【フルボイス】追放されたノーベル賞受賞の科学者、異世界に最強国家を作る ~チート無しで転生するが、現代知識で文明を再興~【エアルドネル戦記】

Naina R. Uresich
Naina R. Uresich

第15-2話「最初の人」

公開日時: 2023年5月11日(木) 19:03
文字数:2,301





 早苗はララとラルクを連れ、北の森へ歩き続ける。


「しかし、エルフはプライドが高い、か。説得方法がカギだな……」

「閣下、姉はエルフの第一王女と、友好関係があります」


 ララが煮え切らない感じに、続ける。


「うん。わたしのこと、覚えてくれてるといいけド……」

「よし。ならまず、第一王女に接触しよう」


 ふと気になった早苗は、小声でラルクに訊く。


「……ララって、かなり顔が利くのか?」

「いえ、全然。まったく」


 断言する弟に、少し困惑する早苗。


「趣味が合っただけです。そのエルフの令嬢も、本ばかり読む変わり者でした」

「この世界の本、高いからな」


 本一冊は、農民の平均年収と同じぐらい。

 ドワーフたちが、紙の製造法に食いつくわけだ。


「閣下。万が一エルフと交戦になりましたら、迷わず逃げてください。捕えると奴らは、捕虜を地下牢に入れ、一生出しません」

「わかった。もう地下牢ダンジョンはこりごりだ」


 ◇


 その頃――

 もうひとりの現代人は、公国の地下牢ダンジョンに閉じ込められていた。

 それも、早苗の時とは、別の苦痛を味わいながら。


『イ゛ヤ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!! 助゛け゛て゛!!!』


 バチン、と激しい音。

 空気を切る音の後に、鋭い痛みが走る。


『アア、ああああ……』


 公国兵に捕まったカーミットは、鞭打ちの刑にあっていた。

 女性の場合、打ちどころが悪ければ、20回も打たれる前に絶命する。

 カーミットは既に、10回以上打たれていた。

 再度、激しい鞭の音が。


『イ゛ヤ゛ア゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!!』

『はぁ、はぁ……どうだ! 答える気になったか?』


 あまりの苦痛に、顎の力が抜ける。よだれが垂れる。

 それでも泣かなかった。それはカーミットの、最後のプライドなのかもしれない。

 うつろな目を、拷問官に向ける。


『わ、ワタシは、魔女じゃない……みんな死んでるのは、病気のせい……』

『まだ言うか!』

『ほ、ホントなんです……ウイルスや細菌っていう、目に見えない程、小さな菌が……』


 だがエアルドネルには、その概念がない。

 拷問官が再度、鞭を振るう。


『イ゛ヤ゛あ゛あ゛ッ゛!! も゛う゛や゛た゛!! 助゛け゛て゛!!』


 痛みで痙攣を起こすカーミット。

 背中に、まだ皮膚は残っているだろうか。

 体の震えで、鎖ががちゃがちゃ音を立てる。


『た、た、たすけて……』

『もうやめてやれ。そいつはウソついてねーよ』


 ギィィと大男が、ドアを開けて入ってくる。

 禿げて小汚い男だ。味方? ああ、助かった……?


『でも、王国からの命令ですぜ』

『バカだなお前。王国からの命令は二つ。一つはこの女を殺して、死体も処分しろ、だ』


 ぜ、全然助かってない、殺される!


(……王国の命令……? ゴルディ……?)


 あのクソ女、どこまでワタシを苦しめる気で。


『こんな美人、このまま死なせたら、かわいそうだろ』


 男に顎を掴まれる。

 その瞬間、恐怖で、ガタガタと奥歯が鳴った。

 カーミットの嫌な予感はあたっていた。

 男はそのまま服を引きちぎり、胸倉を掴む。




『い゛や゛あ゛あ゛あ゛! や゛め゛て゛!』


 そのまま下着も強引に取られ、裸体になる。


『へへっ、いい体だ。労働したことがない、貴族みたいな体。安い娼婦とは大違いだ』

『あああ、いやだ、いやだ……パパ、ママ……助けて……!!』


 乳房を強引に揉みしだかれ、カーミットはついに泣き出した。

 折れた。もうプライドも何もない。


『う、うぐううう……』


 悔しい、怖い、なんで、どうして……

 誰か助けて。なんで誰も来ないの。


『なぁ、いい事を教えてやる』

『……い、いや』

『二つめの命令だ。あんたを犯せって、ゴルディ様が命じたのさ』

『……ああ、あああ!』

『よっぽど恨まれてるんだな。集団で輪姦しろってよ。これから5日間、交代で兵たちがくるぜ。200人はいるかな。ははは! 豚に食わせるのはその後だ』

『あ゛あ゛あ゛あ゛!!! い゛や゛た゛!!! い゛や゛た゛あ゛あ゛!!』


 黙れと殴られるが、止まらない。暴れる。

 男は鎖を引っ張り、強引にお尻を突き出した体位にさせる。

 秘部にペッと唾を吹きかけられ、強引に濡らされた。


『綺麗な色だな。膜もある。はじめてか?』

『あ゛あ゛あ゛!! 死゛ん゛で゛や゛る゛!!! 今゛す゛ぐ゛舌゛を゛か゛し゛る゛!』

『なんだそりゃ? あはは!! やってみろよ!』


 瞬間、下腹部に何かが侵入して、鋭い痛みが襲う。


『い゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛!!』






 背後の男が、乱暴に腰を振っている。

 犯された。はじめてだったのに。


『う、うぐっ! ううう……』


 いつか、素敵な人に会って……

 その人と結婚して、やさしく抱きしめられながら、初体験をしたかった。

 そんな妄想を、たまにしていた。


 今、動く糞みたいなハゲに、犯されてる。


『ああ、もういやだ!! いやだああああ!!』

『あんまり叫ぶな。おい、ペンチを熱してこい』

『ああ……なに、を……』

『黙らないと、舌を抜いてやる』


 男が動き続け、吐き気がするような感覚が広がる。

 ガタガタ揺れる。悔しい、なんで、ワタシがこんな……


(……あいつだ。ゴルディのせいだ)


 はらわたが煮えくり返った。

 あの女のせいだ。あいつのせいで、今こんな目にあっている。

 あいつは生きてたらダメだ……死なせないと……殺す……絶対に……


(……殺して、やる!! この男も、ゴルディも!!! 絶対に、殺す!!)


 楽に死なせない。最も苦しい方法で、殺してやる!

 両手で口を押え、叫び声を抑える。大粒の涙を垂らしながら、怒りと悲しみを堪えた。


『……やれやれ。ベアバルドさん、ほどほどに』

『黙ってろ! 今いいところなんだ!』


(……べ、ベアバルド)

 それがコイツの名前。


(……ベアバルド、ゴルディ)

 カーミットは誓った。こいつらを、地の果てまで追い詰めて、葬ってやる、と。

 必ず、殺してやる……



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