「なんでここにいるんですか?」
「そっちこそどうしてここに居るのさ」
するとそこには困惑した様子で葵と奏多が話していた。
「っ!!!」
事情は分からないが俺は気付かれないように扉をそっと閉め、リビングの窓を開けベランダの柵に足を掛けた。
「おいおいおいおいおいおい!!!!!!!!!!!」
そんな俺の様子を見たオーサキが慌てた様子で俺の腰を掴み、柵から引き剥がそうとしてきた。
「何をするんですか!!!俺は今すぐ行かないといけないんですよ!!!」
「どこにだよ!!!!!ここ何階だと思ってるんだ!!!!」
「大丈夫です。隣の部屋に移動するくらい現役高校生には余裕です!!!!!!!」
「おい!!!降りてこい!!!!」
今はそんな無駄話をしている暇は無いんだ。オーサキが反応したせいで樹も来て取り押さえようとしてきたじゃないか。
……そうだ。俺だけじゃなくて樹も来ないと不味い。
「ターバン!お前もこっちに来るんだよ!急げ!!!」
「玄関から出ていけばいいだろうが!!」
「それじゃダメなんだよ!!早く!!!!!」
「嫌だわ!何のためだよ!!!!」
「事情は説明できない!とにかく早く!!!!!」
俺はターバンにこっちに来るように手を伸ばしたが、来てくれない。どうして分かってくれないんだ。
「皆、すい……これどういう状況?」
「……」
必死の抵抗も虚しく、奏多が部屋に戻ってきてしまった。最悪だ……
いや、でもまだ出来ることがある。
「ただちょっと外の空気が吸いたくなったんですよ」
「どう見てもただ外の空気を吸いたいだけでこんなことにはならないよね」
「なりますよ。外の空気を吸うのは普段引きこもっているVtuberにとって重大イベントの一つなんですから」
「確かにその気持ちは分かる。でもね、どう見てもその光景は5階から飛び降りしようとしている人とそれを阻止しようとする人達なんだよ」
「これはこの人たちの勘違いですよ。別に飛び降りる気はありませんでしたよ。ちょっと足を掛けたくなっただけで」
「そっか。じゃあそれは良いや。ねえ、どうして君は頑なにこっちを向いてくれないのかな?」
「それは今顔が酷くて見せられる状態じゃないからですね。突然顔全体がやけどして水ぶくれだらけになったんですよ」
「うん絶対に違うよね。本当に何があったの?」
「何かはありましたが説明は出来ないですね。とにかく今は奏多さんに顔向けできないですね」
「意味が違う気がするけど。まあいいや。とりあえず何故か偶然水晶ながめちゃんがこの部屋に来たので連行しました。挨拶をどうぞ」
「えっと……どうして堀村くんと宮崎さんがここに居るの?そして今飛び降りようとしているのって一真だよね……?」
「ひ、ひとちが「羽柴さんこそどうしてここに来たの?」」
終わった……
俺が最後のあがきとして誤魔化そうとしたのに、それよりも先に宮崎さんが本人だと認めちゃったよ……
「私は一真を探してここに来たんだけど。そしたら奏多さんが出てきて、部屋を間違えたのかなって思ってたらなんか皆だけじゃなくて宮崎さんも堀村くんも居るし。そしてしっかり一真も居るし私も本当にどういうことなの……?」
「あー、そういうことね。まあ、一真君。諦めてこっちに来ようか」
恐らく全てを察したであろうアスカが俺をベランダからリビングへと連れ戻した。
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