Operation Chaos Girls

あくまで私は三十路前、初めはラブコメ、後々SF、最後は?と思ったら今度は異世界?
まっこうくじら
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Operation Chaos Girls2 With you forever 第二話

公開日時: 2021年1月25日(月) 00:13
更新日時: 2021年3月22日(月) 00:26
文字数:6,666

Operation Chaos Girls2 With you forever 第二話





 翌日はテントを持っていく事にした。テントと言っても雨が降った時にしのげればいいので、二人用のワンタッチで組み立てられる物をそれぞれ持っていく。昨日の経験から水の消費量は判ったので、四日間活動できる分だけ持っていく事にした。朝から門を出て真っ直ぐ進むと初日に最初にポールを立てたところに来た。私のワンタッチテントを組み立てる。ものの一分で組み上がったので、一休みした。通気性がある作りなため結構涼しい。そういえば今の季節はなんなのだろうか?

「昨日は何も無かったじゃない」

「そうだな」

「私達横方向に移動したじゃない」

「空は飛べないよな」

「そう、飛べないの、だから」

 アリスは嬉しそうに微笑んだ。笑うと実に可愛い。少しいたずらっ子のような癖のある笑い方をするのだが、これがいい。まだ数日の付き合いだ。これからもっと色々な表情を見せてくれるのだろう。

「聞いてる?」

「聞いてる。で?」

「だから、地面を掘ってみない?地表にはもう何も無くても、地下には歴史が埋まっているかも」

「それはそうだが、まずはもう少し進んでみないか?」

「今すぐって訳じゃないわ。大体地面を掘るなら、それなりの道具や重機がいるし」

「この世界に残っているといいけどね」

 その日は休み休み進み四本のポールを立てたところで日が落ちてきた。真っ平らな大地の地平線に日が沈むと、空一面に星の海が広がった。二人はテントの外にシートを敷いて仰向けに並んで寝転がり空を見上げた。

「星が綺麗ね」

「そうだな」

「月が見えないのが残念ね」

「ああ。君は恒星や惑星の位置のデータは入っているかい?恒星の固有運動速度とかは」

「ないわ。星座占いに使える程度の知識よ。大体ナビゲーションシステムは内蔵してないから方角がわからないし、機器もないから、知っていても役に立たないわ」

「そうか。あれは北の方にある星座のように見えるのだが、形が崩れているように見える」

「そうね。数百年ぐらいでは形は崩れないから、数千年経ったのかもね」

「そうだな。せめて時計機能は欲しかったな」

 健一は左手を目の前に上げる。

「こうしたら、腕時計が皮膚に出てくるかなって」

「ばかね」

 アリスは可愛い声で笑った。

「でも、皮肉よね。私達は体内に基準クロックを持っているのに時間も判らないなんて」

「判ったら、人間じゃない」

「私達はアンドロイドでしょ」

「人間の思いで作られた訳だから、少なくとも人間の一部じゃないかい」

「そうね」

「人間って何なんだろうな」

「はっきりと判っていたら、私達は生まれてなかったと思うわ」

「そうだな」

「地球のどこかにもしかしたら人工冬眠で生き残っている有機体の人間もいるかも。その時は私達と有機体の人間のどちらを優先して生かせたらいいのかしら」

「それこそ、神の御心のままに。もしくは自由競争」

「争いにならないといいわね。そろそろ寝ましょうか」

「ああ」

 二人は立ち上がるとシートを畳みテントの中に戻った。

 翌日も出来るだけ真っ直ぐ進んでいった。お昼頃になった頃、三番目のポールを立てたところで、少し地面を掘ってみる事にした。折りたたみ式のスコップを持ってきているのでそれを使う。二人で黙々と円錐形の穴を掘っていく。結局二人の身長程の穴を掘ったが、何も出てこない。それどころか、どこまで掘っても、水分が余りない乾いた土しかない。成分も殆ど変化がない。

