うっせえなぁ!
こんなことした本人に言われたくねえんだよ!
エドをぶっ飛ばして黙らせたいが、そんな時間も惜しい。
エドの言う通りにするみたいで癪だけど。
ここは回復魔法しかないか。
…………回復魔法?
俺、そんなの使ったことないよ!
いや、待て。
落ち着け。
この大陸中の魔力を掌握したリビングアーマー。
その俺が、この大陸に存在する魔法を使えないなんてことはないはずだ。
そうだ……記憶の中にあるぞ。
天空塔ダンジョンと接続したとき。
俺に流れ込んできた膨大な術式の中に、回復魔法の術式があったはずだ。
……………………これだ。
よし!
俺はロロコに手をかざす。
そして思い浮かべた術式を空気中に構築し、そこに魔力を流していく。
ちなみに、大抵の魔法使いはこんなふうにして魔法を使うらしい。
頭の中にある術式を空気中に思い描くのだ。
クラクラのように呪文を唱えれば、より複雑な術式も描くことができる。
ま、俺は正式に学んだわけじゃないので自己流だ。
呪文も知らん。
けど、これで問題ないはずだ。
光が溢れ。
ロロコに降り注ぎ。
腹の傷が回復していく。
「リビたん……これは……?」
〈もう大丈夫だ。少し休んでろ〉
俺はそう声をかけてから立ち上がった。
そして、笑みを浮かべて俺たちを見ているエドに対峙した。
〈ちょっとこいつをぶっ飛ばしてく〉
読み終わったら、ポイントを付けましょう!