寝ると記憶をなくす少女と付き合うことになったんだけど!?

その恋は、忘却の彼方へ
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変わったけれど、変わらない

公開日時: 2020年12月28日(月) 20:25
文字数:1,414

「入れ換えるって? あたしの記憶力がお姉みたいにめちゃくちゃ良くなって、お姉があたしみたいに何も覚えられなくなるってこと?」

「そういうことだね」

「それはダメ!」

「お姉ちゃんみたいに記憶が良くなることを望んでるんじゃないの?」

「お姉ほどじゃなくていいの 少しでも、昨日のことを覚えられたらいいなって それに、お姉があたしみたいに覚えられなくなるのはいや」

「お姉ちゃんはそれでいいって言ってたよ 昨日お姉ちゃんの夢に行ってきたんだ 君はお姉ちゃんに愛されてるよ |那由多《なゆた》が辛そうだから、変われるのなら変わってあげたいって、泣きながら、言ってたよ」

「お姉...」


そうだ、これは小さい時にあたしの夢によく出てきた妖精さん 昨日のことを覚えられないあたしの唯一の友達だった


「この夢から覚めたら、君はいつも通り僕のことを忘れる この会話のことも 次に君が願った時、今言ったこと、叶えてあげるよ」


そうだ、あたしが|凛真《りま》くんを覚えていられるように願った時、あたしのサヴァンが発症したのは、お姉からそれを受け取ったから そして、お姉の症状が発症したのは、あたしの症状を受け取ったから





はっと気がつくと、あたしはまだ凛真くんとキスをしていた 


「もういいよ!(バン!) ご、ごめん!」


凛真くんを乱暴に押し返してしまった


「ぜんぶ思い出した! お姉、ごめんね! あたしがお姉の記憶の能力、ぜんぶ奪っちゃってたみたい!」


「いいの、私が望んだことだから 私も、全部思い出したよ 今までの記憶 なんで今まで忘れてたんだろうってくらい、鮮明に 妖精の夢の記憶から、凛真に助けられた日のことまで 全部、頭の中で再現できちゃう、昔みたいに」


もう戻っちゃったんだな 昔みたいに、あたしは明日にはぜんぶ忘れちゃう お姉にこんなに長い間、楽しい思いをさせてもらったことも 凛真くんと、キスしたことも ありがとうお姉、そして、凛真くん






夏休みに入って、叶向とデートしまくった

高校生には似合わないような良いディナーに行ったり、本屋に行ったり、水族館に行ったり、美術館に行ったり


「私が凛真の家に忘れた携帯の充電器持ってきてくれた?」

「あっ! 忘れてた!」

「も〜 昨日の夜電話で言ったでしょ〜」


何気ない会話の中にも、昨日の記憶があるという、当たり前だが当たり前でなかった幸せが


あれから|叶向《かなた》の家に行くたび、那由多と会って会話している


あの頃のように、彼氏さんとは呼んでくれない


「じゃ、このあと私の家行こっか」

「わ、わかった!(いまだにバクバク)」




「お邪魔しま〜す」

「よし! 今日は那由多も親もいない! 今日こそはよ! 凛真!」


「何が今日こそはじゃ〜〜〜!」


「那由多!? なんでいるの!? 何か思い出せるかもって、例の公園に行ってみるって言ってたじゃない!?」


「公園占領してたよく分からんヤンキーたちにからかわれたから帰ってきてやった! まあそいつらボコボコにしたけど! なんで、あたしがこんなに強いからは分からん! 覚えてない!」


「それはここにいる私の彼氏、|印田凛真《いんだりま》君のおかげよ!」


「この人が印田凛真!? え〜、思い出せないなぁ〜 う〜ん...」


那由多はまじまじと僕の顔を見つめる


「もう何回も会ってるんだけどね...」


このやり取りも、もうお馴染み しかし何回目でも、愛おしい


「じゃ、凛真くんって呼ぶね!」


記憶はできないかもしれないけれど、いつも元気いっぱいで、一緒にいると楽しくなれる、那由多は変わったわけじゃない





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