どうも、リビングアーマーです。
本日は久しぶりに頭だけでお送りしております。
うおおおおお!
全身が苔モンスターに引っ張られてバラバラだ!
〈逃げろー! みんなここから脱出するんだ!〉
それでも俺は声をあげてみんなに呼びかける。
俺はバラバラになっても平気だが、みんなはそうではない。
苔どもが俺の魔力に惹かれて集まってる間に、なんとか脱出してもらいたい。
しかし……。
「リビたんっ」
ロロコ!?
声が聞こえたかと思うと、苔の隙間から手が伸びてきた。
そして俺(兜)をつかんだ。
〈おいロロコ。なにしてるんだ。早く離せ〉
苔どもは俺に向かって集まってきてるんだ。
そんな俺の近くにいたら、苔に押しつぶされちゃうじゃないか。
しかしロロコは首を振る。
「やだ」
それどころか俺を抱えて庇うように丸くなる。
ああもう、お前は……!
仕方ない。
俺は自分の周りに放出していた魔力を止める。
どっちにしろ、兜だけだと術式が不完全だ。
原初魔法ビームは使えないしな。
苔の氾濫がおさまった……かな?
しかしその動きは止まらない。
「うわわ」
〈うおおおおおっ!〉
俺とロロコは苔の流れに乗せられて、どんどん勝手に移動してしまう。
上へ登っているのか下へ落ちているのかもわからない。
前に腕だけの状態で、水の中で似たようなことになったな。
あのときは腕をスクリューみたいに回転させてなんとかしたんだっけ。
今はそれもできない。
兜じゃスクリューにならないし。
苔の中じゃ回転のしようもないしな。
――ももももももも!
苔はすごい勢いで俺たちを運んでいき、やがて……。
◆◇◆◇◆
「ぷはっ」
水から上がったときのようにロロコが呼吸した。
なんとか苔から脱出することができた。
しかしどうやって?
俺は兜だけの状態で浮き上がると、俺たちがやってきたほうに視線を向けた。
そこには壁があって、大きな扉があった。
両開きの扉はゆっくりと閉まっていくところだった。
苔モンスターはその向こう側に充満してたが、こっちに侵入してはこなかった。
〈べつのフロアに移動できたってことか〉
アルメルが言うには、このダンジョンは各フロアにそれぞれモンスターがいる。
そしてそのモンスターに適した魔力でフロアが満たされるようになっている。
さっきのフロアは苔モンスター向き。
ここはそうではないから、苔どもは入ってこなかった。
そういうことだろう。
ところでほかのみんなや俺のパーツはちゃんと脱出できただろうか。
俺は意識の同期を試みる。
リビングアーマーは、バラバラのパーツそれぞれに意識を持つことができるのだ。
最近バラバラになる機会が少なかったけど。
やっぱこれめっちゃ便利機能だよなー。
…………ん?
おかしいな。
意識が同期できない。
まさか……ほかのパーツはすでにこなごなに砕け散ってしまった?
「リビたん。こっち」
ん?
どうしたロロコ?
ふより、と浮いた状態の兜を回転させて後ろを見る。
まあ、背後に視界を持たせることもできるんだけどね。
でもこっちのほうがしっくりくる……ん……だよな…………。
そこには巨大な鳥のモンスターがいた。
――きゃおおおおおおお!
うぎゃあああああ!?
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