寝ると記憶をなくす少女と付き合うことになったんだけど!?

その恋は、忘却の彼方へ
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女の子の部屋で2人きりということは!?

公開日時: 2020年12月3日(木) 18:02
文字数:1,601

「上がってください」

「お...お邪魔しま~す」


叶向《かなた》の家に...彼女の家に...女の子の家に...

来てしまった!


「まずはご両親にご挨拶を...」

「共働きなので、まだ家にいませんよ?」


え...あ...あ、そのパターンね


「この家には私たち2人だけです」


ふ~ん、全然余裕だけど!?


「じゃあ上に上がりましょうか、私の部屋2階なので」


あ、うん、平然と自分の部屋に誘うパターンね

うん、うん、うん...


「やばーーーーーい!!!!」


大声を上げてしまう...


「ど、どうかしましたか?」

「あの、ちょっと、トイレ行きたくて」

「あ、でしたらそこの奥に」


緊急避難所トイレに逃げ込む


「ふ~...」


一時避難したはいいけど、今日僕はどうなってしまうんだ?

誰もいない家、彼女の部屋で2人きり...

彼女いない歴=年齢だった僕にはハードルが高すぎる!!!




「ずいぶん長いトイレでしたね」

「あ、ちょっと言うことを聞かなくて」

「何がですか?」

「何でもないです」




部屋を開けると、めちゃくちゃ女の子らしい部屋が...

ピンクの布団、ピンクのクッション、ピンクのカーテン

かわいらしいぬいぐるみがたくさんある


「少し散らかっていますが」

「お、お邪魔します...」


人生初、女の子の部屋に足を踏み入れる


「こ、これが女の子の部屋...! 空間的にはさっきの廊下と連続的に繋がっているはずなのに、このドアの境界線を閾値に、離散的なパラメータが振り分けられている つまり、ドアから放出される特異点を境界として、全く別の想像だにしない世界が広がっているということか... これが人類がいずれ到達するであろうと言われている、シンギュラリティの本質...! 」


「何言ってるんですか? そこのベッドに座ってください」




「...」

「...」

「...」

「...」


き、気まずい...

ベッドに隣り合って2人で座っている

部屋に入って1時間は経ったかのように感じられるけど、実際はまだ1分しか経っていない

なんだこの部屋、精神と時の部屋かよ


「印田《いんだ》くん、凜真《りま》って呼んでいい?」

「い、いいよ」


これは初めてじゃないからビビらないぞ

余裕余裕


「凜真、ちゅーしよ?」


これは初めてだからビビr...って


「何言ってるの!?」


思わず飛び上がる


「私たち付き合ってるんでしょ? ちゅーとか普通するんじゃないの?」


叶向はいつのまにかフランクな語り口


「キスは結婚してからでしょ!」

「そんな昭和の人でも言わないことを!」

「まだ早すぎるって!」

「じゃあいつしてくれるの!」

「1か月後ぐらい?」

「1か月後も私が今日のこと忘れてることをいいことにそうやって逃げるんでしょ!」

「日記にメモしてればいいじゃん!」

「今日の私が書いてもその時の私が受け入れるかは分からないでしょ! 今日ちゅーしないとちゅーは逃げていっちゃうの!」

「ちゅーちゅー言ってるけど、さすがにほっぺにちゅーとかのこと言ってるんだよね!?」

「何言ってるの! まうすとぅーまうすに決まってるでしょ!!?」


その後も抵抗を続けていると...


「分かった したくないんだね」


叶向はしょぼん俯いてしまった


「し、したくないなんてことはないよ」

「"したくないなんてことはない"じゃなくて"したい"か"したくないか"で答えて」

「いやでもその」

「"したい"か"したくないか"で!」

「...したいです」

「じゃあ...はい」


叶向は目を閉じて唇をほんの少し突き出している


これ以上叶向に恥をかかせてはいけない 情けない姿を見せてはいけない

僕もそろそろ勇気を出さないと


右手で叶向の後頭部を押さえ、左手で叶向の右肩を抑える

顔を近づけ、近づけ、近づけ...


これ、何かで見たことあるぞ...

そうだ...こういう時、ぎりぎりのところで、親が帰ってきたり

何かしらの邪魔が入って、結局キスとまでは...いかない

そうだ...大丈夫だ...もう少しで...親が...





ちゅ


やわらかい感触が僕の唇に伝わった

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