「そうだね、4つある理由はよく分かったよ。でも、それ滅茶苦茶お金かかってない?」
同人誌を全て500円、アクリルスタンドなどの小物系は1000円、抱き枕カバーを10000円と推定したとしても累計で8万くらいかかっている想定になる。
ものによってはそれより高くなることを考えると、10万を超えていてもおかしくない。
ゆめなま所属のVtuberだからそれくらい買う余裕があるのだろうが、Vtuberじゃないただの一般高校生には買う余裕は無い筈である。
「え、えっと、ほらバイトして溜まったお金で買ったんだよ。うん」
「うちの学校バイト禁止だよね」
「あれ、そうだったっけ?」
「そうだよ」
ウチの高校は基本的にバイト禁止である。見つかったら退学、とまではいかないが停学させられてしまう。
じゃあVtuber活動もダメじゃないか、と思われるかもしれないが、それはOKである。
というのもこの高校、起業と個人事業主に関しては何故か許可なども必要なく全面OKなのである。
ウチの理事長が言うには、お金を稼ぎたいのであればバイトをするな、自らで価値を生み出して稼げとのこと。
バイトも自らで価値を生み出している気がするのだが、理事長から見るとそれは違うらしい。
よく分からないが、とにかくVtuber活動は許されるがバイトは許されない。
となると葵としてはお金を稼ぐ手段は存在しない。ここをどうやって切り抜けるのだろうか。
「まあ、バレていないからセーフセーフ」
と期待していたが葵はバイトをしているで真正面から切り抜けようとしてきた。
「バレていないからセーフ、じゃないよ。バレたら普通に停学食らうからね」
「絶対にバレないから大丈夫。コンビニバイト的な接客業じゃないから高校の人と顔を合わせることは100%無いから」
純度100%の嘘だからボロが出るだろうと思っていたが、葵にしては珍しく一切の淀みなく嘘をついてきた。
「そうなんだ。ちなみにどんなバイトなの?」
「アイドル事務所のお手伝いだね」
「アイドル事務所?どこの?」
「知らないと思うけど、ストレイスターってとこ」
確かストレイスターはアスカの事務所であるUNIONの会社名だったか。
ここで安易にゆめなまを運営しているPeelを出さなかったのは偉いな。
「ストレイスター、聞いたことないなあ」
「まあ知らないだろうね。ジュニーズとかヒロプロみたいな超有名事務所じゃないからね」
「そうなんだ」
「でも将来的に有名になってくれると思っているよ。皆凄いから」
「へえ、良い所なんだね」
「うん」
なるほどな。一応バイトしていない筈なのに人気Vtuberなお陰でお金があるって話を誤魔化す手段だけは持っているんだな。
それならVtuberやっていること自体を誤魔化す術も持っていて欲しいけど。
「私はそれでお金があるけれど、一真は?」
「俺?お金あるように見える?」
珍しく葵が綺麗に誤魔化せていたことに感心していると、唐突に俺に同じ質問をしてきた。
「うん。滅茶苦茶持ってるってわけじゃないけど、バイトしてないと無理だよねって思う事はたまにある」
「そう?」
葵と違って高校生の枠を超えた高いものは特に買っていないような気がするけど。
「学校には制服で行くから平日は全く私服を着ない筈なのに種類が豊富すぎることと、漫画を買う量が去年の途中からかなり増えてきたことかな」
「あー……」
確かにバイトをしていない高校生にしては服と漫画を持ちすぎている気がする。
漫画についてはアスカや視聴者に勧められていたものをVtuber活動で得たお金で雑に買いまくっていた俺が悪い。
服は樹が資料として使っていたものをサイズが合わないからという理由で横流ししてもらっているだけだから俺は全く悪くない。
「服は定期的に貰っているから多いだけだね。漫画については単に高校生になって月の小遣いが増えたから自然とね」
「漫画は分かったよ。でも服を定期的に貰うってどういうこと?どれも古着って感じがしないから新品に近いよね?」
流石女子。服の事になると目ざといな。貰った服が全部新品な事に気づいている。
相手の説明位はしないとダメか。
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