晩御飯の準備をしていると、娘がふらりとやってきて、牛乳をコップに注いで飲み始めた。
「うわ!!牛乳飲んでる!!よく飲めるね…。」
「何その言い方!!」
誰にでも、キライなものって、あると思うのよ。
私は、実は牛乳がとても嫌い。
あの、独特の香り、口のなかに残るもったり感、味が有るんだか無いんだかよく分からない、気分の悪い液体。
甘いとか、苦いとか、すっぱいとか、そういう味が無いのがとにかく気に入らない。
学生時代の給食がどれほど苦痛であったことか。
鼻をつまんで飲むと香りがのどを通ったあとで一気に来るので、鼻はつままず息を吐ききったあと息を止めつつ飲むというテクニックを駆使し始めたのが五年生のとき。
それ以来、私の牛乳との付き合い方が一気に変わった。
そう、まずいものを一番初めに飲んで、あとは味の濃い給食を食べればいいのである!!そしたらあのまずさは秒で消える!!!
「いやあ、ホント牛乳だけはね、まずくてまずくてホントだめだわ。」
「ちょっと!!牛乳美味いと思って飲んでる人の前でやめてよ!!」
なんか娘がカンカンだ。何だ、怒りっぽいやつだな。
「いやだってさ、白いんだよ?味ないんだよ?まずいじゃん!キモイじゃん!」
「うるさいな!!黙れ黙れ!!」
怒りに任せてぐびぐび飲んでるぞ。
「ああっ!!ちょっと!!全部飲むな!!シチューに入れる分がなくなるじゃん!!」
「飲んじゃった。まあ、牛乳無しでいいじゃん!」
「ばかっ!!牛乳無しでシチューが作れるかっ!!今すぐ買って来い!!!」
娘は料理をしないというか、あまりそっち方面の才能に恵まれなかったようでたまに恐ろしいことを恥ずかしげも無くのたまうのである!!
「へいへい、牛乳嫌いって言ってたくせに、わがままだなあ、もう。」
「生の牛乳はまずいけど材料としては神だと思ってんだから悪く言うな!!」
「散々まずいだの何だの言ってたくせに…。」
飲み物としての牛乳は存在を許しませんけどね!!
材料としての牛乳は神としかいいようがなくてですね!!
スープに煮込みに焼き物揚げ物、お菓子作りやパン作り、もうね、ホント神食材なのよねえ!!!
牛乳なくなったらマジで困る!!
「三本買って来てね!明日コーンスープ作るからさ!!」
「マジで!!いい牛乳買ってこよ!!!」
娘が意気揚々と買い物に出かけた。
いい牛乳ってのが、よくわかんないんだけど、まあ任せといたらいいだろ、うん。
だってほら、私牛乳嫌いだからさ、味見できないじゃん。
違うな、したくないんだ。
神様扱いしてる牛乳をまずいと思って飲むことが失礼だと思うのよ。
だから私は、文句は言うけど、飲まないの。
文句は言うけど、めっちゃ使うの。
はてさて、私は牛乳に嫌われているのか、好かれているのか、どっちかな。
どっちにしろ、使いまくるんだけどね。
今度牛乳の神様が現れたら聞いてみますかね。
私はシチュー用の材料を手際よく炒め始めた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!