「何か無駄骨ね」

「まあ逆にここまで均一な大地というのも変だな」

「まあね」

 穴のそばにテントを張り、二人で転がった。アンドロイド体に疲れはないが、心は疲れた。

「調査は始まったばかりだし、のんびり行こう」

「そうね。戻ったらEVでも探さない?」

「そうだな。移動は楽したい」





 街に戻ると、手製の地図を作り行っていない場所を探し始めた。RPGでMAPを作る要領だ。前回街を調べた時はらせん状に荒っぽく街を調べたため探し残しも割とあった。街の出口の反対側辺りに空き地に敷き詰められた太陽光発電のパネルとコントロール小屋があった。そのカーポートには小型のEVが二台あった。これらは高分子シートで覆われていたため、新品同様だった。もっともシートを剥がして綺麗に掃除するのに、二日ほどかかってしまったが。EVのバッテリーはほぼ空だったので二日ほど充電にかかる。その間は街を再度調査する事にした。街を詳しく探すとアシスト付きの折りたたみ自転車も見つかったので、これも持っていく事にした。

 EV自体は全輪駆動で収納スペースも大きい車だったので、水を大量にのせ、念のため側面には折りたたみ自転車をくくりつけた。屋根にしなかったのは、屋根にはオプションの太陽電池パネルが貼ってあるので、少しでも充電したかったからだ。そこで再度街を出発した。フル充電で四百キロメートルほど走れるので、百五十キロメートほど走る事にした。GPSが付いていれば助かったのだが地図となる物は一切積んでいなかった。

「なあ、この車GPS無いよな」

「そうね」

 運転しながら、呟いた。

「地図もない」

「その手の類い街に一つも無かったわ」

「不自然じゃ無いか?生き残るには地図は必要だろ」

「そうね。でも将来の地殻変動なんか判らないし、用意できなかったんじゃ無い?」

「まあな」

 でも何か不自然だ。そんな事を考えつつ黙って運転していると、アリスは寝てしまった。可愛い寝息を立てている。助手席に美女が寝ているというのもなかなか良い光景だ。私は運転を続けた。

「着いたぞ、起きろ~」

「あ、ごめんなさい」

 アリスは口を手で拭う。口を軽く開いて寝ていたので、とっさに涎が出ていないか確認したのだろう。変なところまで人間に忠実に似せてある。

「もう着いたの」

「今、街を出て百四十五キロメートルだ。あと五キロ走らせたら止める」

「なんか、やはり代わり映えしないわね」

「ああ」

 アリスが言うとおり茶色の荒野が視界を覆っていた。生き物は全くいない。

「さてと、どうするか」

「一応掘ってみましょう」

「だな」

 あまり気は進まないが、大地を掘ることにした。すり鉢状に掘っていく。いつまで掘っても何も出てこない。乾いた赤土の山が出来るだけだ。五メートルほど掘ったところで一休みすることにした。ワンタッチテントをEVの横に立てて二人とも横になった。

「なんでここまで均一なのかな」

「二つ考えられるわね」

「どんな?」

「一つは、凄い時間が過ぎたせいで均一化してしまった」

「でも何億年経ってもそんなに均一化するもんかな」

「そうよね。もう一つは、元から均一に作られた。ここは地球じゃなくってどこかの実験場なのかも」

「実験場にしては大規模だな。まあ、もっとも俺たちが見て回った範囲は面積的にはそれほどでもないが」

「そうね」

 アリスはそう言うと、服を脱ぎ始めた。

「こんな時はセックスよ。思い切りやって、思考をリセットしましょ」

「それもいいね」

「それにしてもこれ性欲なのかしら?」

「君のオリジナルが性欲の塊みたいな人だったのは確かだね」

「その言い方はちょっと、私魅力有るでしょ」

「それは否定できないね」

 私も服を脱ぎ始めた。

 一戦して一休みした後、その日はとにかく穴を深くまで掘った。十二メートルほど掘った時少し変化が見えた。いままで乾燥していた土しか出なかったが、少し土が湿ってきた。ある程度掘ると水分があるらしい。ただ生き物は微生物を含めていなかった。その後追加で三メートル掘ってその日の作業は中止になった。日が落ちて来たからだ。その日は町に戻らずそこに泊まる事にした。大きめなテントを組み立て入り口を開けたまま潜り込む。星を二人で見ているうちに、眠り込んだ。





 アンドロイド体でも痛みは感じる。首を切り落とされればなおさらだ。私とアリスはワンタッチテントで寝ていた所を襲われた。それなりに強度がある身体のはずだが、小さな斧のような物で切り落とされたようだ。痛みを感じると言うのも間違いかも知れない。無理矢理切断された首の配線から雑多なデーターが出入りしそれを痛みと感じているみたいだ。私の首が持ち上げられた。目の前に持ち上げた男の顔が近づいてくる。辺りは暗いが赤外線視野は生きているので、男の顔は見えた。

