あの夜から、ペガサスに乗れなくなった

女王と勇者と衛兵の身分差よりも恋が勝つ! 三角関係の異世界ファンタジー
full moon
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(10)

公開日時: 2021年7月20日(火) 00:32
文字数:501

ノキルを視界に捉えた時には、すでにアレスの間合いの内側に入っていた。


アレスは、速やかに反撃の態勢を構える。


しかし、この距離では間に合わない。


ノキルの突きが、もの凄い勢いで差し迫る。


その木刀の先端は、全くぶれない。


身命をかえりみない意志が先端まで通っていた。


それを見て、アレスは、攻撃を受けると確信した。


アレスは、左足を一歩下げ、左足の膝を曲げて、重心を乗せる。


ノキルの突きが、小手をかすめて、間合いの深部へ入り込む。


アレスは、上体を後方へ傾けて、すれすれで身をひねる。


しかし、ノキルの木刀の先端が、微かに、アレスの鎧に触れた。


その触れた感覚が、ノキルの木刀の先端から、しのぎを通って、ノキルの手に伝わる。


当たった!


ノキルは、死地を越えて生還したかのような不思議な高揚感が溢れる。


「おお!」


人だかりから歓声が聞こえる。


それも束の間、ノキルは、勢いを制御できずによろけて、どさっと倒れた。


砂埃が立つ。


ノキルは、体の右側を地面につけた状態で倒れたまま、動けない。


もう体が反応してくれなかった。


指先の感覚も無い。


木刀を握っているのかすら、わからない。


これで、今日もまた負けた。


ノキルは、昏倒する中、そう思った。

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