あとから知ったことだけど、真崎さんはザルのようにお酒が強くて自宅の冷蔵庫には必ずビールの六缶パックがあったし、ほんの小さな蜘蛛も触れないほどに虫が大の苦手だった。
うそついたでしょってにらむと、彼は悪びれもせず綿あめみたいに柔らかな声で「うそじゃないよ、あれは方便だ」と言って、きっかり三回目のデートで静かに汗ばんだ頬を寄せた。
まだ明けきらない朝にシャワーを浴びたあとはお決まりのオレンジジュースで乾杯しながら、わたしは懐かしい夏空の下にしゃがみこんだ小さな女の子の話をする。
何も言わずに耳を傾けている彼の、その息遣いに癒やされながら。
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