身体の節々が痛くて目覚めた、外は薄明るくなっていて夜明けが近い事を教えてくれる。
ドームの壁をドアの型に切り込みを入れ、片方にピンを差し込み開く様に細工するが難しい。
土の棒で閂を作り外からの攻撃に耐えられる様に魔力を込めておく。
昨日の残りの肉が固くなったパンを齧り、覗き穴から周囲を観察して安全を確かめる。
ラノベの知識が有っても俺の命の保障はしてくれないからな。
肉の固くなったパンを噛みながら、次から食料は全て空間収納にしまって置くことにしようと心に誓う。
冷えたお肉が固くて顎が怠いもん。
ラノベの知識では空間収納は時間停止機能があり、貯めておけば食料には困らないとなってたからね。
でも確認は必要だから今日の転移魔法の実験が終わったら、空間収納の能力検査だな。
ちうごくの偉い人が、敵を知り己を知れば百選・・・百戦危うからず。
なーんちゃって言ってたと覚えてるよ。
それと改善なくして進歩無し・・・だっけ。
イヤイヤ改善なくして品質工場の整理整頓が・・・
止めた、何か変な方向に向かっている気がする嫌な言葉だ。
それにしても少し魔法を使うとすぐに疲れて眠くなる。
気をつけないと魔力切れでパッタリ倒れたら、あの世行き確実だから注意しなきゃね。
怠くなったら即身仏に・・・???
駄目だ死にたくないから暫く休憩して頭を冷やそう。
陽が高くなったから、今日は草苅して柔かな寝床作りから始める。
碌に草も無い場所で、冒険者も薬草採取に来ない所なのにお宝発見。
風鈴草だ、高さ25センチ程で真っすぐ伸びた茎に4~5個の鐘に似た薄紫の花が付く。
而群生地です普通2~3本咲いていれば当たりと言われるのに、疎らな草の影に隠れる様に咲いている。
根本から切り取るが地下茎には触れてはならない、翌年も採取したければ綺麗に切り取れと言われている。
一本で銅貨5枚は堅い、フヒヒヒッヒ、可笑しな笑いが漏れて自分でも恥ずかしい。
取り合えずベッドは出来た、ドームの中に縦180センチ横100センチの土魔法で枠を作り苅った草がこんもりと積み上がっている。
今晩からは柔かな草の褥で天国の気分ですな。
ドームの扉を封印して街に向かう、途中適当に薬草を探しながら帰り夕暮れ前に街に着いた。
そのままギルドに行き薬草買い取りのおばちゃんに差し出す。
「おや風鈴草が3本も有るよ、カイト今日はついてたね。他と合わせて16,200ダーラだね」
「有り難うフユサさん、銅貨で貰えるかな」
「あいよ銅貨16枚と鉄貨2枚ね。頑張りなよ」
「有り難う。またね」
明日は別の場所に行こう、風鈴草の群生地がばれるからなぁ。
50本以上採取して空間収納に保存したから、当分は稼ぎの心配は無いが少しづつ出さないとね。
冒険者は自分の稼ぎの場所は他人には教えないからね、俺も自分の猟場を他人には教えないよ。
陽が落ちる前に市場に行き塩をコップ2杯分買って4,000ダーラ銅貨4枚、高いねー遠い海から荷馬車で運ばれて来るから仕方が無い。
固形スープの素を10個が3,000ダーラ、味噌を固めた様な代物でスープカップ一杯のお湯か水で溶いて飲む。
味は塩味で薄いスープの味がするけど具は無しだ。
パン5個を買って1,000ダーラ、様々な具材を挟んだパンを6個3,000ダーラ払って11,000ダーラ使った。
薬草袋に入れ背負子に乗せ家に向かう。
親父が居なきゃ食器や鍋やフライパンに布団と服を空間収納に納めておくつもりだ。
居たけど酔い潰れてるね、奥に行き薬草袋からパン1個取り出し後はそのまま空間収納にしまう。
明日の朝持ち出す物は寝具と服、服は着ている物以外全て収納しておく。
後は鍋やフライパンだが、親父は料理をしないから不用なので使える物は持ちだす。
食事を済ますと明日に備えてさっさと寝る。
夜中に親父がゴソゴソ寝床に入り鼾をかきはじめたのでそっと起き、鍋にフライパン包丁食器と静かに収納に入れ朝まで横になる。
市場の手伝いに行く時間に起き布団や毛布を収納に仕舞うと、寝ぼけている親父に暫く帰らないと告げて家を出る。
何時もの2ヶ所の手伝いを済ますと稼いだ1,000ダーラと昨日の残り5,200ダーラを使い、串焼き肉や蒸かし立ての芋に塩茹での豆を買い背負って街を出る。
食料は暫く持つし無理に街に帰る必要も無いので、昨日よりもっと遠くに行く事にした。
