〈ぜんたーい、止まれ!〉
行進を続けていた6000体のリビングアーマーが一斉に停止する。
〈右向けー、右!〉
6000体のリビングアーマーが一斉に右を向く。
〈上下分離ー!〉
6000体のリビングアーマーが腰パーツから上を宙に浮かせる。
よしよし。
だいぶいい感じに動かせるようになってきたな。
ちなみに、実際には言葉を発する必要はない。
無言でも操作することができる。
〈…………〉
6000体のリビングアーマーがさらに兜を上に浮かせた。
ほらね!
さらに言うなら、操っているという感覚もあまりない。
自分の身体の一部みたいなもんだからな。
ただ、まだちょっとだけ違和感はある。
義手とかを初めて使うときってこんな感じなのかな?
ともかく、これを完璧に違和感なく動かせるようになる必要がある。
なにしろ、クーネアさんによれば……。
◆◇◆◇◆
「エドは自分がこもっている洞窟全体に魔力障壁を構築しています」
〈それで攻撃できない、交渉することもできないってわけか〉
「はい。もともと彼が組み立てる術式はかなり独特で、通常の魔法知識では解析することも難しいのです」
こことは違う世界から来たゆえのセンス。
それに魔王を発掘して得た知識ってところか。
まあ、同じ異世界から来た俺は魔法の知識は皆無だけどな!
「しかしわたくしは、長年彼の研究をサポートしてきましたので、解析は可能です」
おお!
「解析の結果、それを破壊する術はないことがわかりました――少なくとも、普通のやり方では」
〈それで、俺の出番ってわけか〉
「そうです。6000体――1000体はモンスターに破壊された場合の予備となりますので、正確には5000体のマジカルアーマーを洞窟の周囲の所定の位置に配置し、刻まれた術式を発動させることで、障壁を破壊できます」
クーネアさんは眼鏡を持ち上げながら告げる。
「エドは、洞窟でなにかの作業を行う間邪魔が入らないよう、複雑な障壁を構築したのでしょうが、さすがに6000体のマジカルアーマーを製作されることまでは考えに入れていないでしょう。障壁を破壊できれば、彼の企みがなんであれ、阻止できるはずです」
◆◇◆◇◆
……とのことだった。
というわけで俺は、6000体の鎧の操作訓練を行っているというわけだった。
なにしろ障壁破壊のためには、ちょっとのずれも許されないみたいだからな。
目の前にはクーネアさんが用意した洞窟周辺の地図。
そこに×印で、マジカルアーマーを配置する場所が記されている。
なんか戦記もののファンタジーみたいでちょっとワクワクするな。
……おっといけない。
訓練に集中集中……。
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