転生したら鎧だった

〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
三門鉄狼

214 リビングアーマー戦記

公開日時: 2022年7月29日(金) 16:12
文字数:1,061

〈ぜんたーい、止まれ!〉


 行進を続けていた6000体のリビングアーマーが一斉に停止する。


〈右向けー、右!〉


 6000体のリビングアーマーが一斉に右を向く。


〈上下分離ー!〉


 6000体のリビングアーマーが腰パーツから上を宙に浮かせる。


 よしよし。

 だいぶいい感じに動かせるようになってきたな。


 ちなみに、実際には言葉を発する必要はない。

 無言でも操作することができる。


〈…………〉


 6000体のリビングアーマーがさらに兜を上に浮かせた。


 ほらね!


 さらに言うなら、操っているという感覚もあまりない。

 自分の身体の一部みたいなもんだからな。

 ただ、まだちょっとだけ違和感はある。

 義手とかを初めて使うときってこんな感じなのかな?


 ともかく、これを完璧に違和感なく動かせるようになる必要がある。

 なにしろ、クーネアさんによれば……。


◆◇◆◇◆


「エドは自分がこもっている洞窟全体に魔力障壁を構築しています」


〈それで攻撃できない、交渉することもできないってわけか〉


「はい。もともと彼が組み立てる術式はかなり独特で、通常の魔法知識では解析することも難しいのです」


 こことは違う世界から来たゆえのセンス。

 それに魔王を発掘して得た知識ってところか。


 まあ、同じ異世界から来た俺は魔法の知識は皆無だけどな!


「しかしわたくしは、長年彼の研究をサポートしてきましたので、解析は可能です」


 おお!


「解析の結果、それを破壊する術はないことがわかりました――少なくとも、普通のやり方では」


〈それで、俺の出番ってわけか〉


「そうです。6000体――1000体はモンスターに破壊された場合の予備となりますので、正確には5000体のマジカルアーマーを洞窟の周囲の所定の位置に配置し、刻まれた術式を発動させることで、障壁を破壊できます」


 クーネアさんは眼鏡を持ち上げながら告げる。


「エドは、洞窟でなにかの作業を行う間邪魔が入らないよう、複雑な障壁を構築したのでしょうが、さすがに6000体のマジカルアーマーを製作されることまでは考えに入れていないでしょう。障壁を破壊できれば、彼の企みがなんであれ、阻止できるはずです」


◆◇◆◇◆


 ……とのことだった。


 というわけで俺は、6000体の鎧の操作訓練を行っているというわけだった。


 なにしろ障壁破壊のためには、ちょっとのずれも許されないみたいだからな。


 目の前にはクーネアさんが用意した洞窟周辺の地図。

 そこに×印で、マジカルアーマーを配置する場所が記されている。


 なんか戦記もののファンタジーみたいでちょっとワクワクするな。


 ……おっといけない。

 訓練に集中集中……。


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