どうも、リビングアーマーの俺です。
ヴェティアンの大商人アントンさんに頼まれ、荷物を運んでいる途中。
船でポローナニアに上陸しようとしたんだけど。
ポローナニアの岸はオークで埋め尽くされていた。
しかも突然積荷が爆発!
中の水が噴き出してしまう。
船は大破? 中破?
船底に穴は空いてないらしいけど、見た目的にはいつ沈んでもおかしくなさそう。
しかもオークたちが泳いで船に迫ってくる。
積荷から噴き出した水に、オークが好きな臭いを混ぜ込んであるらしい。
〈どういうことだ? たまたまそういう品をアントンさんは帝国に依頼されてたのか?〉
「たぶん、違うでしょうね」
だよねー。
だってさっき、案内役の男の人が海に飛び込んで逃げてったけどさ。
そのとき『悪いなー!』って叫んでたもんね。
もう確信犯だよね。
あ、確信犯ってこの使い方間違ってるんだっけ?
いやそんなことはどうでもいい。
今はそれよりオークだ。
「イイニオイガスル」
「メシカ? メスカ?」
「トニカクウバエ!」
うわわわ!
乗り込んできたぞ!
「おいあんた! 危ないぞ!」
船員が叫ぶ。
見れば、クラクラが剣も抜かずオークの方へフラフラ歩いていく。
そうだった。
エルフにはオークの催淫効果が発動してしまうんだった。
〈アルメル、クラクラを頼む!〉
「は、はい」
よし、これで大丈夫。
さてと。
俺は船の側面へ走っていき、乗り込んでこようとするオークを殴り飛ばす。
「グオ!」
悲鳴を上げて落ちていくオーク。
「ファイア!」
「アヂイ!」
ロロコの炎魔法が海面を走る。
あぶられたオークたちが慌てて引き返す。
シュンシュンシュン!
「グワ! ナンダ!」
ヒナワが音もなく飛び回り、オークたちに手裏剣を投げつける。
オークたちは腕を押さえながら落ちていく。
……ん?
あれ?
ドグラはどうした?
「ドグラさん、どうしました?」
アルメルの声に目を向けると、ドグラが苦しそうにうずくまっていた。
「すまぬ……この臭い……すごく苦手なのじゃ……」
どういうことだ?
オークは好きな臭い。
ドラゴンにとっては嫌いな臭いってことか?
「だめ、だ……人化が解けてしまう……我は一旦、去るぞ……」
そう言うと、ドグラは光を放ちながら宙へ飛ぶ。
次の瞬間、船の上空で彼女はドラゴンの姿に戻っていった。
「ぎゃー! 突然エンシェント・ドラゴンが出現したー!」
「もうダメだー! 俺たちここで死ぬんだー!」
パニックになる船員たち。
まあそりゃそうだ。
〈あの、安心してください。あのドラゴンは味方です〉
「嘘つけ! ドラゴンが人間の味方なわけあるか!」
一斉に叫ぶ船員たち。
気持ちはわかる。
けど、ドグラは具合が悪そうにフラフラ陸地へ飛んでいった。
ついでにしっぽで、岸にいるオークたちを薙ぎ払ってくれた。
しかしオークはなかなか怯んでくれない。
どんどんどんどん船に取り付いてきて、こっちの手が足りなくなってきた。
そして。
バキバキバキ!
下の方で不吉な音が聞こえてきた。
「おい! オークが下から船底を破壊してきてるぞ!」
うわ!
マジかよ!
「くそ! もうダメだ! 全員海に飛び込め!」
船員たちは即座に判断し、海に飛び込んでいく。
「ほら、あんたも鎧なんか脱いで早く逃げろ!」
〈いや、俺は……〉
脱いだら中身ないんだよ!
しかしここで正体をバラしたら、この人たちますますパニックになるだろう。
仕方ないな……。
〈俺は、みんなが逃げるまでオークを食い止めます。この鎧はすぐに脱げるんで大丈夫です〉
「そうか……? そういうことなら頼るけど、逃げ遅れるなよ?」
〈はい、ありがとうございます〉
俺は頷きながらオークに右ストレート。
船員は海に飛び込んでいく。
〈えーと、この中で泳げないやつっていたっけ?〉
ロロコ、アルメル、ヒナワは大丈夫っぽい。
「クラクラさんはわかりませんけど、この調子だと……」
そうだった……。
クラクラは「オーク、オーク……」と呟きながらはあはあしてる。
俺の話聞いてない。
だんだん症状が重くなってないか?
〈よし、じゃあクラクラは俺が水面を飛んで運ぶ。みんな、ついてきてくれ〉
みんな頷く。
よし、じゃあ行こう。
俺たちは海に飛び込む。
その直後、船は大量のオークに取り付かれ、あっけなく沈んでいった。
あーあ……。
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