「ねえねえ、見て、こいつとぐろ巻いてる!!」
「おお!!白蛇のとぐろ巻きキタ――(゜∀゜)――!!」
週末の商店街、催し物として爬虫類動物園が開かれているというので、娘と一緒にやってきた。
娘は巳年うまれという事もあって、蛇が好きでねえ。
ちなみに今日は息子は家でお留守番。…蛇が嫌いでねえ。
でかいのや小さいのやカラフルなのや…相当蛇ぞろいは宜しい。
中でも、白い蛇は人気の様だ。
「この子はね、ちょっと憶病なんで、すぐにとぐろ巻いちゃうんですよ。」
蛇スタッフのお兄さんが、私と娘に声をかける。
「へえ、そうなんだ。じゃあ、のびのびしてるのは堂々としてるってことですかね。」
「まあ、そうかもしれないですね、ア、蛇触ります?」
なんか蛇を触らせてくれるらしい!
うーん、どうしようかな。
「わーい!あたしこの白い子がいい!」
娘はとぐろを巻いたままの、固まってる白蛇を手の上に乗せてもらって大喜びだ。
「意外と重い!冷たくないけどあったかくない!わあ!なにこれ!あは、あはは!!!」
はしゃいでいる娘はほっといて、私はほかの蛇を拝見することにした。
意外と蛇、嫌いじゃないんだよね。
もともとトカゲとかヤモリとか好きだし。
学校の花壇で光り輝くトカゲを見つけて、捕まえようと手を伸ばしてしっぽを切られた経験は数知れずだ。
地味にあのじたばたするしっぽが怖いというかさあ!!
すばしっこいトカゲを捕まえるのは至難の業で、どんくさい私はなかなか捕まえることができなくて。
ある時見つけたトカゲは、えらく動きがスローモーだったんで頭?首のあたりを捕まえてさ、やったー捕獲だと思ったら手足がついてなくて蛇だったという事もあってだね。
…あの時の蛇の迷惑そうな顔と言ったらもう。
お、イモリもいるぞ。子供の時飼ってたなあ…。
乾燥イトミミズあげたりしててさ。
夏休み中がんばって世話してたけど二学期に学校持ってったら男子に取られちゃって、アレはどうなったんだったっけな。
こんな所で幼い日々を思い出そうとは。
…何気に私、爬虫類に対して酷い人かもしれない。
ごめんごめん。
いくつかあるテントの端っこに、ニシキヘビがいた。
あんまり人気ないのかな、誰もいない。スタッフのおじさんがかなり暇そうにしてる。
茶色い、うろこが微妙に、てかった蛇。
微妙に崩れた、やや立体的なとぐろを巻いている。
頭がないぞ、どこに顔が隠れているというんだ…。
とぐろの中央に、突っ込んでるみたいだけど。
衣装ケースの上から観察していると。
「この子ねえ、神経質でね、恥ずかしがり屋なんですよ。」
「だから顔隠してるんですか?すごいな。どうなってんだこれ。」
ニシキヘビの担当のおじさんが声をかけてくる。
「あ、見ます?ひっくり返しますよ。」
良いの?!なんか蛇に失礼なんじゃ。
衣装ケースの上のワイヤー格子のふたを開け、手を伸ばすおじさん。
…戸惑う私を気にすることなく、おじさんはとぐろを巻いてる蛇をひっくり返し…。
「うわ!!」
蛇の白い腹?が一瞬見えたものの、すぐさまひっくり返って!!なんだこれ!!
とぐろを巻いたまま、蛇の裏表がクルリとひっくり返った感じ。
とぐろの中心に隠れてた蛇の頭が出てる、うわあ、迷惑そうな顔…ご、ごめん。
「ほら、こうやってね、すぐに戻っちゃうんですよ、おもしろいでしょう。」
「は、はあ…。」
面白がられてる蛇さん、お疲れ様です…。
気の毒な蛇は、長い体表面を、微妙に波立たせてとぐろ修正をしている。
…どんな修正だ。
崩れたとぐろをきっちり丸く整えようとしているみたい。
細かいな、この蛇はきっとA型に違いない。
ニシキヘビはあっという間に崩れた立体とぐろから、平面的な渦巻きになった。
今度は顔を外に出している…ひっくり返されちゃたまらんと思って、監視でもする気なんじゃないの…。
「ねーねー!これ買っちゃった!!」
喜び過ぎておかしなテンションになっている娘がニコニコしながらやってきた。
その頭には!!
「なにそのうんこ!!」
「蛇だってば!!かわいいんだからうんこっていうな!!」
とぐろを巻いてる蛇のぬいぐるみ帽子をかぶって、何やらご立腹ですけどね、あんたそれどう見ても。
周りをよく見れば、ピンクや緑のとぐろ帽をかぶってる子供が、ちらほら。
…なんでわざわざ茶色を選んだのかね。
娘のセンスを疑わざるを得ないな。
「あっちで渦巻きソーセージ売ってるよ!!買って帰ろう!!」
「へいへい。」
蛇のとぐろからイメージした?ぐるぐる渦巻きソーセージはかなりの売れ行きみたい。
四つ、お土産に買って帰宅することにした。
自転車に乗って、娘と家に向かう。
娘の頭には、うん…いや、とぐろ。
「あんたかぶって家帰るの…。」
「せっかくだから!!」
幹線道路は、車通りも激しくてね、うーん、まあ本人がいいならいいか。
「なにあのうんこ!!ぎゃはは!!!」
信号待ちしてたら、通り過ぎる車の中から声が!!
そうだね、その感想は、正しいよ。
「蛇のとぐろだってのに!!」
娘は憤慨しているが。
茶色の生地に、茶色の刺しゅう、蛇の顔は前面からしか見えないとなるとね。
後ろから見たら、どう見てもね。
…まあ、いっか!
ソーセージが冷める前に帰宅しなければならないのだ!
周りを気にする暇は…ない!!
信号が青に変わった。
「おかしな感想が聞こえてくる前に、家に帰ろう!!」
私と娘は、勢いよく自転車をこぎ出した。
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