「今日はお金の授業をします!!!!」
教壇に立った若い男、先生が大きな声で言う。そんな声を出さずとも、彼のよく通る声は全員にしっかりと聞こえている。気持ちが高まるとついデカい声を出しちゃうんだ、とは彼の弁だ。
「将来お金持ちになりたい人!!!!」
「はあああああああい!!!!!」
「うわあああああああああ!!?!?」
先生がびっくりして飛び上がる。そして、2人の大きな声につられて教室の皆も飛び上がる。
「びっくりした!デカい声を出すんじゃない!!!」
お前もだよ、という生徒たちの心の声が聞こえてくるがさておき。皆も声の主にびっくりしていた。何故なら、あの大きな声で返事をしたのは女性。魔法学校の現在首席、エンであったからだ。
魔法学校。
大日本帝国において本年度より設立された組織である。
”1人1属性”が普通とされた現代において、大日本帝国の行政改革ギルド所属 ザザ・ナムルクルスが、実は他属性の魔法も習得することができるという世界的な大発見をした。ザザは魔法のスペシャリストでもなければ飛び抜けた魔法センスを持っているわけでもなく、彼が他属性魔法の習得方法を発見したのは全くの偶然である。
彼の物語については別の場所で語られているのでスルーするが、とにかく彼は日々の時間外業務を減らし、業務の無駄をなくし、不必要な会議をこの世から抹消する行政改革ギルドのエースであった。そのため、他属性の魔法を大日本帝国民が使えるようになれば効率化が進むと判断し、他属性魔法を得る方法を公開しようと学校を作るよう働きかけたのである。
今年はその魔法学校の第1期。開校してから半年が経過した。
設立後初めての授業は大変好評であった。これまでは1人1属性しか魔法が使えないという現実だったが、それは物の見事に打ち砕かれ、魔法に関して才覚のない者であっても僅かに他属性の魔法を発現させるに至ったのだ。中でも特に目覚ましい能力の開眼を見せたのが、先に大声をあげて皆の寿命を1年縮めた女性、エンなのである。
世界には火・水・風・土・光・闇、そして上位の時と空間という属性魔法が存在する。まあ、よくありふれたやつだ。エンの得意は光魔法であり、コイツは主に夜トイレに行く時に重宝する。そんな彼女が他に発現、使いこなしたのが火、水、風魔法である。例えば、他の者はようやく他属性魔法の初歩の初歩、火属性ならライターレベルの火を出している頃、エンは炎の竜巻を作り出して水で消火する技をやってのけた。魔法学校設立1年目にしていきなり4属性の魔法をマスターするに至った彼女は天才と呼ばれ――。
「お金持ちになりたあああああああい!!!!!」
――現在、お金持ちになりたがっている。
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