市報で募集していたフォトコンテストに応募した。
テーマは、「季節外れ」
応募期間は一月から三月までで、四月から選考開始、結果発表は六月ときたもんだ。
私は自信満々で応募したのさ!!
うちの近所の公園にさ、すごく良い被写体見つけちゃって!!!
もうね、絶対入選まちがいなし!!
その結果発表がね、今日から市役所特設コーナーで掲示されるのですよ!!
それを旦那と一緒に確認しに来たってわけ!!
「ものすごい自信だね、優勝すると何かもらえるの。」
「栄光という名の誇りを得ることができる!!!」
特設コーナーはだだっ広い市役所一階ロビーに大々的に展示されていた。
応募作品全452枚が展示されてるんだって…。
あ!!あれは!!
私の写真が目立つところに貼ってあるー!!やった!入選だ!!
…ん?!
「ちょ!!何これ!!私のだけど、私のじゃない!!!」
「はあ?」
木の枝に付いているセミの抜け殻に、雪がちょこっと積もってる、写真。
私も、同じ被写体を、同じ角度で!同じ感じに撮ったんだけど!!!
私の名前じゃない!!よく見ると、写真に添えられた一言が私のと違う!!
「これ!!私も同じ写真撮ったんだよ!!でも、一言が違う、私の応募したやつじゃないのが入選してる!!!」
「何言ってんの、ちょっと説明たんなくて意味わからんな。」
私の投稿した作品はどこ行った!この会場内のどこかに貼ってあるはず…!!まあまあ広い会場内をくまなく探しつつ…。
「季節外れの画像を写真にとって、一言添えて応募してくださいってのが、募集要項でね!!」
「なんだ、じゃあお母さんのは一言がへたくそだったんじゃないの。」
旦那の失礼な返しをスルーしつつ、自分の写真を探すと…!!あった!!げげ!!
「同じ写真があと二枚ある!!ちょっと何これ、なんで並べてるの…!!!」
なんと、私が撮ったのと同じ写真が三枚並んでるじゃありませんか。しかも、一番目立たないボードの最下列!!!
私の一言は「夏の忘れ物」、隣の人の一言は「さむいよう」、その隣の人のは「冬のある日」。
金賞の人は、「雪化粧」。
「ねえ…夏の忘れ物と、雪化粧の違いを教えてよ…。」
「まあまあ、唯一無二の作品が撮れなかったお母さんにも問題あるんだって、うん。ま、次がんばれ、ははは。」
そりゃさ、同じ写真撮っちゃう時点でさ!所詮、自分以外の誰かも思いつくような安易な作品だったんだって思うけどさ!でも、でも納得…できん!!!
「…お母さんに足りないのはね、人脈だよ。」
「芸術作品に人脈なんか関係ないじゃん…。」
不満顔の私に旦那がぼそっと呟く。
「あるよ…これ匿名投票でしょう、こんなん知人にお願いしたら一発特賞なんだって。まあ、今後はきっちり井戸端会議に参加し、町内会役員との飲み会もニコニコ顔で参加し、市制70周年イベントでボランティアをし、新聞の意見欄にいい話を投稿し、毎朝幹線道路のごみ拾いをし、でっかい公園でウォーキングして名前と顔を広く知ってもらって、いつどういうコンテストに参加するから投票してねってお願いして回ったらいいんじゃないの。」
「そんなん八百長じゃん!!芸術なめんなよ!!」
そんなこと言うからさあ、特賞が安っぽく見えてくるじゃん!!!
特賞は流しそうめんを雪景色の中で楽しむ子供会の写真。みんな生き生きとした顔で楽しそうで…。
…あかん!!ここで投票する人多そうですねとか思っちゃだめだ!!
なんてことしてくれるんだ!!芸術、芸術作品を素直に見る目が、目がー!!!
「まー、俺だったら同じ被写体のは入選させないけどね、これは企画が良くないわ、匿名投票ってのはこういう事があるからさあ…ぶつぶつ…。」
地味にいろいろとダメージを負って疲労感が湧きまくってる私をしり目に、旦那は写真展を楽しんでいる模様。知り合いの写真が結構貼ってあったんだってさ。
もうね、旦那が笑ってる写真投稿したら一発特賞だったんじゃないの…。
かくして、栄光という誇りを得ることのできなかった私ですけどね。
私の写真は、最下段でホコリを浴びることは、間違いないんです。
私はバッタバッタと派手に地面のホコリをまきあげながら、すべての展示作品を見て回った。
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