慌てて飛び込んできた見張りのオークが言うには、
「だ、だだだだダンジョンが空を飛んで攻めてきたぁ!」
意味がわからないので全員で外に出た。
こ、これは……。
ダンジョンが空を飛んで攻めてきたぁ!
すまん、オークのロブさん。
あなたはなにも間違っていなかった。
本当に意味がわからないと思うがそうとしか言いようがない。
俺たちのいる元帝都。
その上空を巨大な岩の塊が飛んでいた。
岩には無数の穴が空いており、そこから飛行系のモンスターが飛び出してくる。
おそらく岩の内部は縦横に洞窟が走っているのだろう。
で、岩の塊というのは下半分の話。
上半分は都市だった。
無数の石造建築が立ち並ぶ大都市っぽい。
それぞれの建築物は幾何学的な模様の光を表面に帯びている。
あれは術式だろう。
「まさか、あれがガルシラの防衛機能ですか……?」
アルメルがつぶやいた。
そうか。
皇帝陛下が言っていた廃都ダンジョン――旧帝都の防衛機能。
それは都市ごと浮遊させる危機回避機能だったってわけか。
「だが、それだけなら困るものでもないんじゃないか? 下のダンジョンは厄介そうだが……」
とラッカムさん。
しかしそれに首を振るのはドグラだ。
「いや……そうも言ってられんぞ。あれは……そうか、あれが神聖大要塞ガルシラか……っ!」
えっ、なにそのやばそうな名前。
姉の言葉にマグラが口を開く。
「聞いたことがありますわ。古の種族、焔狼族の始祖ガルシラがその最後の力を駆使して築いた対魔族決戦兵器。それは焔狼族の魔を滅する力を拡大し、全ての魔族を浄化するのだとか……」
焔狼族?
どっかで聞いたことがあるような……。
………………ロロコのことかー!
そうだ。
そういえばクーネアさん――魔王がロロコにビビってたな。
それは焔狼族の力を恐れてたってことか。
「そんなのがあるならなんで言わなかったんだよ」
「大陸のどこにも見かけんからただの噂だと思ってたんじゃ! 街一個まるまる兵器じゃとか普通思わんじゃろうがっ」
ラッカムさんの言葉に頬を膨らませるドグラ。
まあそれは仕方ないと思う。
それはともかく。
つまりだ。
あれをどうにかすれば、もしかしたら色々解決するかもしれないってこと?
俺はロロコと顔を見合わせる。
ロロコは迷いなく頷いて言った。
「行こう、リビタン」
そうこなくっちゃな。
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