「凜真《りま》、お願い その子を見つけて 私の記憶、取り戻して?」
帰り道、叶向《かなた》のお願いを反芻する
どうしよう、公園の少女、今まで叶向と思っていたのは双子の妹、那由多《なゆた》だったわけで、その那由多を助けたのはこの僕自身なのだ
何故だが、過去に那由多が僕のことを忘れないと願ったことで、あらゆる事象が忘れられなくなった 超越した記憶力を持つサヴァン症候群になった
それがきっかけなのか、ちょうどその頃、叶向にも異変が起きた つまりは寝ると記憶を無くす症状、前向性健忘症が発症した
本当に那由多が願ったことによって、結果的に叶向の症状が発症したのなら、その願いを叶えることで叶向は症状から解放されるだろうと言う論法だ
那由多の願い、「あなたのこと、絶対忘れない」
この先にある本当の願いは、那由多との会話で判明した 那由多は公園の男の子、つまりは僕を好きだと言う 小1の頃の僕は好きだが、今の僕には気付きもしないというのは複雑だが...
ともあれ、その公園の男の子と那由多を引き合わせれば、問題は全て解決すると言うのが、今のところの推測であり、問題であり、大問題であり...叶向の望むことだ
叶向は僕がその公園の男の子だということを知ったらどうするだろう 自分の記憶を取り戻すことを優先するか、僕の彼女であるということを優先するか...
明日には叶向の記憶がまたリセットされてしまうということが問題をややこしくさせる
思考をぐるぐるさせながら、問題解決方法の模索に集中できないでいる、そう今日僕は...
「女の子とキスをしてしまったんだーーーー!!!!」
翌朝、叶向とのキスを思い出して全く寝付けなかった僕はあくびをしながら、目を擦りながら登校していた
校門が見えた時、異変に気づいた
「印田《いんだ》はまだ来んのかぁぁ!? 印田凛真ぁぁぁ! はよ来んかいぃぃ!!!」
他校の制服を着た不良のような輩が10人ほど、校門で溜まって僕の名前を叫んでいた
その親玉的風格を放っている男の隣に、九院《くいん》さん、九院姫華《くいんひめか》が佇んでいることに気づいた時、すべてを察した
「よく分からないうちに有耶無耶になってなかったことになったと思ってたけどついにきたか... タクミ *1話参照 とかいうやつ...」
九院さんに喧嘩を売った者は彼女の彼氏であるタクミにボコボコにされる この辺りでは有名な常識らしい そして僕は喧嘩を売ってしまった節がある... つまり...
「あっ!あれが印田よ!」
今から僕はボコボコにされます
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