7年ぶりに帰ってきた雪の降る街。
主人公の相沢祐一が寒さに震えてベンチに座って待っていると、いとこの少女、水瀬名雪がコーヒー缶を持って出迎えてくる。
寒い中、二時間も待たせてごめんね、これはほんのお詫びだよと。
祐一は体に積もった雪を払い、二時間もの遅刻をしてコーヒー一本は割に合わないのではと悪態をつき、コーヒーを飲む。
寒さに冷えた体に温かい気持ちが伝わってくる。
引っ越しで帰ってきた祐一はこの街で5人の少女と出会う。
迫りくる切ない想いを刻みながら……。
──今では有名となったゲームブランドKeyのよるデビュー作。
今までにない感動のシナリオで泣きゲーと高く評価された作品でもある。
私がこのゲームを知ったのはパソコンゲーム(PCゲーム)から家庭機種初となるドリームキャストに移植が決定してからで、このKanon以降から徐々にギャルゲーにハマっていった。
当時のドリキャスはプレステ2の売上に敗北した状況でやむなくPCゲームから移植するだけで安価で手軽に済むギャルゲーをバンバンと販売していった。
この点はセガサターンの後期による敗退の
二文字と同じ結果である。
──ゲーム内容は小説を読む感覚だが、PC版と違う部分は主人公以外のキャラがフルボイスで喋ること。
声優陣も豪華で大人気声優がボイスを担当し、ドリキャス版では主人公の名前が変更できた。
名前を変更しても名前の部分以外は喋ってくれる。
以降、他機種にも移植されたが、名前を変えられる家庭機種はドリキャス版のみであり、今ではレアなゲーム版となった。
ただし後に発売されたプレステ2版では主人公もフルボイスである。
──映像も綺麗でさらに美麗となるパソコンで画面を映すこともでき、ドリキャスの底力を感じた。
──オープニング曲『Last regrets』とエンディング曲の『風の辿り着く場所』も、今までのスローテンポでメロウなサウンドではなく、4つ打ちのダンスミュージックに。
当時はテロップでさえも謎だった女性ボーカル、彩奈と、何も記されてない音楽制作集団I'veによる真骨頂を生み出した作品でもあり、映画のように流れる映像に組み合わせることにより、マニアックだった美少女ゲームの素晴らしさを感じ取れた。
──このゲームは恋愛要素よりもファンタジー寄りな展開になることが多い。
特に人それぞれの生き方と、生死が付きまとい、物語の進め方では大切な人を失ってしまうこともある。
それが泣きゲーと呼ばれる由縁だろう。
5人のキャラには容姿以外に独特の口癖もあり、困った時に出る『うぐぅ』などの台詞が生まれたのもこのゲームからである。
あまりにも人気作となったので後に実写化の噂も流れたが、今どきの若い女の子がこんな口癖をしたら人間的にどうかと否定され、アニメのみでの公開となった。
アニメは京都アニメーションが作画を担当している。
──序盤はただ単に笑って、後半は各キャラのシナリオとなり、ひたすらに突き進むダークでシリアスな展開。
どのキャラから攻略しても楽にプレイ出来て、一度読んだ文章はスキップも可能。
いつでもセーブやロードもできて、読み込み時間も殆どなく早い。
後から出たプレステ2版ではボイスの度にいちいちディスクを読み込み、そのせいか、反応速度が遅いので違和感が残ることだろう。
またキャラごとに違うシナリオライターが担当してるせいか、物語や文章構成に不自然さがあり、キャラもやたらと目が大きく、高校生とは思えない幼稚で癖のあるデザイン。
その点をどう乗り越えてプレイするのかが、Keyだけにより、物語の鍵でもある。
──財布を忘れ、たい焼きを盗んだと勘違いされて、怒った店主に追いかけられ、祐一に助けを求める謎めいた少女、月宮あゆの存在。
何だそれは……とツッコミながらもあゆと一緒に雪の歩道でスッ転びたくなる。
そんなシュールな物語でもある。
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