ほのぼの家族…ってどの家族のこと言ってんだ!!!

お母さんはね、お母さんはね、お母さんはねえええええええ?!(怒
たかさば
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納豆巻き

公開日時: 2021年3月8日(月) 18:00
文字数:1,426

納豆巻きが食べたい。

納豆巻きを、心行くまで食べたいのである!


納豆巻きは、かなり手ごわい。

まず、納豆を酢飯に閉じ込めるのに一苦労なのだ。


納豆の恐ろしくも誇り高き粘り気。


あいつは糸を引いて、小皿の上から酢飯の上に移動することを全力で拒む。


なぜだ。


なぜそこまで糸を引く!!


おとなしくつるりと酢飯の上に移動はできないのか!!


なぜだ。


なぜそこまで糸を引く!!


手助けをする箸にもこびりついてくる。


なんという執着を見せるのか!


納豆よ!!お前は酢飯との相性が一番良いのだ!


小皿など…箸など…!!!

ただの、ただの道具なのだぞぉおおおお!!!


一緒に食われてくれぬ存在に執着するとは何事かアッ!!!


ただ、無心に、海苔の上に広がる酢飯の上に、納豆を落とす。


…恐ろしい話だ、納豆は一番の相方である酢飯に乗ることを拒み、箸と小皿にしがみついている。


何という事だ。

報われぬ、愛がそこにあるとでもいうのか。


仕方がない。

聞き分けのない納豆は、酢飯に、ふさわしくない。


箸と小皿にしがみつく納豆を、私は見捨てた。


巻きすの上に、一体化を待ち焦がれる、酢飯と納豆と、海苔。

ああいいとも。

ああいいともさ!!


私が、私が、私が巻いてやろう!!!


ぎゅ、ぎゅ。


…そっと、巻きすを、剥がして、みる。


お、おおおおおおおおおおお!!!!!


なんという美しき三位一体の芸術!!!

輝かんばかりの、海苔の艶やかさはどうだ!!

私の中には至高がぎっちり詰まっているのよと胸を張る、海苔!!!


海苔、ノリ、のりぃいイイイイイいい!!!!


海苔は、偉大である!!


海苔の大活躍によって、酢飯と納豆の比類なき相性の良さが100%を超えて実現化している!!!


私の興奮は止まることを知らず!!

納豆と酢飯を海苔でまとめて!まとめて!巻いて!巻いて!!!


「ふう…やったぜ…。」


10本の納豆細巻きを、完成させた。

あとは。

これを。


口に運び。

咀嚼し。

香りを楽しみ。

歯触りを楽しみ。

のどごしを楽しみ。


胃袋に落ちる瞬間を思う。


うひひ!!


これはウ―――マ―――イ―――ぞ―――!!!


テーブルに納豆巻きを置いて、しょうゆを取りに行く。


ここで気を抜いてはいかん!!!

まただ!!!

またあいつらが!!!!


「ねーねーなに作ったの―?」


キタ――(゜∀゜)――!!


食われる前に食う!!!


私は納豆巻きをカットするのをあきらめて、そのままかぶりついた!!


「「「納豆巻きだ!!」」」


黙って座って納豆巻きをもぐもぐ食べる私の横で、立ったまま手を伸ばす人々が三人。


「私も食べる!!」

「もらっていい?」

「マヨネーズ取ってきてー!」


席を立ったらこの一本で終了だ!!


黙って座って納豆巻きをもぐもぐ食べる私の横で、立ったまま納豆巻きを食べる人々が三人。


何故だ。

何故座って食べない?!


突っ込み入れたらこの一本で終了だ!!


黙って座って納豆巻きをもぐもぐ食べる私の横で、立ったまま納豆巻きを食べる人々が三人。


何故だ。

何故そんなに食べるのが早い?!


諦めたらこの一本で終了だ!


私が二本目に手を伸ばした時!


皿の、上から、納豆巻きが、すべてなくなった。


心行くまで食べたいと願った、至高の逸品。

二本目に食べた納豆巻きは、涙の味が…するかあああああ!


くそぅ!


めっちゃ美味い、美味すぎる!

ああこんなに納豆巻きは美味いというのに、何故心行くまで食べられないというのでしょうか。


…次に作る時は、20本作ろう。


私は固く心に誓って、報われぬ愛を貫いて逃避行中の納豆だらけの皿と箸を洗うために、キッチンへと向かった。


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