「こんにちは」

 とりあえず挨拶をしてみた。後五分ぐらいは動きそうだ。

「こんにちは」

 男も挨拶をした。

「もしかして、君は僕かい?」

「ご名答」

 男の顔は私とそっくりだった。

「ちなみに彼女も同じだ」

 男は私の首を横に向けた。そちらでは小柄な女性が、やはり同じ顔の女性の首を持っていた。その女もアリスと同じ顔をしていた。

「これからどうなるのかな」

「君の持っている情報をいただく」

「それで?」

「そうすれば生き残る確率が高くなる」

「生き残る?なんだいそれ」

「君はまだ遭遇したことがないんだな」

「何と?」

「自分とだ。蠱毒って知ってるかい?蛇やネズミをいっぱい壺に閉じ込めて共食いさせて生き残った個体を呪術に使う。そんなもんだ。俺たちはその蛇やネズミだって事だ」

「なるほど」

「生き残った方が死んだ方の情報を奪えるからより有利になる」

「そうかい。じゃ今まで何人自分を殺したんだい」

「君で二十一人目だ。彼女は十七人目で返り討ちにあって、その個体と入れ替わった。まあ、後で君の情報も同化するから、何人目と言うのも意味は無いがね」

 男は肩をすくめた。

「なるほど。で、目的は最強を目指すってところかい」

「君は何も知らないね。海を越えて転送ステーションに行くんだ。ここは地球じゃないらしい。そこから地球に戻れるらしい」

「らしい?」

「今のところ一番確からしい情報だ」

「そうか。じゃまあ頑張れ」

「ああ、そうする」

 そして男が何かした瞬間、私の意識が途絶えた。

 私は私の情報を取り入れ同化した。それほど重要な情報は無かった。アリスにも聞いてみたが同じように新たな情報は無かったらしい。私たちは私たちの残骸を彼らが掘った穴の中に放りこむと土をかぶせた。彼らのEVに乗って移動することにした。私たちに気がつかれないように地平線の向こうから歩いて来たので少し楽をしたい。

「なんか無駄骨だったわね」

「まあ、そういうこともあるさ」

 EVを走らせて地平線の向こうまで行くと私たちのEVがあった。アリスにこのEVは任せて、本拠地に戻ることにした。

「競争よ」

「OK」





「そろそろ海に出てみない?」

「海か」

 本拠地の街に戻ると、二人でシャワーを浴びた。この町は井戸がある。相当深く掘ってあるらしく、この乾いた大地にしては珍しい。ここは他の私たちが本拠地にしていたが夜襲で奪い取った。私たちは私たちに出会うとどうしても戦ってしまう。そのようにプログラムされているのだろう。それに暇があるとセックスをしてしまうのもプログラムだろう。とりあえず一戦交えた後塒にしているホテルのベッドで隣り合って横になった。

「実際転送ステーションはあるのかね」

「今まで同化で得た知識をおさらいしてみましょ」

 アリスは人差し指を立てて話し始めた。いろいろな私たちを同化していくうち私たちにも個性が出てきた。アリスが話す前に指を立てるようになったのはいつのことだろうか?

「ここから千キロメートルほどの位置に海岸線があること。海はアメーバ状の何かで満たされていて、有機物は全て吸収されること。海には細胞の塔みたいな物が有りその頂上に転送ステーションが有るらしいこと」

「ここが地球で無いことは確かか?」

「地球にしては地殻地形が単純過ぎるわ」

「俺たちの活動範囲はたかだか五百キロ程度だ。それで判断していいのか?」

「星座が違うわ」

「時間が経ったからでは?」

「星の固有運動データを持っていた私がいたでしょ。ここは地球ではないのは間違いないわ。パルサーのデーターも有るけど、観測手段が無いから、この惑星の位置の同定はお手上げだし」

「前から思っていたがここは現実か?」

「どういうこと」

「シミュレーションって事はないか?」

「計算コストがかかりすぎるって結論に成ったでしょ」

「まあな。現実にアンドロイド体を作った方が安上がりで情報量も多いからな」

 私は仰向けに成った。天井にしみがあるのが見える。

「ま、ともかく転送ステーションを目指しますか」

「うん、それがいい。じゃもう一回」





 翌日、二人で遠征の計画を立てた。現在手持ちのEVは五百キロほどの航続距離がある。ただそれでは足りないかもしれない。その為アリスの動力炉を電力源として使うことにした。同化したアリスのうちの一人がその方法を知っていた。凄く簡単で両乳房に電線を突き刺せば発電機に成るらしい。元々EV等の電源に成るような機能があるそうだ。ただ今までは危険性もあり試してはいなかった。今回の遠征ではEVの航続距離が足りなくなる為、試して見ることにした。

