「とにかくめっちゃふわふわらしいよ!!!」
「マジか!!」
何やら雲パンなるものがバズっているらしい。
フワフワでまるで雲を食べているような気分になれるのだとか。
美味しいもの大好きな娘は、ずいぶん興味がある様子。
「つくってみたい。」
料理全般が好きな息子は、食べるというよりも作る方に興味があるようだ。
「よし、作るか!!」
思い立ったら吉日ってね、我が家はやりたいと思ったら躊躇せずに手を出す一家である。失敗しがちなのはだね、成功した時の喜びをより味わうためのスパイスでね…。うん、やらかしがちなのもいい方向に考えるタイプなんで。
かくして準備されたのはたまご四つとコーンスターチ、砂糖。むむ、材料だけ見ると、これはパンというよりも…ケーキなんじゃあるまいか。まあいいや。
フワフワ系のお菓子は、ちょっと注意が必要なんだよね。
なんか分厚いふわふわパンケーキが流行った時に食べに行ったんだけど、大変な目にあったことがあるんだよ。中が生でさ、小麦粉も生でさ。でも、トロトロなのが正解らしくてですね。生卵で蕁麻疹のできる私は食べることができなかったんだよね。よく焼けてそうな表面を食べたんだけど、粉っぽいし完全に自分的にアウトだったという。
あとは半熟チーズケーキ、半熟カステラ。こいつらも中が生でね?でもそれが正解らしい。食べても大丈夫なのかもしれないけど、蕁麻疹の恐怖に打ち勝つことができず…端っこの方をぱくりと食べて、撃沈したのですよ。
メレンゲかあ。これは良く焼くみたいだから大丈夫かな?ダメだったらなんでもパクパク食べる娘にささげよう。彼女は非常に屈強な胃袋を持っているのでね。
「じゃ―まずメレンゲ作るよ、卵割ってね。」
「はい。」
卵を割って、黄身をよけておく。これはプリンに使おう。同時進行でプリンも作るのだ!!こっちは卵六個に生クリーム、牛乳、砂糖…。黄身多めだから濃厚になるはず、多分。しかしたまご使い過ぎだな、まあこういう日があってもいいか、うん。幸い卵は旦那が買い込んで古くなってるやつが大量にあるのだよ。奴は新しく買ってきたやつから消費していくという癖があってだね。
ぶぃいーん・・・!!!
このハンドミキサーもかれこれ三十年ものか。よくもまあ動いてるもんだ。すっかり私の手になじんだハンドミキサーは、今は息子の手になじんでいるのだ。右利きの私になじんだハンドミキサーは、左利きの息子にもなじんでくれた模様。
「うわ!!いつ見てもなんか怖い!!」
なお、右利きの娘の手にはなじんでいないようだ。
「あわだったよ。」
フワフワの生地を天版に丸く乗せて…200度のオーブンで25分。焼いてる間に、プリンを準備してと。材料を混ぜ合わせてフライパンで湯煎して…。シリコンケーキ型で作ったからちょっと長めに湯煎しないとね。
ピーピ―ピ―!
おお、雲パンが焼けたみたい。オーブンを開けると…うは!!
「なんかめっちゃでかくない?!」
「できてる!」
出来立ての雲パンをお皿に乗せて…テーブルへ。娘と息子のまなざしがすごい。
「ねえ、食べてもいい?!」
「いいけど…まだ熱いんじゃないの。」
ちょうどプリンもできたから、粗熱を取っておかなければ。そう思ってキッチンでいろいろとやってたらですね。
「わー!!めっちゃふわふわ!!あち、あち!!!」
「ふわふわ!!!あち、あち!!!」
大喜びの声が聞こえてくる!!これは急いで食べに行かねばなるまいと、フライパンやら片付けて手をふきふきテーブルに向かう…げえ!!!
「ちょっと!!なんで全部食べるのさ!!!」
「ごめん!なんか手が止まらなかった!!!」
「おいしすぎた。」
空っぽの皿がー!!一口くらい食べたかったのに!!!かくしてせっかく作った雲パンは…空に浮かぶ雲のようにですね、儚く消え去ってですね!!!
「こんどはひとりでつくってみる。」
「はいはい、その時は半分下さいね!!!」
「あたしも食べたい!」
次に作った時も食べられる気がしないんですけど。…まあいいや、まだプリンがあるし。夕食後に冷えたプリンを食べよう、うん。粗熱の取れたプリンを冷蔵庫に入れた私は、気を取り直した。いつまでもね、食べられなかった悔しさを噛みしめる必要はないのですよ。おおらかな心で、次を見据えてね、ええ。
雲パンを食べられなかった悲しみは、プリンで相殺したらよろしいのです。
私の作るプリンはそりゃあ美味くてね、ふふ、今日の夕食はプリンがあるから少し少なめに食べよう。目いっぱいプリンを楽しむんだ。そう決め込んで、私は夕食の買い物に出かけた。
…卵十個も使っちゃったし、牛乳もなくなっちゃったし。ああそうだ、生クリームやコーンスターチも買っとかないとね。今度は生クリームトッピングやカスタードクリームトッピングもいいかも。いろいろ考え始めたら、買うものが増えてしまってですね。…ちょっとだけ、買い物に時間がかかっちゃったんだよね。
「ああ、ヤバイ、もう六時だよ…。急いで帰らないと晩ご飯遅れちゃう。」
急いで帰宅した私であったが。
仕事を終えて帰宅した旦那が、冷たい物でも飲もうと冷蔵庫をあさってプリンを発見し、息子と娘ともども食べつくしてしまっているという悲劇を、まだ知らないのであった。
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