丈の低い草と疎らに木が生えている見通しの良い場所に来たので、此処をキャンプ地と定める(キリッ)なんちゃって。
初めての場所だし見晴らしが良いから獣が近付いてきたら直ぐ解る、いい場所だと呑気に考えていた俺が馬鹿でした。
相手にも俺が良く見えているのね、街の近くを離れると危険度がアップするんだった。
小高い場所に移動して自分一人が座れ程度のドームを造り籠城戦に備え、周囲の見張り穴を開け残りの魔力でドームを強化する。
気を失わない程度にして覗き穴から近づく獣を観察する。
ウルフ7頭の群れだ、俺の姿が消えたので地面の臭いを嗅いでドームの周りをウロウロしている。
怖ぇーよー、これが野獣の気配か背筋がゾクゾクして思わず膝が震える。
戦う手立てが無いので残りの魔力を注ぎ込んでドームを強化したら、後は運任せと居直りドームを強化してお休みなさい。
狭いし身体が痛いで目が覚めた。
生きてるって事はドームが耐えられたか、興味が無くて無視されたかだな。
ぼんやり考えていたが背中がゾクゾクする気配が濃厚に有る。
覗き穴から周囲を見回すとドームの傍らで寛ぐウルフちゃん達。
カイト絶対絶命じゃんと思ったが此処は安全地帯、ドーム内に居るので取り合えず命の危険は無い。
狭くて身体が痛いのでドームを押し広げ、地面を掘り返されても大丈夫な様にゆっくりとドームを長くして横に為れる様にする。
地面も固め布団と毛布を敷くと残りの魔力全てを使い、壁と床を固めて2度目のパタンキュータイムに突入した。
2度目の目覚めは真っ暗です、指先が見える程度のライトを点けて起きあがる。
気配は変わらずドームの周囲にウルフが居る事が解るが、暗闇で覗き穴からは何も見えない。
いきなり死ぬ恐れが無いなら取り合えず腹ごしらえだ、収納から薬草袋に入った具を挟んだパンを取りだしモグモグタイム。
どうするか考えるも魔法を使うと簡単に伸びてしまうので、これから先命が幾つ有っても足りない。
命のスペアの持ち合わせは無い。
又転生して何処かで生まれる保障も無いし、痛い思いをして獣に食い殺されるなんて真っ平御免だ!
考えて考えてラノベで土魔法使いが獣と戦うのに、落とし穴に落として戦うのを思い出した。
どうするのか、先ず掌を地面に着けずに土魔法が使えるか試してみる。
ドームの縁により反対側の地面を見つめ、ポンと穴が空く事を想像して魔力を流す。
又意識が飛ぶのを感じながら???
目覚めて穴を見て解った、ウルフの足を落とし穴に落とす事を考えて穴を開けたから穴は空いた。
直径30センチ深さ・・・俺の魔力全部使ってるから深い、阿保だね直径を考えたら深さも考えろよ。
深い穴に蓋をして隣に直径30センチ深さ1メートルの穴をイメージし、ポンと開けゴマ!できるじゃん。
良しよしポンと穴を開けて足が落ちたらギュッと閉じる、ポンとしてギュッだな。
3度も気を失ったので外はすっかり明るくなっていた。
ん・・・気配が無い外を覗くと周囲にウルフの姿は見当たらない。
ポンとしてギュッはどうなるんだよ!
然しまぁポンとしてギュッなら魔力も対して使わないと思うから良しとして、攻撃魔法も必要だよね。
土魔法使いと言えばストーンバレットだが、石ころでは獣は倒せ無いので格好良くストーンジャベリンにしたいが一発撃って魔力切れてのも不味いよね。
ストーンランスも魔力を食いそうなのでもっと下げて矢くらいのストーンアローだな、長さ40センチで太さ3センチでどうだ!
といって練習のために外に出るのは怖いから決めるだけね、外に出たら先ずストーンアローの練習をする事が宿題だ。
少し穴を広げて周辺を観察して安全を確かめてからドームにドアを作りそっと出てみる。
安全良し! 10メートル15メートル20メートルと少しづつずらして的を立てるとさっさとドームに引き返して中から閂を掛ける。
魔力は半分も使って無い、少しはストーンアローの練習が出来るな。
早速ストーンアローを造ってみる、長さ40センチ太さ3センチで両端を尖らせる。
さっと造ってさっと撃たなければならない。
先ず矢作りの練習をひたすらしては、魔力の回復を待って休むの繰り返しで一日が終わった。
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