「それにしてもこんな簡単な方法で上手く行くのかしら?」

「やってみるしかないだろう。もし君が動作停止したら、他の君と行くよ」

「酷い人ね。まあいいわ。ざくっと行って」

「了解」

 私はEVの充電用ケーブルのプラグの反対側のコードの先にフルタングのナイフを取り付けた。充電用の二本は大きいナイフ、信号線用には小さいナイフだ。アリスは裸にして地面に寝かせた。見事に胸は盛り上がっている。

「それにしても私だけこんな機能があるなんて不公平よね」

「そう言いなさんな」

「ま、ともかく、女は度胸。いいわよ」

 私はまず充電用のナイフをアリスの両乳房に突き刺した。その時点では特に変化は無い。次に信号線に繋がったナイフを、肩甲骨の辺りに刺した。

「あ、今神経が信号線と連結を開始した。EVとネゴシエーションしている。充電が始まるわ。充電中は私の機能は止まるから。終わったらEVからプラグを抜けば私は再起動するわ。じゃまた」

 次の瞬間アリスの表情が固まり動きが止まった。同時にEVの充電が始まった。

「後は一時間待ちますか」





「痛くなかったかい」

「特に無いわ。この痛みは感覚に伝わらないように成っているみたい」

 一時間後EVからプラグを抜くとアリスは目覚めた。アリスの指示に従い信号線のナイフ、充電用のナイフの順に引き抜いた。ナイフの跡は直ぐに消えた。

「我ながら良くできてるわね」

「ともかく君のおかげで海まで行けそうだね」

「そうね。感謝しなさい」

「感謝してます」

 アリスはウインクをした後、私に裸体を見せつけるように体を捩りながら立ち上がった。私は肩をすくめると、アリスの服を手に取り渡した。

「こんな美人がわざわざこんな風に誘っているんだから、襲いなさいよ」

「はいはい、それは夜にでも。計画を立てましょうか」

「もう、真面目というか、何というか」

 アリスはため息をつきつつ服を着始めた。





「で、どうする?」

 二人はホテルのラウンジにいた。このホテルは電気が来ている。屋上の太陽電池パネルと蓄電池の容量が結構大きく、エレベーターは無理でもラウンジや二人の泊まっている部屋の明かりぐらいはまかなえる。付近の民家の庭に井戸もあり水も豊富だ。そのため拠点に使っている。

「電源は確保出来ただろ」

「まあね。それにしても一日一リットル水が要るのって、私たち熱効率悪過ぎね。一リットルに含まれる重水素があれば地球一周出来てもおかしくないわ」

「しかたないさ。機械は何でも小型化すれば効率は落ちるよ」

「落ちすぎよ。ま、いいわ」

 アリスは自分の乳房を掴んだ。

「この美貌とプロポーションで制作してくれたんだから」

「はいはい」

 呆れつつもアリスの手の中で歪んだ銀色の乳房をつい凝視してしまう。

「お、やっぱり興味あるのね。揉んでみる?」

「で、計画だが」

「ほんと真面目ね。まあいいわ。水は二百リットル車に積むとして、一人百リットル、今回は偵察だから行きと帰りで五十日間進めるわ」

「EVの充電分は?」

「充電しても水の使用量は変わらないみたい。単純に充電だけに使うと効率が上がるみたい」

「そうか。五十日間一日五百キロとして二万五千キロ、地球なら半周できるな」

「そ。望遠鏡で星を観察すればこの惑星の半径が判るわ」

「地球じゃないといいな」

「なんで?」

「人類が滅びたと思いたくないのさ」

「でも、私たちが生き残れば人類はいる。違うかしら?」

「まあな」

「私は材料が確保できればアンドロイドの子供が産めるし、その子は成長できる設計よ。人類とどこが違うの?」

「その話はよそう」

「男って子供の話になるとすぐ逃げる。まあ、これも人類の文化の一つね」

 アリスはウィンクをした。





つづく

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